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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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462 大袈裟な



 と、いう事で。

 莉奈はスライムを解体してもらうため、ゲオルグ師団長と白竜宮に来ていた。

 ただ、その時に仕事に戻るゲオルグ師団長に「ここでは暴れるなよ?」と、失礼な言葉を貰ったのは大いに不服である。

「え? スライムなんか、解体すんのか?」

 眉根を寄せられたものの、軍部の人は黒スライムを解体してくれた。



 解体されれば、スライムもさほど気持ち悪くない。

 莉奈は黒スライムを良く洗うと、包丁を魔法鞄マジックバッグから取り出し、黒スライムの表皮を薄く削ぎ落とした。

 それから、調理しやすい様にと適当な大きさに切り落としてみれば、感触も見ためもコンニャクみたいである。

 初めは、スライムを素手で触るには少し抵抗があったけど、こうなると全然触れるから不思議だ。




「一応、訊くけど。どうすんだ?」

 莉奈といえば料理なので、まさかと思いつつ、軍部の人が恐る恐る訊いた。

「え? 食べてみようかな〜なんて?」

「「「……」」」

 莉奈が小首を傾げて答えれば、皆は絶句してしまった。

 ロックバードやブラッドバッファローは、魔物は魔物でも鳥や牛が進化したと言われている。なので、瘴気にあたっている以外に特別気になる事はなかった。

 だが、スライムは違う。元からいようが何から進化しようが、アレは獣系ではない。

 なので、虫と同様食べるのは抵抗しかなかった。



「タピオカっぽくして食べるなら、小さく切ってから乾燥させた方がいいのかな?」

「「「……」」」

「その方が乾きも早いよね?」

「「「……」」」

 莉奈の言っている言葉に誰も返答しないから、もはや独り言である。

 莉奈の言う"タピオカ"が何か分からないが、皆に言わせればそれはどう見てもスライムである。

 だから、何をどうしようが、口にするには抵抗感があるのだ。だが、莉奈にはそれはないのか、皆が怪訝な顔をしているにも関わらず、サクサクと作業していた。



 バットに乾いた布巾を引いて、そこにサイコロ状に切った黒スライムを並べていたのだ。皆にはスライムだが、莉奈には黒スライムは黒糖入り寒天みたいに見えていた。

「"みつ豆"みたいに食べるのもアリかも」

 甘いシロップにフルーツと砂糖で煮た豆、それとこの黒スライムを入れれば、みつ豆風になるのではなかろうか。

「みつ豆って何だ?」

「アレ? エド、まだいたんだ」

「いたよ!」

 白竜宮に来る途中に別れたと思ったが、それは莉奈の思い違いらしかった。

 エギエディルス皇子はそんな莉奈を見て、どれだけスライムに夢中なんだよと呆れていた。




「で? みつ豆って何だよ?」

 失礼な莉奈の言動はいつもの事なので、スライム同様どうでもいいが、みつ豆は気になるエギエディルス皇子。

「う〜んと、テングサとかオゴノリ? っていう海藻類から作る寒天と、果物と豆をシロップで食べるスイーツ」

「スイーツ!!」

「まぁ、寒天がないから"スライム"で代用するしかないけど」

「……」

 代用食がスライムだと聞いた途端、エギエディルス皇子の眉間にシワが寄った。

 代用するしかないのだったら、そんなスイーツはいらない。

「他に代用出来ないのかよ?」

「寒天の代用は……スライムしかないね〜」

 寒天は半透明だから、ゼリーが作れれば代用出来るだろう。だが、ゼラチンがない。なので、現時点ではスライムで代用するしかない。

 莉奈がそう言えば、エギエディルス皇子の眉間のシワが、さらに深くなっていた。

「俺は食わねぇからな」

 莉奈の並べる黒スライムを見て、エギエディルス皇子は拒否するように口を手で押さえる。



「加工しちゃえば、スライムだなんて分からないんじゃない?」

 タピオカミルクティーならぬ、スライムミルクティーは今、工程を見てしまったから分かるだろうけど……何かに混ぜて跡形もなくなったら、絶対に分からないに違いない。

「お前、俺に勝手に食わせたら、不敬、暴行、傷害罪で極刑だからな?」

 そんなに嫌ですか、エギエディルス皇子さんや。

 罪に問うと言うエギエディルス皇子に、莉奈は苦笑いするのであった。





 ◇◇◇





「で、お前はなんで、黒以外のスライムも獲って来たんだよ」

 黒色だけかと思ったら、莉奈は白色のスライムまで獲って来ていたのだ。

 寸胴鍋の底に、黒色より一回り小さな白スライムが。

「ん?」

「んじゃねぇよ。白まで食うのかよ!」

 実は莉奈、黒色の陰に隠れていた白色のスライムも、倒して来たのである。

 莉奈は鑑定持ちとはいえ、何でもかんでも食すとなると、エギエディルス皇子は色々と心配である。

 他にも色々食べられるモノがあるのだから、スライムを食べる意味がエギエディルス皇子には理解出来なかった。



「コレ、"ゼラチン"の代わりになるんだって」

「は?」

「ゼラチン」

 莉奈の言う"ゼラチン"が何か分からないエギエディルス皇子は、怪訝な顔をしていた。

 黒色のスライムを追いかけたら、白色もいたので【鑑定】したのだ。




 【スライム】

 地面のある所であれば、どこにでも生息している白色スライム。

 他色のスライムと違い木の実や果物を好む魔物。

 木の上にいる事が多く、下を通る者に顔めがけて飛んで来て窒息させる。



 〈用途〉

 色ナシの様に、培養は出来ない。

 核や消化器官を取り除いたスライムは、温めたり冷やす事で保温剤や保冷剤として使用可能。

 但し、何回か繰り返すと腐る。

 薄くスライスして、1度乾燥させたスライムを化粧水やローションで戻すと、美容パックになる。



 〈その他〉

 核や消化器官は食べられないが、表皮を取り除いた身は食用可。




 色ナシがナタデココ風で、黒色はタピオカ風。ならば、白色はと気になり、さらに【検索】を掛けて視ていたのである。



 【表皮を取り除いた身】

 水で良く洗い、1度乾燥させてから水で戻すと弾力を楽しめる。

 砂糖水で戻すと、モチモチしてより美味しい。

 とある世界の白玉に食感が似ている。

 乾燥させた身を粉末状にすると、ゼラチンや寒天の代用になる。




「寒天の代用にもなるみたいだから、みつ豆が作れるよ?」

 ゼラチンはコラーゲンから作る動物性。

 寒天やアガーは海藻から作る植物性。

 スライムは……動物、いや魔物性?

 肉や魚料理の後に、フライパンや鍋の底に残った煮汁が冷えて固まるのは、このゼラチンの主な原料となるコラーゲンである。

 テングサから作るのは大変だし、ゼラチンは自分では絶対に作れないから、代用品があるのは便利だよね。



「いいか、リナ」

「うん?」

「勝手に食べさせたらーー」

「はいはい。極刑なんですね。ゴンザレス殿下」

 さらに、念を押された。エギエディルス皇子はどうしても口にしたくないらしい。

 食べられるモノを食べさせる事が、暴行罪や傷害罪になるかはともかくとして、エギエディルス皇子に対してそんな軽口は本来なら「"不敬罪"なんだぞ?」、という皆の視線があったのは言うまでもなかった。







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