571 規格外の莉奈に、冒険者達の目は開いたまま
「では、焼きながら説明致しますので、まずは皆様、肉を焼き台に」
そう言って、莉奈はフェリクス王達の前に、色々な肉の載る大皿を一枚出した。
輪切りや角切り、薄切りと切り方は色々あるが、とりあえず焼き肉初心者用にと、ポピュラーな部位を1枚ずつ。
「なぁ、この肉、何で丸いんだ?」
「生肉は、この木のコップに入っている"トング"で載せて下さい。焼けたら箸かフォークで」
皿にのる生肉が、一体何のどこの肉か気になるエギエディルス皇子を無視し、莉奈は説明する。
生肉に触れた物と、口にするカトラリーを同じにすると良くないらしいので、トングも急遽作ってもらった。木のコップは元からあったから、そのまま。
焼き台は白竜宮に、このトングは黒狼宮に相談した。
黒狼宮では、薬品類にピンセットを使うから、それを大きくして挟みやすい様に改良してみた。
———ジュッ。
熱くなった焼き台に肉を載せると、心地よい音がする。
「は? 俺の焼き台に、勝手に肉を載せんな!!」
調理器具の説明と、焼き方を説明するのは実践に限る。
フェリクス王達が様子見している中、莉奈は自分の焼き台と、エギエディルス皇子の焼き台にシレッと肉を載せた。
エギエディルス皇子と自分の焼き台を使って、肉を焼いて見せる事にしたのだ。
まだ食べるとも言ってないのに、勝手に肉を載せて焼く莉奈に、エギエディルス皇子はブツブツ言っているが、そんな些細な事すら気にならない。
久々の焼き肉で、莉奈のテンションが上がっていたからだ。
エギエディルス皇子的には、魔物肉なのはイイが、何の肉でどこの部位か一応訊いてから、口にしたいのだろう。
しかし、その時間すらもったいないので、莉奈はガン無視である。
「肉の焼き加減は人それぞれですが、とりあえず、この輪切りの肉は片面を7割、ひっくり返して3割くらいでお食べ下さい」
「な、焼けたからって、俺の皿に訳の分からない肉を置くんじゃねぇ!!」
「塩レモンかネギ塩を載せて食べると、超美味しいよ?」
「俺の話を訊けーーっ!!」
まだエギエディルス皇子は何か言っているが、莉奈は無視し続け焼けた肉を、塩レモンの入っている小皿の上に置いた。
日本みたいな長葱はなかったので、長葱と見た目と似たような味のするポロポロ葱を使ってみた。
下仁田葱より分厚く肉厚な葱で、火を通すとスゴく甘みが増す。
たまにスープに入っていたから、葱代わりに使えるなと思っていた葱だ。
「何んだよこの肉。丸い肉ってオカシイだろ!?」
「そう? 星形よりポピュラーじゃない?」
「なっ!?」
「大体、そのステーキなんか、四角だよ?」
「……」
莉奈がサラッと返してきたので、エギエディルス皇子は絶句した。
確かに星の形と比べれば、丸い形、輪切り肉は普通にあるだろう。なんなら、違う肉は食べやすいようにと、ひと口サイズの四角い形に成形してある。
だが、そうではない。そういう事を言いたい訳ではないのだと、エギエディルス皇子は納得がいかない様子。
「ん〜っ! 美味しい」
エギエディルス皇子が二の句を継げない中、莉奈は自分の牛タンに塩レモンを付けて、口にポイっと放り込んだ。
そう、エギエディルス皇子が丸い肉と言っていたのは、薄切りの牛タンである。
まぁ正確には牛ではなく、牛系の魔物だけど。
「リナ。白飯」
様子を見ていたフェリクス王は、好奇心と空いた腹には勝てなかったのか、莉奈の説明もそこそこに、牛タンを焼いていた様だ。
で、そろそろ焼けるとなった時、これはパンよりご飯だなと思ったらしい。
「はいは〜い。ちなみに、ロメインレタスで巻いて食べても美味しいですよ? 辛味が欲しい時は、ホースラディッシュやハバチョロのピクルスを。大根おろしやニンニクなど、色々薬味も用意しましたので、味変しつつお楽しみ下さいませ」
基本の調味料に香辛料。味変に辛味や大根おろしなど、ザックリ説明してテーブルに出せば、一気にテーブルの上は賑やかになっていた。
「「「え!? 白飯!?」」」
見た事のない料理に目が釘付けになっていれば、今度は"白いご飯"ときた。
どの国もパンが主食である事が多い中、ランデル達の故郷は珍しく米が主食だった。他国でも米は探せばあるが、何故かどこも家畜飼料。
しかし、一応米は米。だが、食用に作られていないため、味や食感がイマイチな物が多い。食べられない事もないが、炊いても微妙だ。
無性に食べたくなった時は、面倒だが故郷に帰り、ホーニン酒と一緒に仕入れて来ていた。
なのにココで、まさかのご飯。ランデル達は首が折れるかの様な勢いで、フェリクス王の器を見ていた。
「へぇ。面白ぇ食感だな」
フェリクス王は、焼けた牛タンにネギ塩を巻いて口にしていた。
炭火で焼いた牛タンは、ただ焼くより風味がイイ。
鼻に抜ける炭火のイイ香り。少し焦げた部分がまた、香ばしくて堪らない。噛むと歯に跳ね返ってくるコリコリの食感。そして、噛めば噛むほどジューシーな肉汁。そこに、アクセントのネギ塩。
ご飯にチョンチョンのせてから食べるもヨシ。牛タンを堪能してから、その余韻で白いご飯を食うもヨシ。とにかく堪らない。
「食わねぇなら、もらってやる」
「はぁぁぁっ!?」
エギエディルス皇子が、まだ少し躊躇いを見せていれば……隣に座っていたフェリクス王が、末弟の小皿から焼けた牛タンを奪っていた。
「旨いな」
「お、俺の肉を食うなーーっ!!」
食べるか食べないか、それは別として……人に奪われると気分が違う。
エギエディルス皇子は、可愛い叫び声を上げていた。
食ったモノ勝ちだよ? エドくんや。
莉奈は仲良し兄弟に、ホッコリするのであった。
前回、予約の日付けを間違えて、2話投稿していた神山です。
(`・∀・´)あれれ? 二月とは?
結果的に、読者さま感謝デーになったのであれば幸いです。^ - ^
いつもお読み頂きありがとうございます♪
神山のボケは通常営業でした。




