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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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405 ユショウ・ソイ



 莉奈は、拳を天高く挙げると、1人で小躍りしていた。

 醤油は本来、大豆と小麦で麹を造り、塩水に浸けて長期発酵させた調味料だ。

 この世界にはないのだと、完全に諦めていた。なのに、まさかの種子、木の実という形で手に入れるなんて、想定外の出来事。超ラッキーである。

 異世界なのだから、こういうイレギュラーもある訳だ。

 なら、味噌が入っている木の実だってあるかもしれない。



 あぁ、なら、チョコレートも種子じゃなくて、加工したモノが木の実に入っていればイイのに!!




 莉奈が興奮して踊っていれば、ゲオルグ師団長が怪訝な顔をしていた。

「ソレは、なんだったんだ?」

 莉奈が【鑑定】を使用したと感じたゲオルグ師団長は、その実が何なのか訊いてきた。

 莉奈が踊るほどの何かなのだろう。

「液体調味料だって!!」

「え? 調味料?」

「そう!! 中の果汁? 実の汁が液体調味料、醤油が入ってるんだって!!」

 そう説明したら、ボソリと「なんだ、酒じゃないのか」と呟くから、莉奈は呆れてしまった。

 果汁がお酒なんて事、ありますかね?

 でも、この世界なら、それもありそうだなと同時に思う。

「酒なんてどうでもいい!! コレで、美味しい日本食がたくさん作れる!!」

「なんだか良く分からないが、良かったな」

 ゲオルグ師団長は、嬉しそうに笑う莉奈の頭を優しく撫でていた。

 醤油がなんなのかサッパリだが、莉奈が笑っているのを見るのは、こちらも楽しくなる。

「ヨシ。そうとわかれば、さっさと部屋の片付けを終わらせなきゃ」

 早々に部屋を片付けて、本当にこの実の中に醤油が入っているのか確かめたい。

 莉奈は【ユショウ・ソイ】を魔法鞄マジックバッグにしまい、ゲオルグ師団長と食べ物の話をしながら、急ぎながらも綺麗に掃除するのであった。






 ◇◇◇





 ーーガンガンガン!!





 ゲオルグ師団長と別れた莉奈は、白竜宮の軍部から金槌を借り、竜の広場の一角で夢中になって木の実を叩いていた。しかし、少し凹んだくらいで、まったくビクともしなかった。ヒビすら入らない。

 こんな硬い種子を、王竜はバリバリ食べているのか。竜の歯はものすごく頑丈である。

「お前、何をやってんだよ?」

「……」

「お前は、何をやってんだよ!!」

 声に気付き顔を上げれば、一心不乱で木の実を叩く莉奈の姿に、恐怖を感じ怯えた表情のエギエディルス皇子が目の前に立っていた。

 その少し後ろには、さっき会った薄紫の小竜の姿が。

 莉奈の血走る様な目に、怯えている。

「ん?」

「ん、じゃねぇよ。何を叩いてるんだよ」

「醤油の実」

 もはや莉奈の頭では、"ユショウ・ソイ"は醤油の実だった。

 莉奈は、そう答えると再び醤油の実に向き合いガンガンと叩く。



「「……」」

 エギエディルス皇子と小竜は、莉奈の叩く姿にドン引きである。

 親の仇かよというくらい、叩きに叩きまくっているのだ。




「だーーーーっ!!」

 ビクともしない木の実に、莉奈は地に倒れた。

 一向に割れる気配のないユショウ・ソイこと、醤油の実に莉奈は完敗である。

 割れない。何をしても割れない。金槌くらいでは、まったく歯が立たなかった。




「お前、少し落ち着け?」

 エギエディルス皇子はさらにドン引きし、小竜は怖いを通り越して呆れ口をアングリと開けていた。

 原始人も真っ青なくらいに、莉奈は木の実を叩いている。何が莉奈を掻き立てているのか、エギエディルス皇子には分からない。

「コレが落ち着いてられますかーーっ!! この国の人の血が酒で出来ているなら、私の血は醤油で出来ているんだよ!!」

 訳の分からない事を叫び、莉奈は再びガンガンとユショウ・ソイを金槌で叩き始めた。

 エギエディルス皇子と小竜は、顔を見合わせて唖然としていた。莉奈が壊れていると。



 しばらく、1人と1頭は莉奈を見ていたが、結果変わらず再びユショウ・ソイの前に倒れていた。

 手も痛いし肩も痛い。どうやったら割れるのか分からない。

「私はもう……死ぬのかもしれない」

 醤油が目の前にあるのに、指を咥えているだけしか出来ないなんて悲し過ぎる。

 なら初めからなければ良かったのに……。

 莉奈は泣き崩れたのだった。



「大袈裟過ぎるだろ。アホ」

 エギエディルス皇子は呆れ果てていた。

 木の実が割れないくらいで、何で泣いているのか理解出来ない。

「エド〜。コレ割って?」

 莉奈はエギエディルス皇子に、少し凹んだユショウ・ソイを差し出した。

「それだけお前が叩いて割れないのに、俺に割れる訳がねぇだろ?」

 お前と違ってか弱いんだよと、エギエディルス皇子は口端を上げた。

 ますます、兄王に似てきたなと莉奈はため息を漏らした。

 可愛いエドくん、カムバック。




「あ」



 兄王で思い出した。

 そうだ。この国には豪腕がいた。我らが魔王様に割って頂こう。




 莉奈は良い考えだと、エギエディルス皇子と小竜の存在をすっかり忘れ、銀海宮に向かうのであった。









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