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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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422 お腹の虫



「それ、どうするの?」

 美容液を作った莉奈の事だから、また何か作るのかもしれないと期待しかない瞳で研究員は見た。

 だが、莉奈から返って来た言葉は予想外だった。

「ん? からあげに使うの」

「え? からあげ?」

「うん。からあげ」

 厳密に言うと、これから作ろうとしているのは からあげとは違うのだが、粉を付けて揚げると言う意味では一緒だ。

 塩や胡椒、醤油以外でも色々な味があるのだから、色んな味を食べてもらいたい。

 からあげ好きのエギエディルス皇子はもちろん、肉好きのフェリクス王にも刺さる一品になるだろう。




「からあげって、小麦粉とかをまぶして揚げた物じゃないの?」

「基本はね。だけど、カレー粉を混ぜてもイイし、香辛料を混ぜても美味しいよ?」

「へぇ〜」

 どんな味でも合うんだから、鶏肉って万能だよね。

 カレー粉が残っているから、カレー味も作ろうかな。

 研究員が感心している横で、莉奈はからあげに思いを馳せていた。




 ーーぐぅぅ〜。




「リナ。お腹の虫が鳴ってる……あ」

 研究員の人が莉奈の腹の虫で笑っていると、彼女のお腹もくぅ〜と小さく鳴いた。

 欠伸は移るなんて言うけど、腹の虫は違うよね。

 顔を見合わせ笑ってしまった。

「お腹空いているなら、さっき試作で作った"餃子"があるけど食べる?」

 夕食に出るとは思うが、おかわりは出来ないだろう。

 せっかく黒狼宮に来たのだから、研究員の皆にも味見させてあげたいなと思ったのだ。

「餃子? え、お菓子?」

「お菓子じゃないよ。えっと、ラビオリみたいな物?」

「ラビオリって何??」

「……」

 興味津々な研究員に莉奈は唸っていた。

 ワンタンみたいな物と言いたいけど、ワンタンなんてある訳がないから……堂々巡りだ。

 あ、揚げワンタンも美味しいよね。

 莉奈はどう説明しようか悩んでいたら、再びお腹が鳴った。



「少しだけあるから、あっちで皆と食べようか」

「やった!!」

 莉奈は説明する事を諦め、他の皆と試食する事にした。

 百聞は一見にしかずである。

 似た物がない以上、説明のしようがない。




 薬品の臭いがする調合室の脇に小さな机を持って来て、莉奈はそこにさっき作った餃子を魔法鞄マジックバッグから取り出した。

 パリパリの羽根が付いた焼き餃子である。

 出した途端に、ふわりと香ばしい匂いが皆の鼻を擽る。

「すでに匂いが美味しそう」

 ゴクンと生唾を飲んだ研究員。

 莉奈が小皿やフォークを用意するまで、指を咥えて待っていた。

「辛いのが得意な人は、このラー油もつけたり試してみて」

 もちろん、出来たばかりのラー油も出しておく。

「うっわ。見るからに辛そう」

「匂いがすでに辛い」

 出来立てのラー油は、ものスゴく香りがいい。だが、匂いも辛い。

 辛いのが苦手な人は、その赤さに顔を顰めていた。



「ん〜っ!! 周りの皮? モッチモチ」

「肉汁スゴっ! うっま」

「ラー油? 辛っ!! だけど美味しいわね」

「このパリパリしたヤツ、なんかイイ」

「「「美味しい〜っ!!」」」

 皆、イイ笑顔で速攻で完食である。

 大皿には何も残っていない。人数分ちょうどだったので余りもなく、争奪戦は起きずに平和であった。

「今日の夕食に出るの?」

 食べ足りないと、期待しかない瞳で皆が訊く。

 さすがに一個じゃ物足りないよね。

「料理人達が頑張ってるけど、そんなにたくさんは無理だよ」

 だって、ただでさえ初めてなのに、大量の挽肉やキャベツの微塵切りをして包む皮の生地作り、最後に何百も包むのは地獄しかない。

 もはや罰ゲームみたいな感じである。

 なので、作れても1人数個が限界ではなかろうか。

「「「え〜っ」」」

「だけど、からあげの新作も出す予定だから」

「「「やったぁ〜!!」」」

 落胆する声を訊きながら、新作のからあげの事を教えれば、皆はパッと表情が華やいだ。

 やっぱり、からあげは最強だね。



 夕食はお酒やおつまみの"ハイボール祭り"だよと伝えれば、わっと小さな歓声が上がり、いつも以上に仕事に励む皆の姿が見えた。

 どの世界の人達も仕事の後の楽しみがあると、気分は向上する様だ。




 ◇◇◇




「リナ」

 香辛料も貰い、銀海宮に戻ろうと転移の間まで歩いていたら、魔法省長官のヴィル=タールに出会った。

 何処かに出ていて、ちょうど執務室に戻る所らしかった。

「こちらに来ていたのですね?」

「はい。ちょっと香辛料を貰いに」

 エギエディルス皇子に魔法を教わる様になってから、いよいよ黒狼宮には来なくなったので、タール長官とは久々である。

 お世話になっているのだから、何か持ってくれば良かったなと莉奈は少し後悔していた。餃子しかないのだ。

「あ」

 後悔で思い付いた。

 以前、タコの流れでイカも仕入れたとかで、魔法鞄マジックバッグにもイカが少しだけある。それを使って、タール長官に何か作ったらイイのでは? と閃いた。



「どうしました?」

「タールさん。これから執務室に戻られます?」

「そうですね」

「なら、後で執務室に寄っても宜しいですか?」

 急いで銀海宮に戻る必要はないし、せっかくだから黒狼宮の厨房を借りて、何か作って来ようと莉奈は考えたのだ。

「構いませんけどーー」

 とタール長官の了承を得るが早いか莉奈は「では後で伺います」と足早に厨房に向かうのであった。

 そんな莉奈を見て、元気そうでなによりだと、タール長官は小さく笑うのだった。

 


















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