426 皆で食べて世界を救おう!?
「「……」」
2人は口にした物を今更吐き出すのもマナーが悪いからか、それとも莉奈に悪いと思っているのか、咀嚼も忘れ固まっていた。
「大丈夫大丈夫。しっかり噛めば、口にしてしまった寄生虫も死にますよ」
と言うか、ちゃんと確認したから大丈夫だけど。
莉奈は平然とした表情で、モグモグと食べ笑った。
「いや、ほの」
噛めばと言われても噛めないのか、タール長官が青褪めていた。
シュゼル皇子は、考えたくもないのか固まって虚空を見ていた。
「あー!! 本当に大丈夫ですってば。いないのは確認して出しましたから!」
食中毒になる様な変な物は出さないからと、2人には強調しておく。
だって、今後のためにもそこはしっかりしておかないとね?
「やはり、ポーション……」
口直しか念の為にか知らないが、シュゼル皇子はポケットからポーションらしき物を取り出し、一気に飲んでいた。
ポーションって、寄生虫に効くのかな?
【駆虫薬】
中度の毒や、身体に侵食した寄生虫などを駆除する。
うっわぁ。
駆虫薬っていわゆる虫下しだよね?
莉奈はシュゼル皇子の手にしていた"薬瓶"を何気なく【鑑定】し、ドン引きしていた。
ポーションかと思っていたら、駆虫薬だった。
シュゼル皇子が躊躇いもなく飲んだのだから、おそらくイカの寄生虫にも効くのだろう。
そして、ポーションと呟いていたのは、もしかして……寄生虫の心配がない、安心安全なポーション生活に戻ろうと考えているのかもしれない。
このままでは"ポーションドリンカー"再びである。
「あ、でも、ポーションを作るマナの葉も葉である以上、微生物や虫が付いてるんじゃ」
でも莉奈は、シュゼル皇子がポーションドリンカーに戻るより、そっちが先に気になってしまい思わず呟いていた。
だって、葉は虫が付いていて当たり前だもん。
微生物は悪い物だけとは限らないけど、虫はイヤだよね。気分的にも。
「……」
何か思う所があるのか、駆虫薬を口にしていたシュゼル皇子が再び固まっていた。
そこまで詳しく【鑑定】や【検索】して視てないが、駆虫薬の材料にも葉とか使うのかもしれない。
でも、では"水"でとは言わないのだから、水にも寄生虫や微生物がいるのを知っているのだろう。
まぁ、ポーションを精製する水は魔法で作った水だし、魔法で作った水オンリー生活なら虫は気にならないよね。
栄養失調で倒れる未来しか見えないけど。
大体そんな細かい事を気にしていたら、生活なんて出来ないし。食べちゃった時は食べちゃった時でしょう。
「何か入っているかもしれませんが、口直しにアイスクリーム食べますか?」
どんよりしてしまったシュゼル皇子と、タール長官の前に苺が入ったミルクアイスを出してみた。
これで気分が上がればいいけど。
「「"浄化"」」
2人は何も示し合わせた様子もないのに、息が合い過ぎるくらい同時に苺入りのアイスクリームに【浄化】魔法を掛けた。
「……」
え〜、何この人達。
莉奈は呆然というより、呆れていた。
莉奈が"何か入っているのかしれない"と揶揄う様に出したから、それに対する小さな抵抗なのだろう。
でも、それって大の大人がする事ですかね?
念には念をって事?
初めは呆れていた莉奈も、2人の子供みたいな抵抗になんだか笑ってしまった。もう、一周回って可笑しくなっていた。
「そこまでして食べて頂かなくても、結構ですよ」
と莉奈が母親の様な目線で苦笑いしながら、アイスクリームのお皿を引っ込めたら
「「あぁぁ〜」」
と悲しい声を上げるのだから、笑いしか出ない。
「"これからも"万全をもって料理を作らさせて頂きますから、安心してお召し上がり下さいね?」
莉奈は2人の前に、アイスクリームの皿を戻すのであった。
ちなみに苺入りのアイスクリームは、浄化を掛けたおかげか知らないけど、2人共ご満悦な表情で食べていたよ。
食後にタール長官には、イカの塩辛も渡しておいた。
イカの内臓で和えた物だと説明したら、タール長官はキラリと瞳が光り、シュゼル皇子はにこやかに拒絶した。
「私は魔物ではないので結構です」と。
なら、私は魔物ですか? と莉奈の笑顔が固まった。
でも言われてみれば、人間って何でも食べるよね。雑食とは言うけれど、節操がないとも言う。
そりゃあ、食い尽くされて絶滅する生き物もいる訳だ。
やっぱり、魔物の天敵は人間だよ。
食べて食べて食べまくって、世界中の魔物を減らしたら良い。
美味しいし、魔物も駆除出来て良い事だらけだ。
"皆で美味しく魔物を食べて、世界を救おう"。
この世界のスローガンはコレじゃないかな?
王宮への帰り道で、莉奈がそう右手を掲げていたらーー。
隣で一緒に歩いていたシュゼル皇子が、微妙な表情をしてこう言った。
「兄上とは違う意味で、魔物が逃げそうですね?」と。
失礼しちゃうよね?
◇◇◇
「リ〜ナ〜。どこに行ってたんだよぉ」
「虫? 虫か!?」
「魔物か? 魔物狩りか!?」
莉奈が銀海宮の厨房に戻って来たら、皆がワイワイと話し掛けてきた。
目的を詳しく言わずに出て行ったのは確かに私だが、虫とか魔物とか一体何の話をしているのかな?
「何を言ってるの?」
莉奈は頭の中が、ハテナで埋まる。
「からあげの隠し調味料に虫を捕まえに行ってるって、侍女のサリーが言ってたから」
「あ〜、リナならって」
「「「ねぇ?」」」
「何がどう、ねぇなんだよ」
皆が複雑な表情で言うものだから、莉奈は呆れて返していた。
サリーは本当に碌な事を言わない。
当人が面白ければ、他人はどうでもイイと言うタイプだからタチが悪い。
「だって、リナだから」
「あり得るかもって?」
「「「ねぇ?」」」
「……」
あまりの失礼な発言に、もはやぐうの音も出なかった莉奈。
普段、自分はどれだけ妙な行動をしているのだろうか?
信用以前の問題だ。1度頭突きをかましてから、話し合う必要がありそうだ。




