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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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404 王竜のくれた"贈り物"



 莉奈は竜の宿舎に向かいながら、王竜が寛大で良かったと思った。

 害がないとはいえ、勝手な事をされたら激昂する可能性すらあったのだ。今度からは気を付けようと心に留めておく。

 残念な事に、莉奈にはヤメるという選択肢はなかった。



「あ」

 王竜の宿舎に着いて気付いた。

 太い梁に付いている竜の鱗は、やたら高い位置にあって取れる訳がなかった。長い梯子が必要である。

「確か、外に立て掛けてあったな」

 そう思い出した莉奈は、1度宿舎の外に出た。

 倒れない様にしてある留め具を外し、梯子に手をかけると、背後から声が聞こえた。

「リナ、1人じゃ危ないぞ。手伝おう」

「え? ありがとうございます」

 現れたのは、相変わらずデカいゲオルグ師団長だった。

 アメリア同様に、難民支援から帰城していたのだろう。

 ゲオルグ師団長は顔が厳ついのとは反比例して、優しいからついつい敬語を忘れちゃうけど、それも怒らないんだよね。

 実に寛大で、大人だ。



「何をするつもりだったんだ?」

 両端を持って行くのかと端で待ち構えていたら、ゲオルグ師団長は真ん中から軽々と1人で抱えていた。

 莉奈の出る幕などなしである。むしろ、手出しした方が邪魔だった。

「王竜の部屋の目印の鱗を磨こうかと」

「なるほど? で、竜達を集めて何を企んでたんだ?」

 企んでいるなんて失礼な。

 どうやら、手伝いを理由とした本題はそちらの様だ。

「美容液の説明と、それを全竜に塗るのは無理だって話ですよ」

 美容液を賭けた"素材採取合戦"の話は黙っておこう。

 まぁ、どうせすぐにバレるだろうけど。



「美容液……あぁ、美容液……な」

 ゲオルグ師団長が苦笑いしていた。

 女性陣が騒ぎに騒ぎまくっていたのは知っていたが、竜までかと考えると頭が痛いらしい。彼の竜も雌だから、他人事で済まないのだろう。

「だけど、竜が突然、何を言い出したんだ?」

 だが、ゲオルグ師団長は、何故竜がそんな事を言い出したのか分からない。莉奈が王竜に塗ったキッカケを知らないからだ。

「それは、その?」

 莉奈は渋々、王竜に興味半分で塗った事。

 それにより、光り輝いた事。それを真珠姫達に見られた事などを説明した。

「あ〜。光り物」

 ゲオルグ師団長は、すべてを悟った様だった。



「そう言えば、美容液。ジュリアさんの分は貰いました?」

 奥さんや恋人の分も、管理している侍女に説明すれば今なら貰えたハズ。

 奥さん至上主義のゲオルグ師団長なら、絶対に欲しがるに違いない。

「もちろん貰ったよ。今から渡すのをワクワクしている」

 嬉しそうにする奥さんを想像したのか、ゲオルグ師団長の表情は蕩けていた。

 王宮勤めの人の特権みたいな物だから、ジュリアはものスゴく喜ぶに違いない。

 しかし、相変わらず仲が良くて羨ましい限りである。



「なんだコレ?」

 鱗を磨き、部屋の藁を替えていたら、床に何かがゴロンと数個落ちていた。ひょっとしなくても、コレが王竜の言っていた"木の実"なのだろう。

 大きさはハンドボールほどで、焦げ茶色の見た事もない木の実。表面は産毛が生えていて、形はおにぎりみたいな三角形をしている。

 その三角形の天辺は少し窪んでいて、木の実特有のヘタがあった跡がある。

 重さは片手で持つには少し重い。水の入った1.5Lのペットボトル、2本分くらいなズッシリ感があった。

「ゲオルグさん。コレなんだか知ってる?」

「いや、知らないな」

 王竜が食すと言っていたが、他の竜もなのかなと思えば、そうではない様だ。

 ゲオルグ師団長も、見た事がないらしい。

「リナの作った"おにぎり"みたいだな」

 お米がどんな食べ物か、カレーの時におにぎりを少し用意していたので、ゲオルグ師団長はそれを食べたか見たのだろう。

「スゴく硬そう」

 試しにコンコンと拳で軽く叩いてみれば、叩いた手が痛かった。



「くるみ割り人形なら部屋にあるが、サイズが全く合わないな」

 割るのならそれなりの器具が必要だと、ゲオルグ師団長は床に落ちていた木の実を拾った。

「王竜は、人は食べない木の実だって言ってたよ?」

「マズイのか?」

「ううん。硬いからだろうって」

 割るのに一苦労する木の実。

 あの竜が硬いと言うのだから、相当な硬さに違いない。なら、他に楽に食べられる物があるなら、食べないだろう。



 近所の庭に生えていた柿やイチジクの木も、せっかく毎年立派な実が生っていたのに、家主は一切食べていなかった。

 なんで食べないの? と訊いたら、昔は食べていたけど味は安定しないし、手軽で美味しい果物がスーパーで買える。

 だから、食べるのはその辺の鳥だけだって"焼き鳥"という名のインコを飼うお爺さんが、笑って言っていたっけ。

 王宮に生っていたククベリーも、以前は誰も食べていなかったし、そのお爺さんと似たような感覚だったのかもしれない。



「とりあえず、集めたけど……どうするんだ? この木の実」

 藁に紛れて10個くらい、その不思議な木の実があった。

 ゲオルグ師団長も、莉奈を真似て叩いたりしていたが、ビクともしなかった。

「王竜がくれるって言うから、貰ってく」

 人にも害はないって言ってたし、食べられる様なら食べてみたい気もする。





 【ユショウ・ソイ】

 夏は暑く冬は寒い、気候のハッキリした沿岸部地帯を好んで自生する単子葉植物。世界一硬い種子。




 〈用途〉

 硬い種子を割ると種子の内側に、層状に形成される固形胚乳から得られる、塩辛い乳状の食材が存在する。

 若い種子は表皮が薄い黄色だが、熟すと濃い茶色に変化し調味料として使用可。



 〈その他〉

 食用である。

 若い種子の果汁は、濃度の高い塩水。

 熟成すると、赤茶色や焦げ茶色の液体調味料となる。

 稀に、琥珀色の液体調味料が出来る。




「赤茶色や焦げ茶色の調味料?」

 莉奈はさっそく【鑑定】を使い視たが、イマイチ良く分からなかった。

 莉奈の鑑定は、たまに〈用途〉に使い方以外も補足してくれるが、この"固形胚乳"だけでは、調味料になるとしか理解出来ない。

 黄金色や赤茶色系の調味料ってなんだろうと、調味料を【検索】したが反応せず。ならばと"赤茶色や焦げ茶色の液体調味料"を【検索】して視た。




 【赤茶色や焦げ茶色の液体調味料】

 とある世界で"醤油"と呼ばれている調味料に、味が酷似している。





 醤油。





 しょ・う・ゆ。





 醤油キターーーーッ!!













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