480 神龍リヴァイアサンのカルパッチョ
「さて、ブロッコリー神に見守られながら、リヴァイアサンの刺身……っと切り身は平らなお皿に並べるよ」
円を描くように並べるだけで、なんかオシャレにみえる。
フグ刺しみたいに透けてないから、柄のない白いお皿に並べてみたけど、白色と薄水色のコントラストは良く映えて、花みたいで綺麗だ。
「刺身? そっか刺身とも言うんだったな。しかし、そうやって並べると全然印象が変わるな」
「やっぱりアイツには盛り付けは、させないでおこう」
リック料理長が莉奈の皿を見て感心していた横で、マテウス副料理長がため息を吐いていた。
莉奈の真似をしていたリリアンの皿は、薄切りのリヴァイアサンがあちらこちらと、グチャグチャにのっている。せめて、平皿に伸ばして並べればイイのに、グラタン皿みたいな深皿にざっくばらんにのせていた。
見た目って、ものスゴく大事だと思う。
だって、例え味が同じでも、視覚が違うと途端に不味く感じるのだから、盛り付けのセンスは必要ではないだろうか。
「で、円を描くように切り身を並べたら、その円の真ん中に好みの葉野菜をふんわりとのせる」
「ふんわり? でも、食べやすい方がイイよね〜」
「「「うっわ」」」
それを見ていた料理人達から、ドン引きするような声が聞こえた。
ふんわりとと説明したにも関わらず、リリアンはルッコラやチャービルなど、色んなベビーリーフを手で適当にちぎってのせていたのだ。
リヴァイアサンの切り身自体が、ボテボテと無残に散らばってるのに、葉まで変にちぎると、なんか汚く感じる。
リリアンの盛り付け方は、どうせ一緒に食べるからイイだろうと、カレーライスのカレーとご飯を混ぜて出されるくらいにイヤだなと、莉奈は思って見ていた。
「後は上にかけるドレッシングを作る」
なんでも向き不向きがあるとは言うけど、リリアンはオリジナルに創作し過ぎて自爆するタイプだ。
アレは絶対にないなと思いながら、莉奈は玉ねぎを包丁で刻む事にした。
「玉ねぎは微塵切りにしてボウルに。そこにオリーブ油とレモン汁、後は醤油を入れて混ぜれば、簡単ドレッシングの出来上がり」
「それをかけるんだな?」
「うん。玉ねぎは苦手なら抜きで、ニンニクが好きな人はここに擦り下ろして入れるのもありだね」
莉奈はリヴァイアサンの刺身に、出来立てのドレッシングをスプーンで回しかけた。
「本来なら、このリヴァイアサンは薄切りにした後、塩を振ってしばらくおいてから使うと、魚の旨味が違うと思うんだけど……まぁ、コレはただの味見用だからそのままにした」
「なるほど。臭み取りだな?」
「う〜ん、たぶん? そうなのかな?」
リック料理長が魚のアラ出汁と同じ理由かと、頷いていたのだが、莉奈は首を傾げていた。
料理本にそう記載されていたから、そう作ってきただけで、正直言って理由など知らない。
何故そうする必要があるのかなんて、記載されてない事も多いし、書いてあっても細かく覚えてなかった。
「さて、最後に黒胡椒をガリガリっとすれば、簡単"カルパッチョ"の出来上がり」
この切り身がリヴァイアサンっていうのが、なんかまだ頭で処理しきれてないけど。
だって、自分の知っている魚の身の色に、青色系ってなかったからね。
「色んな色があって、華やかだな」
「確かに。だけど、同じ食材で作ったハズのリリアンのは……微妙」
「盛り付けって、本当に大事だよね」
「随分と前に適当にやるなって、怒られた事があったけど、アレ見てるとその通りだなって思う」
食器選びから始まり盛り付け方など、ちょっと違うだけで印象がガラッと変わる。
同じ食材や調味料で作ったにも関わらず、莉奈とリリアンの料理はまるで別物だった。
ドレッシングもほどほどにしたら良かったのに、スープみたいにヒタヒタなのだ。リヴァイアサンがきっと泣いてるよ。こんな風になる為に倒されたのかと。
リリアンのを見て、味に直接関係ない視覚や嗅覚、食感など色々含めて料理なのだと、皆は再認識したのであった。
「味は同じだとしても、試食はリナのを食いたい」
そう誰かが呟けば、皆は大きく賛同し頷いていたのだった。




