528 こんな場所ですが、のんびりと
夜中ですが、投稿してみました。
( ・∇・)やっほ〜
「しかし、静かだ」
莉奈は思わず呟いてしまう程、あれから道中は静かだった。
正確には、聴いた事もない鳥や生き物の鳴き声は聴こえるが、それ以外は静けさしかない。
魔物らしい魔物に遭遇したのは、あの植物の魔物、鳥トリグサモドキだけ。
それも、フェリクス王がけしかけたから出て来た様なもので、あちらから襲って来た訳ではない。
「何でこんなに平穏なのよ?」
アーシェスもそう思ったのか、辺りを見回しながら訝しんでいた。
防壁の外に出れば、魔物に遭うのが普通。ここまで遭遇しないのが、逆に異常なのである。違う意味で不気味だと、アーシェスは腕を摩っていた。
「これが"聖王"の力」
エギエディルス皇子は感動に打ち震えていた。
今まで深く考えずにいたが、次兄に言われ意識してみると、改めて長兄フェリクスの凄さが分かったのだ。
さっきの所業など気にもしないのか、キラキラとした瞳でフェリクス王を見ている。
「「……」」
ローレン補佐官もエギエディルス皇子同様に、自国の王の姿に感動している様子だったが、莉奈とアーシェスだけは違った。
魔物が恐れる人とは? と感動より、恐怖が優る。
莉奈は改めて、フェリクス王の魔王っぷりを感じた今日この頃なのであった。
「あ、そうだ。エド、飴食べる?」
魔物に遭遇しないし、もはやジャングル探索かハイキング気分な莉奈は、魔法鞄からベッコウ飴を取り出した。
玄米茶や紅茶、水などの飲料水は、各自自由に飲めるようにと旅の前に渡してある。だが、食べ物は別だ。
少し疲れたかなと、莉奈はエギエディルス皇子にベッコウ飴を差し出したら、ローレン補佐官とアーシェスが寄って来た。
「お前は、鳥トリグサか」
その様子を見ていたフェリクス王が、呆れ笑いをしていた。
食べ物を出した途端に、莉奈の周りに人が集まる姿は、まるで先程の鳥トリグサだと。
「え?」
莉奈は一瞬意味が分からず、キョトンとしていたが、エギエディルス皇子達はすぐ分かったらしく、顔を見合わせて笑っていた。
確かに言われて見れば、今の自分達は鳥トリグサ〈莉奈〉に誘われた獲物みたいなものである。
「捕食するなよ?」
「する訳がない!!」
"捕食"と言われ、やっと自分が揶揄われていると分かった莉奈は、堪らず頬を膨らませたのだった。
◇◇◇
「綺麗ね。この飴」
「ですね。キラキラしていてまるで宝石みたいだ」
アーシェスとローレン補佐官が、陽の光に当て目を細めていた。
透明度が高いベッコウ飴は、陽の光に当たるとキラッと光り、飴より鉱物の様だ。
「モル飴じゃないな」
似たような飴でもあるのか、エギエディルス皇子が口に放り込みながら言った。
「モル飴?」
「モルっていう、穀物から作る飴よ」
何だろうと首を傾げていたら、アーシェスが教えてくれた。
大麦に似た穀物で、そのモルを煮詰めて発酵させ固めると、こんな飴みたいになるらしい。少し麦の香ばしい香りがする飴だとか。ただ、ベッコウ飴ほどの透明感はないそうだ。
「この飴は何で作ってあるの?」
「砂糖と水」
「え?」
「砂糖と水」
「それだけ?」
「それだけです」
莉奈がそう言えば、アーシェスとローレン補佐官が目を丸くさせていた。
そんな簡単に出来る物だと思わなかった様だ。
「このベッコウ飴みたいな飴はないんですか?」
砂糖と水だけで作る簡単な飴だ。
砂糖はバカ高だが作り方は難しくないから、莉奈はコッチの世界でもあるのではと思った。
「ないわね」
「私も聞いた事はないですね」
そう思ったのだが、ないらしい。
アーシェスとローレン補佐官が飴を口にする横で、エギエディルス皇子が美味しそうに飴を転がしていた。
「モルから作れる難しい飴はあるのに、なんでないんだろう?」
「「さぁ?」」
ベッコウ飴は日本独自の飴だと聞いた事はあるけど、こんなに簡単なのに何故ないのだろう?
簡単過ぎてやらないのだろうか?
アーシェスもローレン補佐官も分からないと、笑うのだった。
「リナ、コッチの茶色っぽいのもベッコウ飴?」
「うん、フレーバーが違うベッコウ飴。さて、何味でしょう?」
すぐ答えを言うより、食べて当てた方が楽しいよね。
「よし、当ててやる」
エギエディルス皇子は、口に今入れたばかりの飴がまだあるにも関わらず、意気込んで茶色のベッコウ飴も口に放り込んだ。
「ん!! 紅茶味だ!!」
「正解で〜す」
口に含んですぐ分かったのか、エギエディルス皇子は目を丸くさせていた。
そう、茶色のベッコウ飴は紅茶のベッコウ飴だ。
茶葉から濃く煮出した紅茶を使って作ってみた。王宮にある紅茶だから品質が良く、香りがイイ。
口に含むと鼻にふわりと紅茶の良い香り。この紅茶のほのかな苦味と砂糖の優しい甘さが、ノーマルタイプとは違った味わいを醸し出す。
ちなみに、シュゼル皇子用には、紅茶のリキュール入りのも作ってある。執事長イベールがタイミング良く渡すだろう。
「紅茶味もウマい」
予期せぬ魔物討伐で疲れていたエギエディルス皇子も、ご機嫌である。
「ちなみに苺やマスカット、塩トマト飴もあるよ?」
屋台店で売っているみたいに、竹串に刺したバージョンと、キャンディ包みしたのと両方ある。
何故、両方あるのかというと……。
串を咥えたまま歩くのは危ないと思い、キャンディ包みも作ったのであった。
「苺」
「マスカット」
「塩トマト飴?」
今出す予定ではなかったけど、興味津々なエギエディルス皇子達の瞳にやられ、莉奈は魔法鞄から取り出した。
苺やマスカットは、良く屋台店にある感じで、飴を絡めて固めて作った物。塩トマト飴は、小さなトマトに飴を絡めた後、軽く塩を振った塩分補給用の飴だ。
「なんか可愛いわね」
「飴の中に果物を閉じ込めたのか」
アーシェスとローレン補佐官は、キャンディの中を見た後、楽しそうに魔法鞄にしまっていたけど、莉奈は早速とばかりに苺飴をパクリ。
「外はパリパリ、苺は甘酸っぱくて美味しい」
周りのベッコウ飴は薄いのでパリパリ、でも中の苺はジューシー。
塩トマト飴は、程よい塩気が疲れた身体を癒してくれる。どちらも甘いだけじゃなく、食感や味の変化もあって楽しい飴だ。
「リナのくれた玄米茶も美味しいわね」
「ホッとする味だ」
莉奈に貰った冷たい玄米茶も飲めば、アーシェスもローレン補佐官も疲れた身体に沁みるのだった。




