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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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354 竜が何を言っているのか、分からない



 そこは、そんな頻繁に着地して良い場所ではないと思う。



「「リーーナーー!!」」

 窓の外から声が上がれば、ガタガタと厨房の窓が振動する。

 リック料理長達は、驚愕した表情のまま固まっていた。



「……」

 莉奈は、また来ましたかと、手に持っていた残りのピザをパクッと、口に放り込んだ。

 何回目かにもなれば、莉奈は驚くより厄介事でなければイイなと、苦笑いが漏れた。

「どうしたの? 碧ちゃん、真珠姫」

 そうなのだ。

 今回は真珠姫だけでなく、莉奈の番の碧空の君まで窓の外にいたのだ。

 揃いも揃って、何しに来たのだろうと莉奈は窓に近付いた。

 最近は何かやった記憶はないから、この間みたいに掴まれる事はないだろう。

 莉奈が窓ガラスをガラリと開けて、どうしたのだと訊ねたら、2頭は仲良くこう言った。




「「 "美容液" を下さい!!」」


 


「へ?」

 莉奈は理解不能であった。

 自分の番達が何を言っているのかが、全く分からない。

「「美容液なるモノが欲しいのですよ!!」」

「はぁ」

「「美・容・液!!」」

 嬉々として言う2頭に、莉奈は目をパチクリさせるばかりである。

 仲が良さそうで何よりだけど、何を言っているのだ、この竜達は。

 竜が美容液が欲しいって、どうかしているのではないのかな?

 ものスゴく失礼だけど、爬虫類が何を言うのかな?

「リナ、私達にも美容液を作りなさい」

 莉奈が呆然としていると、さらに真珠姫が偉そうに、そしてウットリとして言う。

「美容液?」

「人間達が話しているのを耳にしました。肌が美しくなる魔法の薬だとか」

「はぁ」

「私達にも作りなさい」

 元より耳聡い竜達は、王城の女性陣が騒いでいる内容を耳にして、肌が美しくなると云うオールインワンジェルの存在を知った様である。

 とうとう、美にまで目覚めましたか、真珠姫、碧空の君や。



「あの?」

「「なんですか?」」

「ところで、竜の"肌" とは?」

「「……」」

 ソレ、肌とは言わないよね? "鱗" だよね?

 オールインワンジェルが効くか否かはともかくとして、竜の何をもって肌というのか莉奈は聞きたかった。

 だって、頭の先から爪先まで見たけど、人間でいうところの肌が見えない。どこもかしこも鱗か爪、ツノしかなさそうだ。

 莉奈にそう言われた真珠姫と碧空の君は、反論しようとした口を、そのまま半開きにして固まっていた。



「大体、竜って……脱皮するんじゃないの?」

「「……」」

「人間は脱皮する事がほとんどないから、肌のケアが必要だけど……竜は脱皮そのものが、ケアみたいなモノじゃないの? 身体能力に優れた竜は、人間みたいな美容液なんてモノ、全く必要ないと思うんだけど」

 莉奈は感じた事を、そのまま伝えた。

 人間は、日焼けした時に皮が剥けるくらいで、脱皮自体はしない。

 でも、竜は爬虫類という一括りに入るなら、脱皮するハズ。

 その生態そのものが、人間で云うところのケアじゃなかろうか。美容液なんか必要かな? 否、竜には必要はないと思う。

「「……」」

 莉奈に諭されて、2頭の竜はしばらく口を噤んでいた。

 話を聞いて、人間の美容液が意味のない事に気付いたのかもしれない。



「で、でも!!」

 とは言え、すぐに納得する訳ではない真珠姫。

 引き下がらないなと、莉奈は溜め息を吐きつつ次々と返した。

「美容がどうこう言う前に、竜ってお風呂入らないでしょう?」

「「……っ!」」

「鱗なんかいつも砂埃で薄汚れてるし」

「薄汚れ……我々は、人間と違って風呂に入る習慣などーー」

「それを言ったら、美容液なんか塗る習慣なんか、もっとないでしょうよ」

「「……」」

 真珠姫も碧空の君も、口をパクパクさせて反論したかったが、ぐうの音も出ない様だった。

「それに、美容が気になるんだったら、まずは鱗を綺麗にするのが先じゃないのかな?」

「「え?」」

「人間は、身体を洗わないと肌も垢とかで薄黒くなってくるし、体臭も酷くなるよ? 竜だって適当にしていると、その綺麗な鱗も翼もボロボロになるかもしれないし、最悪臭くなるんじゃない?」

「ボロボロ」

「臭い」

「鱗の隙間に入る寄生虫は、砂風呂とかで掃除しているんだと想像するけど、竜は個体によっては魔法が使えるんでしょう? なら、水浴びとかで砂埃を洗い落として、風や火の魔法で乾燥させるなり、浄化魔法で綺麗にするなりしてみたらイイと思うけど?」

「「 "魔法" 」」

 目から鱗だったのか、2頭は呆然としていた。

 竜の風呂といったら砂風呂一択だったし、水遊びはしても水浴びはしない。翼が濡れるのを1番嫌がる性質があるからだ。

 濡れても飛べない事はないのだが、体力を使うしスピードが落ちて狙われ易くなるからである。

 だが、魔法で乾燥させれば良かったのか。

 水遊びで濡れ過ぎた時にしか、魔法で乾燥させなかった竜達に、その考えはまったく浮かばなかった。

 水に身体をドップリ浸けるのは毛嫌いしていたが、美のためなら許容する。

 真珠姫と碧空の君は、顔を見合わせて何やら頷いていた。



 そんな竜2頭に対し、莉奈はさらに続けた。

「それに、この国は温泉大国みたいだから、川とかでも温泉が湧いてるんじゃない? 温かいお風呂に入ると血行が良くなるから、新陳代謝も良くなって、鱗の色艶も良くなるかもしれない。温泉の成分にもよれば、美肌? 美鱗? になるかもしれないよ?」

 竜に効くかしらんけど。

 莉奈は、美容液は脱皮出来ない人間に譲って、誇り高い竜は自らの代謝で美を求めてくれと、切々と説明していた。

 だって、竜まで美容液を使うとなれば、作るのも塗るのも大作業である。お金がいくらあっても足りやしない。



「「……っ!!」」

 莉奈の提案に、2頭の瞳はキラキラと……いや、ギラリとしていた。

 早々に実行しようと、考えているに違いない。



「真珠姫」

「碧空の君」

「「温泉とやらを探しましょう!!」」

 竜2頭は大きく頷くと、言うが早いかトンと地を蹴った。

 そして、呆れる莉奈を残し仲良く空へと消えたのであった。



「カピバラみたいに温泉に浸かるのかな」

 莉奈は2頭が温泉に浸かるのを想像していた。

 動物園でカピバラがお湯に浸かるシーンを、テレビで見た事がある。その竜バージョンは、なんだか実に優美で壮大だ。

 美に国境も種族もないと思うけど、竜も人間もないのか……と空笑いが漏れる莉奈だった。






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