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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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497 大変な作業の予感



 紫雲の盾に芋娘と呼ばれたアメリアは、怒るよりも先にショックだったらしく、フラフラと職場に戻って行った。

「アメリアが芋娘なら、アンナはなんて呼ばれているんだろう?」

 普段から、竜に好き勝手に呼ばれている莉奈は、今更なので怒りはすぐ消えていた。

 それより、あの竜に他の人達は何と呼ばれているかが気になったのだ。

 ただフェリクス王に暴言を吐いて、無事な竜などいないハズだから、フェリクス王には、変なあだ名など付けていないだろうと、莉奈は思ったのだった。






 ◇◇◇







「ヤッホー、リナ」

 ついでだからと白竜宮の厨房に来てみれば、料理人サイルが弾ける笑顔で歩み寄って来た。

 今の時間なら夕食の準備で忙しいのに、扉からそっと覗いただけなのによく気付いたなと、莉奈は苦笑いと感心と複雑な心境だ。

 何を作っているのか興味があった莉奈は、邪魔にならないようにしながら厨房に入った。

 白竜宮は軍部だから、力を付けるために肉系が多く出る。

 夕食に肉料理を作っているみたいだった。

「夕食は何?」

「ロックバードとブラッドバッファローのカツ」

「イイね。カツ」

 今夜は銀海宮でなく、白竜宮で夕食にしてもいいかなと莉奈は思いを馳せた。

 千切りキャベツにチキンカツ。そこにたっぷりのタルタルソース。少し醤油を垂らして味変したり、熱々の白飯と一緒に口にハフハフと。

 味噌汁がないのは致し方がないけど、潮汁ならある。玄米茶と糠漬けモドキを添えれば、立派な定食の出来上がりである。

 莉奈の頭の中は、揚げ物定食でワクワクし始めていた。




 そんな莉奈の横では、サイル達が首を傾げていた。

「だけど、ロックバードはともかくとして、ブラッドバッファローにタルタルソースは何かピンとこないんだよなぁ」

「鶏肉とエビには最強のタルタルソースなのにな。まぁ合わない事はないけど、コレだ! とも違う」

「塩や醤油は合うけど、他に何かないのかなと皆で今話してたとこ」

 確かにタルタルソースは、チキンカツとかエビフライは抜群に相性はイイ。しかし、トンカツやビーフカツに付けて食べるイメージはない。

 なるほど……と莉奈が頷いていると、皆の熱い視線と交差した。





「醤油でイイんじゃない?」

「そうなんだけど、何かない?」

 熱視線が再び莉奈に向かった。

 これはもしかしなくても、作って欲しいと言う事だよね?



 

「すぐに出来ないよ?」

 マヨネーズならともかく、莉奈の考える調味料はすぐには無理だ。

 だってこの世界は、時短出来る材料も道具もないから、それなりの時間と労力が必要である。

「それは覚悟の上だよ」

「そうそう。半日くらいは覚悟してる」

 手間暇が掛かると察した皆は、莉奈の言葉に笑っていた。

 莉奈が作ってくれる料理に触れ、知識を付けた料理人達は、莉奈の教えてくれる物が簡単な物だけでないと理解していたからだ。

 だが、その笑顔もすぐに消える事になった訳だけど……。




「え、2日くらい掛かるよ?」

「「「……え??」」」

「2日」

「「「……」」」

 まさか今日中ではなかったと、皆は絶句していた。

 マヨネーズみたいに大変だけど、小一時間もあれば出来るかな〜? ぐらいの認識だったのだ。

 多く見積もっても半日。なのに答えはまさかの2日だった。

「塩で我慢したら?」

 高級な魔物肉なんだし、塩で十分美味しいハズ。

 ワサビがあれば本当はイイんだけど、ホースラディッシュで代用すれば充分だ。

 固まってしまった皆を見て、莉奈は苦笑いしていた。




 だが、そんな顔をしていたのはほんの一瞬だった。

「今日はチキンカツとエビフライにして、ブラッドバッファローは明日にすればイイか」

 と言うものだから、莉奈は苦笑いのまま固まった。

 そうだ。魔法鞄マジックバッグにしまっておけば、いつでも揚げたてそのままだもんね。準備は無駄になる事はないので、諦める必要などなかった。

「2日掛かってもイイんだ?」

「「「うん!!」」」

 大変なんだよねと、笑顔に含めたつもりだったが、皆には関係ないらしい。

 莉奈は工程を知っているがために、作る前からゾッとしてしまった。

 言わなきゃ良かったなと。




「あ〜んじゃ。リックさんも呼んで来るよ」

 どうせ出来たら出来たで「どうやって作るんだ?」と訊かれるのは分かっている。

 また1から工程を説明するのは面倒だし。人手もあった方がいいだろう。

「あ、俺が呼んで来るよ。黒狼の所からも人手を借りて来る」

 手が空いたサイルが進んで挙手してくれた。

 どうせならと、魔法省からも呼んで来るらしい。

「黒狼宮に行くなら、ついでに香辛料も貰って来て欲しいな」

「イイけど……スゴい種類と量だな」

「どうせなら、いっぺんに作った方がしばらく作らないで済むよ?」

「うん、まぁ……うん」

 手持ちの分では足りないと、莉奈に渡されたメモを見て、サイルは苦笑いが止まらない。

 シナモン、タイム、クローブ……軽く見てもザッと5種類は書いてあったのだ。莉奈が作ろうとしているモノは何だろうか。

 サイルはメモを見ても、全く想像が出来なかったが、人手は多い方が良さそうだなと思ったのであった。











☆*:.。.

 いつもお読み頂きありがとうございます

                   .。.:*☆


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