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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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481 醤油はイイけど、マヨネーズは悩む



「ん〜っ。美味しい!!」

 いつもの通りに試食会となった訳だけど、リヴァイアサンの試食は滅多にないだろう。

 たまにコリッとする身だが、筋とは違いその食感がたまらなく美味しい。

 サーモンに似た美味しい脂が口一杯に広がり、レモン汁がサッパリさせる。ベビーリーフの優しい苦味が、リヴァイアサンの脂の甘さを引き立てて旨味をより感じた。

 醤油は臭みを取り魚の味を引き立てるけど、このドレッシングは全てを一体化させる気がする。

 どちらも美味しいが、こちらはレモン汁が入っているから、後味がスゴくサッパリである。




「醤油も美味しかったけど、こっちはこっちでガラッと違って、サッパリしてるからサラダ感覚だな」

「薄切りのパンにのっけても、美味しいんじゃない?」

「だな。醤油はご飯。コレはパンが合う」

「リヴァイアサン、すっげぇウマイ」

「あぁぁ〜、リヴァイアサンなんてこの先、いつ食べられるか分からないなら貴重だよね」

「神を喰らって加護を貰うって、こういう事か」

「「「なんか力が漲る感じがする」」」

 力が漲るなんて言っているけど、リヴァイアサンの身には何の効力もない。【鑑定】で調べて視たから間違いない。

 だけど、あの幻想の魔物とも言われているくらいに貴重な神龍を食べたという事実が、皆をそんな気分にさせているみたいだった。

 



「ベビーリーフをアボカドに変えても美味しいと思うよ?」

 サーモンとアボカドのコンビは最強だもんね。

 なら、味が似てるリヴァイアサンも間違いないだろうと、莉奈は思ったのだ。

「スライス玉ねぎとアボカド、それとリヴァイアサン。それをマヨネーズと……」

「マヨネーズか!!」

「もうマヨネーズは何でも合うな」

「マヨネーズ最高!!」

 莉奈が最後まで説明するまでもなく、マヨラーがバタバタと動き始めていた。

 ちなみに、莉奈はそれなりにマヨネーズは好きだが、マヨネーズは何でも合うとまで思わない。

 マグロの赤身に付けるとトロになるとか、ご飯にのせると美味しいとか色々言うけど、莉奈は何でもかんでもマヨネーズを付けたりしない。

 そこまですると、もはやメインはマヨネーズだよね。

 マヨネーズ好きのマヨネーズの為の料理だと思う。




「リヴァイアサンが台無しにならなきゃいいけど」

 それを見ていたマテウス副料理長が、ボソリと呟いていた。

 もう二度と口にする事が出来ないかもしれない貴重な"リヴァイアサン"を、大量のマヨネーズで和えるなんてと嘆いていた。

 そこまでするなら、リヴァイアサンでなくてもいいのではと思う様だ。

「お前達、その料理は"神龍"でなければダメなのか、もう一度よく考えて調理してくれ」

 マヨラーの狂った様なマヨネーズ使いに、さすがのリック料理長も苦言を呈していた。

 つい、他の魚にしろと、言いたくなってしまった様だった。




「「「……」」」

 リック料理長の言葉に我に返った皆は、作業していた手を止めた。

 冷静に考えると、このリヴァイアサンの貴重な身を、マヨネーズ味にして食べる意味があるのかと思ったらしい。

 だが、逆に一生に一度もない贅沢な料理だ。いや、だからこそ食べるべきではないのかと。マヨラー達の葛藤が目に見えた。




「確かにもったいないよね」

 莉奈はウムと頷いていた。

 確かに、リヴァイアサンの身は軽く何千人分くらいはある。

 たっぷりあるんだから好きにしたら? と言いたいところだけど、その行為は言うなればA5ランクの牛肉や大トロに、マヨネーズを付けて食べる様なものではなかろうか。

 自分ならするかと言われたら、絶対にしない。

 自分が大枚を払って買って来た物なら、マヨネーズを付けようが練乳を付けようが好きにすればイイと思うけど……コレは王竜が狩って来たリヴァイアサンだ。

 マヨネーズが好きだからって理由だけで、マヨネーズをたっぷり付けるのは何か違う気がする。




「マヨネーズをたっぷり付けて食べたいなら、自分で狩り獲ってくればいいんじゃないかな?」

 なら、誰からも文句は言われない。

 莉奈は単純にそう思ったので、小さな声で言っていた。

「えっ……リヴァイアサンを……?」

「「「狩り獲る??」」」

「「「いやいやいや、絶対に無理でしょう!?」」」

 莉奈がそう言ったら、一斉に手や首を横に振っていた。

 リヴァイアサンどころか、弱小の魔物すら狩れる自信がない。莉奈の無茶振りに皆は、盛大なリアクションを返すのであった。







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