51 出来たぞ
「よいこらせっと」
エギエディルス皇子達が、だいぶ食べてしまったが、まだ1、2キロはあるククベリーを袋ごと、魔法鞄に入れた。
音もなく、魔法鞄に吸い込まれたのを見て感動する。
超面白いんですけど!!
手を魔法鞄に突っ込むと、頭の中に何が入っているのか、鮮明に浮かぶ。鞄に入った物を手探りで出すのと違って、鞄の中身が記憶として浮かぶ感じだ。
「あのねリナ? 魔法鞄を貰えて嬉しいのは分かるけど "よいこらせ" って、掛け声はどうかと思うわよ?」
ククベリーの袋を入れた時の、掛け声を聞いていたのか、ラナは苦笑いしている。
「え? じゃあ、なんて言えばいいの? どっこらせ?」
「……なんで、何か言おうとするのよ。黙ってしまえばいいでしょう?」
ラナは、さらに呆れた。なぜ掛け声をつけようとするのかと。
「だってエド?」
「なんで、俺に話を振るんだよ」
笑うしかないエギエディルス皇子。自分に訊いてくる意味がわからない。
「あ~。肝心の話をするの忘れてた!!」
そもそも、自分がここに来た本題を忘れていた、エギエディルス皇子は今、思い出し声を上げた。
「……冷凍庫、出来たぞ!!」
と、エギエディルス皇子は莉奈に言った。
「……は?」
急に、そんな事を言われても、さっぱりわからない。
「お前、昨日あったら便利って言ってただろ?」
「ん? あ~言ってたね」
「出来たぞ?」
「………………」
なんだよ、出来たぞって。
電器店がないんだから、作るんだろうけど……。
昨日の今日で作れるのかね?
そんな簡単に出来る物なのか?
「アハハ……びっくりだよな~。俺もさっき言われて驚いたし」
エギエディルス皇子は、空笑いしていた。昨日、兄シュゼル皇子が作れと命じてたのは知ってはいたが、そんな早くに出来るとは思ってもみなかったのだ。
「……言われてって……誰に言われたの?」
「シュゼ兄」
朝方 "出来ましたよ~" と、来た時には驚きを通り越して唖然だった。そんな簡単な物ではないのは知っている。なのに出来たのだから。
「あ~……んで呼んで来いって、言われてたんだった」
「「「………………」」」
莉奈達は、唖然である。
言われてたんだった……じゃねぇよ!!
なんで、そんな大事な事、先に言わないかな!?
一国の宰相が呼んでるのに、暢気に紅茶飲んで話してましたけど?
「リナ!! 急がないと!!」
ラナは慌てて莉奈を立ち上がらせる。
「身体が重くて、力が出ない」
もう、やだ。イヤな予感しかしない。
「バカ言ってないで、急いで行くわよ!?」
ラナは無理やり莉奈をイスから引き離すと、引きずる様にシュゼル皇子が待ち受ける厨房へと、足を運ばせるのであった。