363 米、コメ、玄米
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ラナ女官長から後に聞いた話だと、サリーのメイド服の違和感に気付いたラナ女官長が、直接何度か注意していたらしい。
それでも「洗ってます」と白々しく嘘を吐くので、ラナ女官長が強制的に新しい服と替えたり、浄化魔法で綺麗にしていたとか。
執事長イベールに告げ口すれば、一発でクビになる案件である。
それをしなかったのは、ラナ女官長の優しさなのかもしれない。
あ、ちなみに莉奈の着ている服やシーツは、ちゃんと洗ってくれていたよ。浄化魔法でキレイになるとはいえ、基本は洗濯するのが主流だそうだ。
「お米〜米〜こ〜め〜」
莉奈はお米を研ぎながら、鼻歌を歌っていた。
1年振りくらいのお米だ。パンパンパンとずっとパン生活をしてきたから、口がお米に飢えていた。
食べ物の夢は絶対に白飯だったしね。
ここに土鍋がないのは残念だけど、鍋やフライパンでも炊けるから良かった。
「洗った水は捨てないのかい?」
莉奈はご機嫌だなと、笑いながら作業を見ていたリック料理長が訊いた。
米を洗った研ぎ汁を、莉奈は捨てずに寸胴に入れていたからだ。
「うん。コレで大根を下茹ですると、アクやエグミが取れて美味しくなるんだよ?」
それによって、大根の甘さが引き立つ気がする。
「え? 米を洗った水で?」
「そう。このお米を洗った水を研ぎ汁っていうんだけど、この研ぎ汁に含まれる米糠のナンカが、大根のアクとエグミを取るんだって」
「へぇ〜。研ぎ汁って言うのか」
「ナンカって何?」
「それで大根を下茹で」
「ナンカって何?」
リリアンが疑問を上げる中、リック料理長達が感嘆の息を漏らした。
莉奈から色々と教えて貰って、実践して知った気になっていたが、やはり莉奈の知識と技術には、全然足元にも及ばない。
勉強をもっとしなければと、リック料理長達はヤル気に満ちるのであった。
「タケノコっていう食材も、米糠と唐辛子を入れて下茹ですると同じ様にアクやエグミが取れるよ?」
八百屋のおばあちゃんがそう言っていた。
唐辛子を入れるのは何故か、全く記憶にないけど。
でも、確かに大根はこの下処理をやるとやらないとで、甘さや味が全然違う。
無洗米だったりで研ぎ汁がないなら、お米を一緒に入れて下茹ですればイイ。
米糠ってタケノコのアク取りにも使うし、意外とスゴイ物である。
「米を研いだらどうするんだ?」
莉奈が研いだお米を鍋に入れ始めたら、リック料理長と信頼を取り戻したマテウス副料理長が見に来た。
「鍋かフライパンで炊く」
「"炊く" ? "煮る" んじゃなくて?」
炊くという言葉は独特の表現なのか、疑問の声が上がった。
言われてみれば、お米は煮るじゃなく炊くだ。日本でも西の地方は煮る事も炊くと表現するけど。
「お米は "炊く" って言うんだよ」
「へぇ、何で?」
「しらん」
だって、気付いたらそう言っていた。
だから、当然の様に使ってきたし、理由なんて考えた事もない。
「さてと、水に浸けている間に玄米茶と、浅漬けでも作るか」
焼き海苔はないし、梅干しもない。味噌汁は作れない。
なら、簡単に玄米茶と漬け物で白飯を喰らおうと、莉奈はキュウリを用意した。
アッチの世界みたいに、真っ直ぐに育ててる訳じゃないから、"しの字"に曲がってるのがイイよね。
「浅漬けって?」
「コッチでいう、ピクルスとかザワークラウトみたいなモノ」
酢では漬けないけど。
この世界、料理の種類は少ない割に、ベーコンとか酢漬けとか、加工食品が豊富なのが面白い。
「あぁ、ザワークラウト」
「俺、アレ好きじゃないや」
マテウス副料理長が、渋い顔をしていた。
作ってはいるけど、酸っぱい漬け物は好きじゃないらしい。
「言い方が違うだけで、ただのサラダとも言う」
莉奈は、一口大に切ったキュウリをボウルに入れて、塩と砂糖を少々入れた。
キュウリは面倒くさいから、板摺りはしなかったけど。
材料を入れた後、ボウルを振って軽く混ぜ、ゴマ油代わりのオリーブオイルを回し入れ、さらに軽く混ぜる。
ここに昆布茶や塩昆布、白ダシを一つ加えると、さらにコクが出て美味しいのだが、ないので終了だ。
「あぁ、本当だ。いつものサラダのキュウリだけか」
「切り方変えて小皿に盛ると、なんか違った料理に見えるな」
お酢が苦手な人には、同じモノをサラダにかけているから、もの珍しさはない様だ。
そして、莉奈の言う浅漬けが何か、なんとなく分かった様である。
「次は玄米茶を作るよ」
莉奈は小さな小鍋を取り出した。
「何、玄米茶って? 紅茶とは違うのか?」
「全然違うよ。茶葉じゃなくて、玄米で作るお茶」
リック料理長が訊いてきたから、答えたけど。まんまだね。
「え? この茶色っぽいお米から、お茶が出来るのか?」
お茶といえば、紅茶だ。そして、基本的に茶葉か葉で作るのだけが、お茶だと思っていたみたいだ。
まぁ、普通に考えたらそうだよね。
「そうだよ。ちなみに白米から作っても、何故か玄米茶って言う」
「え? なんでだよ」
「しらん」
だって、日本で市販されている玄米茶は、ほとんどが白米から作られているのに、白米茶じゃなく玄米茶って言うんだもん。
未だに謎だよ。
莉奈がいつも通りにしらんと言えば、皆は「出たよ〜」と笑っていた。
「本来なら、一晩水に浸けてから蒸して炒るのが、イイんだけど」
「面倒なんだな?」
リック料理長が笑っていた。
最近になって分かったけど、莉奈の料理は基本的にズボラ料理が多い。基本のレシピとは少し違うのだと、リック料理長は知っている。
だが、それでもスゴく美味しいのだから、頭が上がらない。
しかも、訊けばちゃんと基本のレシピも知っているから、リック料理長達は莉奈の知識量に驚くばかりである。
まぁ、たまに"しらん" と返ってくるけど。
「だって、今飲みたいんだもん」
莉奈は口を尖らせた。
なのに、一晩なんて待てないよ。
「炒るだけでイイなら、私がやるよ。茶色くなるまでやればイイのか?」
リック料理長が、さらに笑って手伝うと言ってくれた。
なら、お願いしようと、莉奈は簡単に作り方を教える。
「そうだね。ポンポンとポップコーンみたいに跳ねるけど、気にしないで炒って」
「何"ポップコーン" って?」
「……」
莉奈は自分の口の軽さを呪った。
どうして、この世界にないモノで表現しちゃうんだろう。
「ポップコーン」
皆の好奇心の目が、莉奈に突き刺さる。
だから、適当に返した。
「トウモロコシのお化けだよ」
「「「お前、それ絶対に嘘だろう」」」
適当過ぎて瞬間でバレるのだった。




