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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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353 ピザ作り



「とにかく、後はパンみたいに捏ねて20分くらい常温発酵させれば、ピザ生地は出来上がりだよ」

 咳払いを一つして、話を戻した莉奈。

 なんか、誤解されまくりだけど、訂正する術がない。

 チラチラと窓ガラスを見ている人もいるけど、何も映らないからね?

 まぁ、とりあえずパン作りにおいてはプロだから、多少適当でもすぐに理解するだろう。



「生地に塗るトマトソースは、この間作ったナンもどきと同じだからソレを誰か作って」

「はいよ」

 莉奈が言うか言わないか、料理人達はすぐに作り始めていた。

 生地はたくさん必要だと分かっているのか、耳は莉奈に傾けながら作業を続けている。

 物珍しさで集まっていた当初とは、全然違う手際の良さだ。



「具材は基本的に、載せたいのを載せればイイと思うけど、モッツァレラチーズとバジルの葉を載せて焼くと "マルゲリータ" って言うサッパリしたピザになる」

「ガッツリは?」

「ベーコンと茹でたジャガイモ、アスパラ、チェダーチーズをたっぷりのせて焼いたジャーマンポテト。それは、仕上げにマヨネーズをかけても美味しい」

「「「よっ! 出ました! マヨネーズ!!」」」

 莉奈がマヨネーズと言えば、一部の人達のテンションが爆上がりしていた。




「そういえば、最近ベーコン料理が良く出るけど、ベーコンたくさんあるの?」

 豚は魔物に喰われまくりだから、少ないって言っていたのに、どうしてだろうと莉奈は疑問に思った。

 近頃朝食には、スープに入っていたり、パンに載ったり挟んだりしている事が多くなっていた。

「あるよ。王都以外でも最近、ロックバードの認知度が高くなってきて、国で一大ロックバードブームなんだよ。その分、豚肉が割と安価で手に入り易くなってる。だから、安いうちに大量に仕入れてるんだ」

「ロックバードブーム」

 何そのブーム。

 ロックバードがやっと、食用として認可され市場に出回ると、鳥肉が少し安くなり、消費と需要が急激に高くなったらしい。

 それに加えて、からあげブームに乗っかり専門店まで出始めたとか。

 となると、元から高価な豚肉や牛肉は、売れなくなり価格下落が起きたのだ。

 だから、魔法鞄マジックバッグがある王宮では、なるべく卸売店から仕入れをして、価格の極端な下落を抑えていると、リック料理長がそう教えてくれた。

 保存出来る国ならではの処置方法だよね。



「んじゃ、ベーコンがたくさんあるなら、ベーコンと玉ネギ、ニンニクを載せて焼くとーー」

「「「美味しい!!」」」

 美味しいと言わなくても、美味しさは伝わった様だ。

 ニンニクをタップリ載せると、香りがガツンと伝わってきて堪らないよね。

 ウインナーとかペパロニとかがあったら、それも載せたいのだけど、まだ見た事がない。ベーコンがあるから、燻製自体は存在するハズ。



 とりあえずは、ピザ生地をたくさん作らねばと、手分けして取りかかった。

 しばらく、ピザ生地を捏ねていたら「リナ、ピザ生地とトマトソースが出来たよ〜?」と、リリアン達から声がかかった。

 初めのいくつかのピザ生地と、トマトソースが出来たようだ。

「では、料理人特権の味見……いや、試食会を始めたいと思います」

「「「よっしゃあ!!」」」

 マテウス副料理長達が、拳を天に挙げた。

 高価な砂糖をたくさん使うお菓子だと、そうそう味見なんて出来ない。

 コレは砂糖は少ししか使ってないから、試食会を盛大に出来るのはイイよね。

 皆が楽しそうだと、莉奈も嬉しい。皆の笑顔が活力にもなる。



 発酵したピザ生地を、適当に薄く伸ばして味のベースとなるトマトソースを塗った。

 マルゲリータは、ちぎったモッツァレラチーズを載せて、先に焼く。バジルの葉は、香り重視の後のせに。

 ジャーマンポテトの具材は、茹でたジャガイモにアスパラガスやベーコン。マヨラーのために追いマヨネーズと、なしの2種類。

 ベーコンとニンニクのピザは、具材にベーコンとニンニクをたっぷり載せて焼いたよ。



 オーブンを覗けば、チーズがフツフツとして色付いてきた。

 ベーコンからは燻製特有の香りが漂い、良い焦げ目が付いている。厨房には香ばしい匂いと、待ちきれない料理人達のワクワクした感情が溢れていた。




 ピザ窯はまだ造られていないけど、コレを食べたらすぐに取り掛かるに違いない。

 窯で焼いたピザ生地は勿論、パンもオーブンより香ばしく焼けて美味しいからね。

 あの、大きな木ベラを使ってクルクルと遊び……じゃない、回して焼いてみたい。莉奈は少し期待をしていたのであった。




 さて、4種類のピザが出揃ったので、皆は一斉に手を合わせた。

「「「では、いただきます!!」」」

 この瞬間がたまらない。



 クリスピータイプのピザ生地は、焼くとパリサクッと香ばしくてものスゴく軽い。

 マルゲリータはモッツァレラチーズがほどよく溶けていて、ひと口頬張ると、口からチーズの橋が出来上がった。

 トマトの酸味がまた堪らず、バジルの葉の香りも鼻に抜ければ、爽やか過ぎてパクパクと食が進む。

 ニンニクとベーコンは、あれだけニンニクを載せたにも関わらず、ベーコンの濃く深い味が口一杯に広がる。

 息を吸うと、ニンニクの香りが鼻を擽り、これまたすぐに手が伸びてしまう程だ。

 ジャーマンポテトは、お腹にガッツリ溜まる系だ。

 チーズとジャガイモ、ベーコンの最強トリオは堪らない。勿論、好みでニンニクを足したり、マヨネーズを足したり飽きない楽しさがある。

 莉奈的には、まずはガッツリ系のジャーマンポテトを一切れ。次に旨味の宝庫ニンニクとベーコンからの、最後にマルゲリータで締めたい。

 なんで、ジャンクフードって、こんなにも炭酸が飲みたくなるんだろうね?

 コーラやサイダーが飲みたいと思う莉奈だった。




「ジャーマンポテト、うんまっ!! ジャガイモとベーコンは最強だろ!?」

「ニンニクとベーコンの方が、ガツンと鼻から香ばしい匂いが抜けて、スゴい美味しいと思う」

「マルゲリータなんか、酸味とバジルの香りで何枚でもいけちゃうし、無限だよ無限!!」

「「「エールが飲みた〜い!」」」

 莉奈が炭酸を欲していたみたいに、皆はエールを欲する様だった。

 ピザの味の感想は料理人達は三者三様のようで、意見を言いながら楽しそうに口に頬張っていた。

 



 他に、どんな種類のピザを作ろうかなと、莉奈がピザを頬張った瞬間ーー。




 ーードスン、ドスンと窓の外に何かが着地した音がした。




 


















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