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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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466 ポム・スフレ



 とりあえず、スライムの事は一旦頭の片隅に置き、莉奈は簡単で美味しいジャガイモ料理に取り掛かる事にした。

「んじゃ、誰かそっちでジャガイモを蒸すか茹でといて」

「「分かった!」」

「そっちでジャガイモを茹でている間に、こっちでポテトチップスの進化バージョン"ポム・スフレ"でも作りますか」

「「「ポム・スフレ?」」」

 莉奈が新しい料理名を口にすれば、料理人達が一気に活気ついた。

 日本ではポムが浸透しているが、ポメ・スフレが正式だった気がする。

「ポテトチップスを作る時に、たまに膨らんだりしない?」

「「「する!」」」

「それを作るの」

 ザックリ説明すると、そのぷっくり膨らんだポテトチップスが"ポム・スフレ"である。




「なんだ、それなら簡単じゃん!!」

「ジャガイモを薄くスライスして、ただ揚げるだけだろう?」

「ポテトチップスと変わんないよね」

 莉奈がザックリ説明すれば、皆は口々に簡単ではないかと笑っていた。

 ポテトチップスは酒飲みの定番のツマミで、良く作っている。今更、名前が変わったところで、面白味も難しさもないと。

「んじゃ、作ってみなよ」

 購入した袋の中に、たまに運良く入っているあの膨んだポテトチップス。アレを強制的に作るのは、実はかなり難しい。

 簡単簡単と笑う皆に、莉奈は内心ほくそ笑んでいた。




「バカにしてんな? ポテトチップスが進化したって、所詮はポテトチップス」

「今の俺達にかかれば、簡単だとも」

「「「リナに俺達の成長を見せる時だ!!」」」

「「「おぉーーっ!!」」」

 リック料理長とマテウス副料理長が呆れる中、他の料理人達はジャガイモを薄くスライスして、フライヤーに突撃する。

 手慣れたものよと、皆は鼻を高く伸ばして意気揚々と、ジャガイモを揚げ始めていた。

「リナが今更、そんな初歩的で簡単な料理を作らせる訳がない」

「ですよねぇ」

 ポテトチップスは、ジャガイモを薄くスライスして洗って揚げるだけ。

 そんな簡単な料理を、莉奈が教える訳がない。

 リック料理長とマテウス副料理長は、浅はかな部下達を苦笑いして見ていたのだった。





 ーー十数分後。





「出来たぞ?」

 料理人達がそう言って差し出したのは、一部分が膨らんだポテトチップス数枚である。

 あながち間違いではないけど、全然違うんだよコレは。

「端しか膨らんでませんけど?」

「……は、端しか膨らまなかった」

 莉奈が苦笑いしていれば、皆は目を逸らしていた。

 あんなに豪語していたのに、結果出来たのは、端だけがなんとなく膨らんだ数枚だけだったからだ。



「だって、普通に揚げたらポテトチップスしか出来なかったの!!」

「膨らんだのは数枚で、それもたまたまだと気付いたんだよ」

「しかも、穴あきだし」

「チョットしか膨らまなかったし!!」

「リナの言ってた"ポム・スフレ"ってコレじゃないよな?」

「違うね」

 ジャガイモを揚げれば、簡単に出来ると考えていた料理人達は、作り始めて愕然としていた。

 いつも通り普通に油で揚げれば、ただのポテトチップスであった。

 膨みを意識して揚げた事など、今までなかったのに膨らむ訳がない。

「あ、素揚げじゃないのか?」

「素揚げだよ」

「え? じゃあ、何か付けるのか?」

「付けないよ」

「そうか! じゃあ温度だな!?」

「うん。まぁ、半分正解」

「「「半分」」」

 結局皆は、莉奈に質問責めをしてはみたが、正解に辿り着く事はなかった。

 ジャガイモを揚げるだけだと、バカにした自分達がバカだったと、猛省する料理人達なのであった。




 そんな料理人達を見ながら、莉奈は作業をしながら改めて工程を説明する。

「まず、ポテトチップスのジャガイモは薄くスライスするけど、ポム・スフレのジャガイモは、そこまで薄切りにはしないんだよ」

「「「え?」」」

「3ミリから、3.5ミリくらいの厚さにする」

「結構厚めだ」

「しかも、厚さは均等にしないと失敗しやすい」

 莉奈が実際にジャガイモを切って見せれば、皆は驚いた表情をしていた。

 ポテトチップスは薄切りだったのに、こっちは厚切りである。

 厚みから違うなんて思わなかったし、均等だなんて難しいではないか。

「水に浸けるのは合ってるけど、このジャガイモはフライヤーじゃなくて、小鍋で揚げるのがいいと思う」

「え? なんで??」

 水に浸けた後、水を切りフキンでジャガイモの水分を取る。

 ここは、ポテトチップスと同じ工程である。だが、そこからは全く違うのだと説明すれば、さらに驚いた表情をしていた。



「ポテトチップスは放っておいても揚がるけど、ポム・スフレは低温の油でジャガイモを大きく揺すりながら揚げるのがコツ」

 フライヤーなら菜箸かお玉で、常に揺らして揚げれば多分大丈夫。

 フライヤーなんかで揚げた事がないから、莉奈には分からなかった。なので、小鍋に油を入れて低温で揚げる事にした。

 その小鍋を、大きく揺すりながら揚げるのである。

「揺すりながら??」

「え、揚げてる小鍋を揺らすの?」

「なんで??」

 そんな工程がある揚げ物は知らない。

 大抵は衣が剥がれ落ちるから、余計に触るなと言われる事が多いのだ。だから、疑問しかない皆は莉奈に訊いた。



「しらん」

「えぇっ!?」

 だが、返って来た言葉は相変わらずであった。

 莉奈は、いちいち何故かなんて理由など知らない。

 そうレシピ本に書いてあったから、そうしているだけだからだ。

「要するに、油を絶えず動かしている必要があるんだな?」

「うん。菜箸とかお玉で掻き回すのもアリ」

「なら、いつも落ち着きのないリリアンにやらせると、上手くいくな」

 リック料理長だけは、冷静に適役を考えている様だった。

 パンを焼いている途中でも、オーブンを開けてしまうリリアン。

 揚げ物を揚げていれば、菜箸やトングで弄り回すリリアン。

 イジってヨシなら、もはやリリアンにうってつけの料理ではないか。



「で、油の温度が高くならないよう注意しながら、揚げる事7分。ジャガイモの表面がプクプクしてきたら、バットに移す」

「移す?」

「え? コレで出来上がりか?」

「これから自然に膨らむのか?」

 莉奈が小鍋からジャガイモを取り出しバットに移せば、口々に疑問の声が聞こえてきた。

 莉奈のやる事が、あまりにもポテトチップスの作り方と違い過ぎるからだ。




「違うよ。一旦バットに移すだけ。今度は油を180度くらいの高温にする」

「そうか、2度揚げだな」

「正解」

 莉奈が小鍋の油の温度を上げていれば、リック料理長はすぐに分かった様である。

「すぐに高温の油に移してもいいけど、家ではこうやってたからやっただけ」

 他の料理同様に、レシピは豊富で本によって作り方が違うから、自分なりに上手くいった方法でやっているだけだ。

 2度揚げする前に、軽く冷ました方がいいと言う本もあったが、冷まし過ぎると膨らまず上手くいかなかった。なんの料理でもそうだけど、実際に作ってみないと分からない。

 レシピ通りにいかない事なんて、普通にあるしね。

「で、高温の油で2度揚げしてると……」

「あ、膨らみ始めた!!」

「ちなみにバットに上げた時、萎んじゃったらもう一度揚げ直せば膨らむよ」

「なんでジャガイモが膨らむの??」

「しらん」

 知る訳がないので、莉奈はいつも通りにぶった切る。

 原理はよく分からないけど、こうするとスライスしたジャガイモが、何故か風船の様に丸く膨らむのである。楽しいし面白いよね?

「ぷっくり膨らんだら"ポム・スフレ"の出来上がり」

 後は、ケチャップがあればケチャップを付けるんだけど、ないので塩をかけて食べるだけだ。










誤字脱字の報告、ありがとうございます。

恥ずかしさに悶絶しながら直しております。_:(´ཀ`」 ∠):


ブクマや評価、そしていいねを付けて頂き、感謝しております。

頑張らねばと活力剤になってます。(*´ω`*)〜♪



〜お知らせ〜



【7月8日(金)】に、この小説の7巻が出る予定ですので、興味がある方はそちらの方も、よろしくお願いします。(๑╹ω╹๑ )

 


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