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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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458/657

458 こんにちは、スライムちゃん。そして、さようなら

5月はもう終わったと勘違いして、更新忘れていました。

(`・∀・´)あら? まだ5月だ


誤字報告で気付きました。^ - ^(笑)




「まぁ、とにかくスライムくらいなら問題ないだろう」

 ゲオルグ師団長は自分達もいるしと、門扉から外に出る事を許可してくれた。

 但し、走り回らない様にと。

 子供ではないのだから、走り回らないと返したのは言うまでもない。




 ◇◇◇




「なんか、プルプルしてるね」

 透明のスライムは"色ナシ"と呼び、あまり害がない魔物なので進んで駆除はしないとか。個数が目立つようなら間引き程度に、との話だった。

 その色ナシが、莉奈の数m先でプルプルしている。

 無色透明と言っても、クラゲより少し透明度が高い程度だ。

 透けているので、身体の中も良く見える。身体の真ん中くらいに核と呼ばれる赤い部分があり、そこから腸みたいな器官に繋がっていている感じ。

「そう言えば、ブルースライムは氷を作らせる道具として、使われてるんだよな」

「え? そうなのか?」

「この、王都育ちのボンボンが。金がある奴らは魔石を使った冷蔵庫を使ってるだろう? だけど、一般市民はそんなのは高くて使えないから、ブルースライムに作らせた氷を、氷屋から買って保冷庫に入れとくんだよ」

「「そうそう」」

 と頷く警備兵の仲間に、若干数名「へぇ」と感心する者がいた。

 実家が金持ちでなければ、魔石を使用する冷蔵庫は持っていない。魔石が高額な上に、魔力が空になれば、再び魔力を入れて貰う必要があるからだ。

 それも、また高いお金を支払ってである。

 一般市民には、まず無理であった。

 莉奈は、王城で生活させてもらっているから、詳しくは知らなかったが、ブルースライムは上手く使えば、氷製造器として重宝するみたいだ。

 その氷を売って商売する氷屋が、街や村にはあるらしい。



「あのスライムは何か役に立たないの?」

 せっかく存在しているのだし、ブルースライム同様に何かに使えないのかと莉奈は皆に訊いた。

「役に立たないんじゃないか?」

「いや、待てよ。トイレのスライムって色ナシの培養じゃなかったか?」

「あ、そうだよ、そう!! ゴミ箱のスライムも色ナシのだ!」

 1番害のない色ナシのスライムを培養して、トイレやゴミ箱に使用していたみたいである。

 王宮やお金のある家は、浄化魔法付きトイレだけど。

 しかし、色ナシスライムは本当に怖くないのか、スライムという魔物がいるのにも関わらず、皆は全然気にしていなかった。



「それでは、皆様……色ナシスライムちゃんに合掌」

 莉奈は色ナシのスライムに向かって、手を合わせた。

 だって、あの魔物のおかげでトイレが清潔なのだし、ゴミが少なく済むのだ。スライム様々ではなかろうか。

 莉奈がそう言えば、皆もスライムに向かって手を合わせていた。

「「「ありがとうございます」」」

「「「ってなんでだよ!」」」

 ノリツッコミをしている警備兵達。

 皆、楽しい人達だなと、莉奈は笑っていた。






 ◇◇◇






「なんか、ポヨンポヨンしていて可愛いよね?」

 色ナシスライムは、人がいても怖がらず逃げずにそこにいた。

 スライムがどういう心境か分からないが、莉奈がゆっくり近づいてもポヨンと跳ねている。

 地面は硬いのに、こんなに跳ね上がるなんてスゴい筋力だ。

 スライムに筋肉があるか謎だけど。

「油断してると危ないぞ?」

 莉奈の数歩後ろには、ゲオルグ師団長達がいつでも莉奈を守れる様に控えている。

 だが、1番は魔物に近付かない事だ。

「ほら!!」

 莉奈がもう少し近くで見ようと、一歩踏み出した途端に、スライムが莉奈の顔を目掛けて飛んで来たのだ。

 ゲオルグ師団長が莉奈の前に出ようとした瞬間ーー。




 ーーバシン!!




「危なっ!!」

 莉奈は考える間もなく、顔に飛んで来たスライムに、上段回し蹴りをかましていた。

 サッカーボールでも蹴るかのごとく、無防備に蹴られたスライムは、数メートル離れた城壁にベシャリと打ちつけられ、すぐにズルリと力なく地に落ちていた。

 いきなり始まった"莉奈VSスライム"は、戦うまでもなく即時終了となったのだった。

「いやぁ、ビックリした」

 まさか、飛んで来るなんて思わなかった莉奈は、安堵のため息を一つ吐く。

 あぁやって、顔に飛び付いて窒息させるのだろう。

 莉奈は、咄嗟に身体が動いて良かったと、掻いてもいない汗を拭っていた。

「「「……」」」

 ビックリしたのは莉奈だけではない。

 助けようと構えていたゲオルグ師団長達は、莉奈の瞬発力と蹴りの破壊力に唖然となっていた。

 言動は淑女ではないが、見た目だけなら莉奈も守られるべき一般人。なのだが、竜が一目置く少女なのを忘れていた。

 彼女は無抵抗とはいえ、あの真珠姫を倒した強者だったという事を。

 ゲオルグ師団長達は、城壁近くで潰れたスライムを見て、改めて莉奈が只者ではないと認識させられたのだった。




「おっ? まだいた」

 木の陰に潜んでいた色ナシスライムを見つけると、莉奈は怖がりもせず追撃に備え、軽い仕草で構えていた。

 その姿勢に皆は再び唖然である。それは、初めて魔物を見た少女の姿ではないからだ。

 例えどんなに訓練を重ねた者であっても、魔物との初めての対戦は一瞬躊躇いがあるものだ。

 なのに、莉奈は違った。驚きながらも、冷静に対処し倒していた。




 ーーオカシイ。




 莉奈は知らないが、警備兵達はフェリクス王から"出来る範囲内で莉奈を守れ"と勅命を受けている。

 だが莉奈は、弱いとはいえ、一応魔物であるスライムを"武器なし"で一撃で倒したのだ。

 その姿に皆は引き攣る様な笑みを浮かべ、自然と顔を見合わせ「アレ?」と密かに首を傾げていた。





『陛下。我々は一体何から、彼女を守れと言うのでしょうか?』と。

 







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