346 美容の神、御降臨?
シュゼル皇子とタール長官が、背後で話している声が聞こえる。
「やはり、リナは【調合】の技能も持っていたみたいですね」
「元からなのか、後から付いたのかは定かではありませんが……魔法省には是非とも欲しい人材です」
「来た当初に【鑑定球】で鑑定した時には、何故視えなかったのですか?」
2人の話に割って入るのはおこがましいが、莉奈は気になったので訊いてみた。
この国に召喚された数日後くらいに、魔法を使えるかが分かる【鑑定球】で調べてもらったハズ。
あの時は "太りぎみ" しか目に入らなかったけど、鑑定以外は表記されていなかったっけ?
「あれは、魔法の属性を調べるのに特化した【鑑定球】で、技能はおまけ程度にしか表記されないのですよ」
権力を嵩にかけ、一方的にすべてを視るのは人権を侵害する行動だと、莉奈に配慮した様だった。
まぁ、その割には "太りぎみ" とか出ていましたけど?
「それに技能は、後から取得したり進化や変化する事も多々ありますしね」
とタール長官が、シュゼル皇子の言葉を補足してくれた。
なるほど、コレからも何か取得する可能性も、進化や変化する事もあるのか……気付くかは別として。
「シュゼル殿下、早速ですけど、ソレ試しに使ってみてもイイですか?」
出来立てホヤホヤの【オールインワンジェル】を見た。
魔法薬も普通の薬と同じ様に、人体実……もとい臨床試験をすると聞いたので、作った自分が責任を持てば良いかなと。
「どうぞ?」
シュゼル皇子も【鑑定】をして視て、害なしと判断したようだった。
莉奈は手に持つビーカーを横に揺らして見ると、水とは違って少しだけ粘度があるように見える。
それを手のひらに少量垂らし、両手で伸ばしてから顔に塗ってみる事にした。
ーーゴクリ。
魔法省の研究員、それも特に女性の固唾を飲む様な音がする。
スゴい注目だ。
オールインワンジェルはジェルと表記されてはいたが、ジェル程ねっとりしていない。少しトロッとしている感じだ。
色は微かに白濁している程度で、顔に揉み込むように塗るとすぐに肌に浸透したのか、アッという間になくなっていた。
ヒリヒリしないし、痛みもない。痒みもない。
ジェル特有の塗った後のベタベタ感もない。
莉奈はさらに顔を撫でたり、押したりしてみた。
ツルッもちっプルルンである。
何コレーーっ!!
莉奈は異世界の美容液の凄さに、感激し口が自然に綻んだ。
少し乾燥が気になっていた目の下辺りの肌も、あっという間にツルッもちっプルルンなのだ。
塗る時使った手までしっとりしているし、凄すぎる!!
肌の乾燥に悩む母世代なんて、喉から手が出るほど欲しがる逸品だよ。
コレを通販番組で売り出したら、絶対に電話がパンクものだ。
「うっわぁぁ!! ツルッとしてる!!」
「モチモチもしてるわよ!?」
「瑞々しくてプルルンよ!!」
「何コノ美容薬? 液!?」
見ていた女性の研究員達が席を立ち、こぞって莉奈の顔をペタペタと触りまくっていた。
遠慮も配慮も何もない。
莉奈のツルッもちっプルルン顔は、モミクシャである。
「落ち着いてくれるかな?」
好き勝手に触るのはイイとして、せっかくのツルッもちっプルルンが、台無しになるよ。
莉奈はウンザリした様な声を出していた。
ガササササッ。
莉奈がやっとの思いで口に出したら、潮が引く様に数m離れてバタバタと床に膝を落とし始めた。
「「「神様、リナ様!! 是非我々にもお作り下さいませ!!」」」
女性が全員平伏していた。
ーーリナ神、御降臨である。
シュゼル皇子とタール長官が背後で、呆れ笑いしている声がした。
こうなるとは分かっていた。だが、想像以上にリアクションが激しかったからである。
「いや、まぁ。作るつもりではいるけど」
「「「ありがとうございます!!」」」
「でもね、ローヤルゼリーもポーションもそんなにないから作れないよ?」
ローヤルゼリーは私物だから、足りるかはともかくとして使えるけど、ポーションは完全に別。
自分のだけでは全然足りないし、ここにあるのを勝手には使えないからね。
「材料を用意すれば作って貰えるのね!?」
莉奈が皆の分を作る材料がないと言えば、研究員が前向きな考えを出した。
「うん、まぁ、そうかな?」
「「「早急に御用意させて頂きます!!」」」
平伏していた女性達は、瞳をキラキラさせていた。
どうやら、足りなきゃ自分達で用意するらしい。
「皆さん、動くのは就業時間が終わってからですからね?」
タール長官がパンパンと手を叩いて、一応注意していた。
すでにワクワク、そわそわと浮き足だっているからだ。すぐにでも材料を用意して莉奈に頼みたいに違いない。
「「「はい」」」
今すぐでなくても、皆楽しそうだった。
美容に異世界も国境もないんだなぁ、と苦笑いする莉奈だった。
誤字脱字、ポイントでの応援、いつも感謝しております。
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