表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

388/665

388 ほっこり、王兄弟



 オヤツ休憩にしましょうと、フェリクス王の執務室に戻れば、職務中のシュゼル皇子の表情がパッと花開いた。

 フェリクス王は無表情だったけど。



 早速、莉奈はカボチャプリンと濃厚プリンをナイフで切り、エギエディルス皇子とシュゼル皇子、そして執事長イベールに取り分け始める。

「カボチャプリン」

「濃厚プリン」

 エギエディルス皇子とシュゼル皇子は、見えないシッポをフリフリし大人しく待っていた。

 執事長イベールは無表情……にしか見えないけど、口が微妙に綻んでいる様な気がする。

 フェリクス王はプリンを見た途端、顰めっ面に変わったけどね。



「このプリンはぷるんとしていないんですね?」

 取り分けた濃厚プリンをフォークで突っついたシュゼル皇子。

 たまにデザートに出るプリンは、フルフルと震えるくらい柔らかいなと思ったのだ。

「ん、うっま!! すっげぇプリンの味が濃厚」

 外見より味が気になったエギエディルス皇子は、先に濃厚なプリンを頬張り嬉しそうな声を上げる。

 それを見てシュゼル皇子も口に運んだ。

「んん〜っ。こちらのカボチャのプリンはカボチャの優しい甘さが堪らなく美味しい。カボチャを使っているから、まるで甘い前菜……はぁ、こちらはこちらで濃厚で、デザート。あぁ、どちらも美味しい」

 プリンが前菜とか……どうかしている。

 この人、黙っていたら前菜からデザートまで、甘味のフルコースで食事を終わらせるに違いない。

 まぁ、何はともあれプリンとカボチャの組み合わせが、気に入ったみたいで良かった良かった。

 弟達がニコニコと嬉しそうに頬張る横で、フェリクス王は渋面顔だった。

 プリンが甘いと簡単に想像出来て、気分が悪い様である。



「あ゛?」

 何も出さないのも……と思って、莉奈が魔法鞄マジックバッグから取り出せば、フェリクス王はこちらをチラッと見た。

「宜しければ、お米で作ったガーリックライスをどうぞ」

 自分の昼食用から少し取り分けておいたモノだ。

 勿論、カリッと焼いた鳥肉ものっている。

 莉奈が取り出した途端、プリンに夢中だったエギエディルス皇子とシュゼル皇子もそちらを見た。執事長イベールは目線だけ動かしていたけど。



「米か」

「夕食にもお米が出ますので、味見程度に」

 まぁ、夕食はガーリックライスではないけど。

 フェリクス王に出しながら、莉奈は夕食のご飯に思いを馳せた。カレーにはサフランライスか、バターライスでもいいなと。

 そんな莉奈の目の前で、仲良し王兄弟の攻防が始まっていた。

「あ、なんだ、その鳥肉カリカリしててすげぇ旨そう!! 1つくれ」

 カラッと揚がった鳥肉が目に付いたのか、エギエディルス皇子が兄王の皿にスプーンを伸ばした。

 他人が食べている物程、美味しそうな物はない。それも、大好物のからあげに似た鳥肉料理だ。

 皮はキツネ色で、パッと見ただけでもパリパリしてそうで、思わず喉がゴクリと動いた様だ。

 そんな末弟をチラッと見てフェリクス王は、皿を引き寄せこう言った。

「お子様は黙って、プリンだけ食ってろ」

「なっ!! 子供扱いすんじゃねぇよ!!」

 エギエディルス皇子が、頬を膨らませて猛抗議していた。

「ふふっ。エディはまだまだ可愛い子供ですからね?」

「なんだ、この手は」

「私は子供ではないですよ?」

 シュゼル皇子は、末弟ににこやか話し掛けつつ、兄王の皿にスプーンを伸ばした。

 子供ではないからくれと。

 だが、フェリクス王はソレを見なかった事にして、皿を持ち上げカリッと焼いた鳥肉をスプーンで掬い口に入れた。





 ーーパリパリパリ。





 静かな執務室には、鳥肉の焼けた香ばしい匂いと、フェリクス王が鳥皮の噛む音が心地良い音色の様に響く。

 あぁ……なんで、他人のモノって美味しそうに感じるんだろう。

 さっき同じ物を食べたハズの莉奈も、思わず生唾を飲み込んでいた。

「フェル兄」

「……」

「兄上」

「……」

「「兄上〜っ」」

「うるせぇ」

 普段兄上なんて呼ばないエギエディルス皇子まで、"兄上"なんて媚びを売る様な表情をしている。

 だが、そんな2人の弟に強請られても動じないのがフェリクス王だ。ウルウルと瞳を潤ませている弟達を横目に、最後の一口を口に放り込んだ。

「「あぁぁ〜っ」」

 残念そうな弟皇子達の声が聞こえた。

 莉奈は、仲良し過ぎる王達に思わず笑いが漏れた。なんか、ものスゴくほっこりする。




「リ〜ナ〜」

 兄王が全部食べたと、エギエディルス皇子が莉奈に訴えていた。

 強請る様に瞳をうるうるさせているエドくんは本当に可愛い。

「夕食の時にカレーと一緒に出してあげ……も、もちろんシュゼル殿下も」

「ありがとうございます」 

 エギエディルス皇子に言っていたら、横から強い視線を感じ、そう言わざるを得なかった。

 シュゼル皇子も、良く食べる様になったよね。

 甘い物が多いのは難点だけど、何も食べないよりはイイかな。放っておくとポーションしか口にしないし。




 そんな和やかな王兄弟を見て、ピザの時に"カルツォーネ"を出し忘れたなと思い出す莉奈だった。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ