表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

400/676

400 迷彩柄



 とりあえず、1時間くらいしたら竜の広場に行くと伝え、莉奈はいつも通り銀海宮の厨房に向かった。

「リナ、お前の番がさっき来たよ」

 おはようと厨房に入れば、近くにいた料理人からそう言われた。

 どうやら、あの2頭は先にココに来た様だった。

「心臓が止まるかと思った」

「竜と喋ったの初めてだし」

「今もちょっとドキドキしてる」

 莉奈は苦笑いするしかない。

 いる場所を問われたのか、一部の料理人が興奮した様子で話していた。

 あのコンビが、莉奈のおかげか莉奈のせいでチョイチョイ来る様になったから、怖いものの少しは慣れたみたいである。




「あ、そうだ。糠漬けモドキの野菜クズを捨てなきゃ」

 すっかり忘れる所だった。

 莉奈はいそいそと、端にある莉奈専用の冷蔵庫を開けた。

 莉奈が色々と作れる様にと、一部スペースを開けてくれたのである。

「うん? ずいぶん白いけど、これは正解なのかな?」

 鍋で作ったパンの糠床モドキは、それらしく見える? けど。

 本来の糠漬けは、糠そのものの色だから黄土色。育てれば、少し茶色にはなるけれど。コレは白っぽい。

 初めてだから、何が正解かも分からない。

「ま、いっか」

 どうにかなるだろうと、考えるのをやめた莉奈は、野菜クズをゴミ箱に捨て、コレに漬ける野菜を何にするか食料庫を見に行く事にした。

「ニンジン、ニンジン」

 定番のニンジン、大根、キュウリ辺りがいいかなと探していると、チラッと光る何かが見えた。

 天井に魔石が埋まっていたのだ。色は水色っぽいから水か氷の魔石だろう。

 あるとは知っていたが、上など見る事はなかったので気付かなかった。



「上がどうしたんだい?」

 付いて来ていたリック料理長が、莉奈と同じ様に見上げた。

「え? あそこに魔石が埋まっているなと」

「あぁ、氷の魔石」

「そっか、氷なんだ」

 魔法鞄マジックバッグも活用してはいるけど、毎日使うと鞄が傷む。皆が使い易い様に、ココを大きな冷蔵庫にしていると聞いた事がある。

 見て料理メニューを考える時もあるから、必要なのだと教えてくれた。

 なるほど、氷の魔法が活用されていたのか。



魔法鞄マジックバッグがなかったら、ひょっとしたら冷凍庫もあったのかもしれないね」

 魔法の鞄があるから腐らない。氷が欲しい時は魔法で作れるから、冷凍庫は必要なかったのである。

「あぁ、なるほど、冷凍保存」

 莉奈と一緒にいる内に、色々な知識を持ったリック料理長は、莉奈のいわんとしている事が分かった。

 凍らせれば保存が効くという事も、莉奈といたから理解出来たのである。



「わ、コレもニンジン?」

 棚を見ていたら、木箱に入ったニンジンを見つけた。

 形はニンジンだけど細長い、そして、自分の知っている色とは異なる。

「サンダール地方のニンジンは、スゴくカラフルなんだよ」

 リック料理長は笑いながら、教えてくれた。

 この時期からはいつもの産地ではなく、違う所から仕入れているのだそうだ。だから、いつものオレンジ色ではなく、白や黄色、紫色なのだと。

 ニンジンはオレンジだと頭が認識しているから、違和感ありまくりだ。

 気持ちの悪いくらいに、カラフルだったとうもろこしを思い出す。

「なら、この不気味な野菜は?」

 その隣りに置いてある野菜を莉奈は指差した。

 形としてはカブみたいにプックリしているが、色がオカシイ。

 白はともかく、そこに紫色やピンク色も混じっていて、なんかこう迷彩柄である。正直言って気持ち悪い。

「大根」

「え?」

「大根」

「……」

 莉奈、絶句である。

 この世界の大根はハンドボール程の大きさ、形はカブみたいで柄が迷彩だった。

 アレ? 今まで普通にあった野菜達はどこですか?



「エギエディルス殿下は今のリナみたいに、この時期の野菜を見ると渋い顔をなされるよ」

 リック料理長は苦笑いしていた。

 時期によって産地がガラリと変わるから、いつもの野菜も色や形など様々になるとの事だった。

 確かに、昨日まで普通にオレンジ色のニンジンが、今日は紫色になって出て来たらギョッとするよね。

 エギエディルス皇子の渋い顔が想像出来て、つい笑ってしまった。

 それでも、彼の事だ。残さずしっかり食べるのだろう。

「この大根とニンジンでいっか」

 莉奈は他の野菜を探すのを諦めた。

 試作段階だし、見た事もないカラフルな野菜にやる気が削がれたのだ。



「野菜はそこにそのまま漬けるのかい?」

 持って来た野菜をゴシゴシと洗う莉奈を見て、リック料理長が訊いた。

「ニンジンは包丁の裏で、軽く皮を削いで適当な長さにする。大根は……キモい」

「キモいとか言うなよ」

 莉奈の呟きに、マテウス副料理長が苦笑いしていた。

「とりあえず、皮は剥いて漬かりやすい大きさに……うっわ、中までカラフル」

 迷彩大根を半分に切って見たら、絵具を適当に垂らした様に中まで紫やピンクに染まっていた。

 日本で売られている赤カブの漬け物は、中まで均一に赤いけど、これはマダラ模様である。実に食欲が削がれる。

 美味しいのかなぁ〜と不安になりつつ、ニンジンと一緒に適当に切ってパンの糠床に埋めた。



 どんな味かちょっと味見してみようと、莉奈は迷彩大根を小さく切り、そのまま口にしてみた。

 シャキシャキと良い歯応え、見た目はキモいけど、味は大根と変わりはない。青首大根と同じ様に少し甘さを感じる。

 なら、漬けても美味しいだろう。

 莉奈はパン糠床を冷蔵庫にしまい、まな板に残ったカラフルな野菜とにらめっこしていた。



「何してるんだ?」

 しばらく、野菜とにらめっこをしていたと思ったら、莉奈がニンジンを切り始めたのだ。

 リック料理長は、何をやり始めたのかとマジマジと莉奈の手元を見ていた。

「このニンジンは色が派手だから、こうやって飾り切りにしてスープとかクリームシチューに入れると、可愛いかもしれない」

 莉奈は輪切りにしたニンジンを、綺麗に飾り切りして見せた。

「「「おぉォォーッ!!」」」

 皆にどうかなと見せれば、歓声が上がった。

「すげぇ!!」

「ニンジンが花になった!!」

「可愛い」

 そう、莉奈がしたのはニンジンを花に見せた飾り切り。

 型抜きがあれば簡単だけど、ないから手作業だ。碧空の君も好きそうな可愛い飾り切りである。



「エドのスープとかには、コレを入れてあげると喜ぶんじゃないかな?」

 白いクリームシチューに入れれば、カラフルだから映えて可愛いシチューに早変わりだ。

 家には型抜きがあったから弟と一緒に作って、カレーやシチューに入れてたなと思い出す。

「確かにエギエディルス殿下は喜びそうだな」

 リック料理長が大きく頷いていた。

 莉奈も喜ぶエギエディルス皇子を想像してみたが、何故か向かいに座るシュゼル皇子の喜ぶ姿が浮かんだけど。

 あれ? オカシイな。花より星形にでもしたら、エギエディルス皇子は喜ぶかな。



 莉奈はそんな事を考えながら、余った野菜を魔法鞄マジックバッグにしまい、飾り切りの花は皆が手本にするというから小皿に置いといた。




「あっちでリリアン達は何作ってるの?」

 新人組のリリアン達は、昼食用にと何か作っていた。

 色々と問題を起こすリリアンも、珍しく真面目に作業をしている。

「あぁ、ロメインレタスとベーコンのサラダだよ」

 ロメインレタスを千切り、スライスした玉ネギとトマト、カリカリに焼いたベーコンを載せたサラダだと、リック料理長が説明してくれた。

 カリカリベーコンを作る時に出た油は、蒸したじゃがいもと混ぜるのだそうだ。

 無駄がなくて、美味しい料理だよね。

「ドレッシングは?」

「簡単なオリーブオイルと塩、それに酢を混ぜた物。後は定番のマヨネーズだな」

 個人で味を足せる様に、粒マスタードとカイエンペッパーは別に置いておくとの事。

「それ、全部混ぜても美味しいよね」

 その2種類のドレッシングを混ぜれば、フレンチドレッシングの出来上がりである。

 皆が気付いているかは知らないけど。

「「マジか」」

「あ、混ぜた事もあるよ〜」

 一部の人が驚いていると、リリアンは混ぜた事があるのか、混ぜた事のない仲間を見て笑っている。

 リリアンは冒険心が強いと言うか、何も考えていないから、1皿に色んな物を載せて食べているからね。必然的に混ざるのだ。

 


 それを聞いていた莉奈は、材料的にちょうどいいからと、もう一つドレッシングを添える事を提案する。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ