359 何が出るかな?
投稿するの忘れてました。
Σ( ̄。 ̄ノ)ノ
「「リーーナーーッ!!」」
魔法で顔のカイエンペッパーを洗い流した碧空の君と、真珠姫が恨めしそうな声を出した。
何をしてくれたんだと、2頭は青スジを立てていた。鱗で分からないけど。
「だって、無視するんだもん」
声もかけたし、音も出したのだと莉奈は主張する。
「だからって」
ムスッとする碧空の君。
余程、目や鼻が痛かったに違いない。だって、目が充血しているしね。
「ほっといてもイイけど、こんな事してると陛下に怒られるでしょう?」
もう、耳に入っている可能性は高いけど。
莉奈は涙目になっている碧空の君達を、宥める様に言った。
「「……っ!!」」
フェリクス王という言葉に、2頭がピクリと反応した後、硬直した。
そして、ビクビクと辺りを見渡し、フェリクス王がいない事と自分達の掘った穴を確認している。完全に挙動不審である。
そんなに怖いのなら、こんな事しなきゃイイのにと、莉奈は苦笑いしていた。
「で、なんで穴なんか掘ってたの?」
皆が皆、ずっとそう聞きたかった質問を、莉奈が代表みたいな形で訊いた。
「お風呂をここに造ろうと思って」
「「「は?」」」
この答えには、莉奈だけでなく全員が唖然としていた。
お前は人間じゃないだろう? 竜が風呂とか、何を言ってるのだと。
「リナが温泉は鱗にも良いと言うから、温泉を探していたのですがーー」
「見つけた温泉は、遠い上に小さいのですよ。それに、やっぱりお風呂に入ったら、そのまま部屋ですぐ休みたいなと」
人間みたいな理屈を真珠姫と碧空の君が、仲良く説明してくれた。
まぁ、確かにお風呂の後は、部屋でまったりしたいよね。
「え? じゃあなんで、こんなにアチコチに掘ってたの?」
ここに造るのは問題だが、1つじゃないのはもっと問題である。
「だから、お風呂を」
「1個で良くない?」
「その1個が全然見つからないのです」
碧空の君はまるで口を尖らせていているみたいに、不服そうな声を上げたのだ。
「ん?」
どういう事だ? 1個が見つからないとは。
莉奈は首を傾げに傾げて、ある1つの仮説に当たった。
「えぇっ!? まさか、温泉を掘り当てようとしてたの!?」
ここに造るとは、そう言う意味かと莉奈は驚愕していた。
人間でも、個人で温泉なんか滅多に掘らないのに、竜が掘る。莉奈は色んな意味でビックリである。
「そうですよ?」
何か?
碧空の君と、真珠姫はキョトンとしていた。
ーーはぁぁァァーーッ!?
ーー竜が、温泉を掘るって、どんな世界だよ!!
莉奈は唖然としていた。
動物が、大判小判を掘り当てる物語はあったけど、竜が温泉を掘り当てる物語は知らない。
異世界って、スゴいな。
だけど、碧ちゃんや、ただ掘るだけじゃ温泉は出ないのだよ。
「碧ちゃん」
「なんでしょう」
「温泉って、そんな簡単に掘り当てられないと思うけど?」
この王城は、宮ごとに温泉は引いてあるけども。
温泉大国と呼ばれる日本だって、庭を掘ったら簡単に出た人もいれば、何百mも掘ったのに出なかった人もいる。
地質調査とか色々やって、それでも確実ではないのに、碧空の君達がやってるのって "運" だけだよね。出たら逆に凄いよ。
「「え?」」
やっぱり、簡単に出ると思っていたのか、さらにキョトンとしていた。
「あのね? 私のいた国は、温泉大国なんて呼ばれていたけど、1km 掘っても出なかった人がいるんだよ? 碧ちゃん、この王城のある山一個分の深さ掘るの?」
「「……………………え?」」
沈黙が長いよ2頭とも。
この王城のある山は、確か標高が1200mだったハズ。
なら最悪、出るかも分からないまま、まるっとこの山の一個分の深さを掘る訳だ。
さすがに、気合いだけじゃどうにもならないし、もしそこまで掘れたとしても……間違いなくフェリクス王に処分されるよね?
「そ、そんなに?」
「そんなにだね」
現実を知った碧空の君の頬が、ピクピクしていたのでしっかり現実を教えてあげた。
数mで掘り当てた人もいるけど、それは言わないよ?
だって、また掘っちゃうからね。
「「……」」
真珠姫と碧空の君は、顔を見合わせて押し黙っていた。
理想と現実の違いを改めて知った様である。
「まぁ、今確実に分かっている事は、この穴を早急に戻さないと、お前達はフェル兄に殺されるって事だな」
そう言ったエギエディルス皇子が、憐むように笑っていた。
確かにその通りである。




