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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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340 ポイっ



「あっ、今日はチーズ入りのパンなんだ」

 バーニャカウダに、パンを付けて食べているリリアンを見ていた莉奈は、パンにチーズが入っているのに気付いた。

 どうやら、もう生肉や生魚を入れて焼く暴挙はしないらしい。

「チーズを入れると美味しいって言っていたから、チーズが豊富にある時は入れている」

 マテウス副料理長が教えてくれた。

「パンも元種ってやり方を教えてもらってから、パン酵母が扱い易くなったしね」

 マテウス副料理長と話をしていたら、リック料理長がそう言いながらやって来た。

 ちなみに元種って言うのは、パンを作る量より少ない材料、強力粉や塩を液体酵母に入れて混ぜて発酵させたモノ。

 次からはその元種に強力粉とかを足してパンが作れる。説明が難しいが、ざっくり言うと固体の酵母って感じかな?

 ただコレ、液体の酵母より扱い易いが、少し手間が掛かるのが難点。

 でも、液種より発酵力が強いので、その元種に強力粉とか水や液体酵母を継ぎ足し発酵させて、増やしていけるのは利点かな。

 糠床みたいに、この元種を継ぎ足し継ぎ足しで継承させる名店もあると、どこかで耳にした気がする。

 だけど、一般的には2、3回も継ぎ足せば酵母菌が弱くなるとか、味が落ちるとか言われてもいるし、腐るから数回でヤメた方が良いとも言っている人もいて、もはや何が正解なのかサッパリである。

 ところで、向こうの世界では粉状のイースト菌、ドライイーストがあるが、この元種を乾燥させて粉末にすればイイのだろうか?

 そんな単純ではないだろうとは分かってはいるが、だったらイイのになと莉奈は思った。




「遅番じゃなかったの?」

 奥さんのラナ女官長が、少しだけ驚きつつ苦笑いしていた。

 ゆっくり休んでいればイイのにと。

「朝食を食べに来たら、ニンニクの香りがしてつい」

 気になって誘われて厨房に来たのだと、リック料理長が頭を掻いていた。

 香りに誘われたとか言っているけど、リック料理長の事だから、本当は作っているモノが気になったのかもしれない。料理人の血が騒ぐ的な?

「リックさんもどうぞ」

 せっかく来たのだからと、莉奈は味見を勧めた。

「ありがとう。コレがバーニャカウダか。んっ! ニンニクがガツンとくるな。だけど、野菜に良く合ってウマイ」

「こっちも美味しいわよ?」

 ラナ女官長が生クリームバージョンを差し出せば、夫婦睦まじく食べている。

 莉奈は、そんな2人になんだか微笑ましいなと、眺めているのであった。




 

 味見しながらのんびりと談笑していたら、いつの間にか朝食の時間に。

 食堂にワイワイと警備兵達が……来る前に、氷の執事長イベールが静かに現れた。



「陛下がお呼びです」

「え?」

 執事長イベールは、フェリクス王達の朝食を受け取ると、ついでの様に莉奈の首根っこをむんずと掴んだ。

「ちょっ!? あ〜あ〜」

 莉奈の抗議も返答も受け付けず、執事長イベールは莉奈をズリズリと引き摺って行く。

 もはや、色々やらかしまくる莉奈には、どんどん容赦がなくなってきた。その内に有無を言わせず、強制的に魔法鞄マジックバッグに押し込んで連れて行くに違いない。





 ◇◇◇





 連れて来ましたと、ポイっと王族の食堂に放られた莉奈。

 それを見ていたフェリクス王達は、その雑な扱い方に苦笑していた。

「朝からお呼び立てして、申し訳ありませんね。リナ」

「え、あ、いえ」

 シュゼル皇子にほのほのと言われたのだけど、莉奈は真珠姫やらカカオやらの事が頭をかすめ、なんだかソワソワして落ち着かない。

 侍女達や執事長イベールが、朝食の用意をしているのを見ながら、早く時間が過ぎるのを願っていた。



「 "シュゼル・スペシャル" 」

「……っ!」

「大変、興味深いモノを作られたとか」

 シュゼル皇子の笑みが、ものすごく深い。

 フェリクス王がシュゼル皇子にチク……った、じゃない話したのだろう。

 莉奈は冷や汗、脂汗しか出てこない。

 シュゼル皇子への謝罪の言葉より先に、助けてとフェリクス王を見たのだが、くつくつと笑っていた。

 助ける気はゼロ。エギエディルス皇子は呆れている。



「まだ、あるのですか?」

「い、いえ。もうありません」

 作れますけど、と出かかった言葉をゴクリと飲み込んだ。

 こんな状況で余計な言葉を滑らせたら、何が起きるか想像もしたくない。

「作ったモノに関しては、今更問いませんが……何故 "シュゼル・スペシャル" と?」

「ょ、ょく分かりません」

 目を逸らし、ボソボソと言った莉奈。

 だって、なんか勝手に名称が付いた訳で。

 食堂自体がシンとしているので、小さく言っても意味はないけど。

「では、何故、アレを作ったのですか?」

 シュゼル皇子は笑みをさらに深めた。

 怒ってはなさそうだけど、嘘は許さないと目が言っている。

「な、な、何故って……」

 莉奈はゴニョゴニョと言葉を濁していたが、チラッとフェリクス王3兄弟を見たら、目で追及をしていた。

 デスヨネ。黙っていられないよね。

 逃げられないし、もう諦めて正直に言ってしまえ……と莉奈は観念した。

 



「面白そうだったからであります!!」

 額に右手をあてヤケ気味にビシッと敬礼して、馬鹿正直に言ってみた。

「「クッ」」

 途端に、フェリクス王とエギエディルス皇子の失笑が漏れた。

 馬鹿正直にも程がある、と。

「……」

 シュゼル皇子は、何とも言えない表情をしていた。

 その面白そうで、自分の名前が付けられた魔法薬ができたのだから。





 ◇◇◇





「何もなかったから良いものの、以後気を付ける様に」

 シュゼル皇子はフェリクス王同様、お咎めなしとしてくれた。

 後で作り方は教える様にとは言われたけれど。

「はい、以後気を付けま……ぁっ」

 莉奈は頷きつつ、フと思い出しチラッとシュゼル皇子を見た。

「あ? なんですか、リナ」

 莉奈が何か言いたそうなのを察して、シュゼル皇子が優しく訊いてくれた。

「実はまだ、作ってはいないのですが……」

「いないのですが?」

「化粧水? ローション? えっと、美容液みたいなモノを作ってもイイですか?」

 庭を散歩した時に蜂の巣があって、莉奈があまりの大きさと蜂の数に驚いていたら、警備兵のアンナが現れた。

 そのアンナが、笑いながら蜂の巣を叩き落としたので、これ幸いと貰った大きな蜂の巣が魔法鞄マジックバッグにある。

 運良く蜜蜂だったらしく、ハチミツは紅茶に入れたりお菓子類に使用したりしているのだけど、蜂の子やローヤルゼリーはたくさん残っていたのだ。

 そのローヤルゼリーを【鑑定】して視たら、美容液と言うか "オールインワンジェル" を精製する原料に使えると表記されていたのである。

 お風呂が温泉だから、その成分でお肌はモチモチ、ツルツルだけど、肌が乾燥する時もある。その時にはつけたいなと。

 だって、この世界に化粧水も乳液もないし。

 肌が乾燥したら精製したオリーブオイルを塗る時もあると、ラナ女官長が言っていたけど、それはそれでベタベタしそうだし抵抗がある。

 だからと勝手に作ったら、今みたいに怒られそうだ。

 許可が欲しいなと思って莉奈が、容認を求めたのだが、美容液の説明をした途端にーー




 ーーギラッ!!




 食堂の空気が数度上がった。

 侍女達の目が、ギラついていたのだ。




 ーーえ? 

 なんか、怖いんですけど?




 莉奈が侍女達の視線に怯えていたら、鼻で笑う様な声が聞こえた。

「美容液とやらが何だかしらねぇけど、お前に必要か?」

 フェリクス王が、チラッと莉奈を見て鼻で笑っていたのだ。

 美容液の液が何を示しているのかは分からないが、"美容" だ。莉奈のどこに必要性があるのか、意味ありげに口端を上げていた。

「どういう意味ですか?」

 莉奈はプクリと頬を膨らませる。

 確かに女性らしさは皆無だけど、肌荒れくらいは気にするのだ。その薄笑いは失礼だと、頬を膨らませていた。

「そのままの意味だが?」

 フェリクス王は、さらに口端を上げて見せた。

 美容なんて言葉、お前には無縁じゃないのか? と目が言っている。



「超が付く程、失礼なんですけど!?」

 その笑みはなんなのだと莉奈が怒って見せても、フェリクス王は面白そうに笑うだけだった。





 ーーが、侍女達の方はガッツリ食らい付いた。





「た、た、確かにリナは太めでした!!」

「美は……ともかく、教養は皆無です!」

「女性らしさも蟻……いえ、ノミ以下です!!」

「態度はもはや極刑レベルだと思います!!」

「しかし、不敬で無礼者で太めだったリナですが、美容液というモノがあれば直るかもしれません!!」

「「「ですから、美容液は必要です!! 是非許可を!!」」」




 侍女達が土下座する勢いで、一斉に頭を下げた。

 莉奈が美容液なんて言葉を言ったがために、食い付いたのだろう。

 背後から、侍女達の怒涛の援護があったのだが、射撃の的がオカシ過ぎる。

 援護のハズなのに、グサグサと莉奈に当たりまくっている気がする。

「そっちはソッチで、マジで失礼なんですけど!?」

 背中に穴が空きまくった莉奈は、ますます頬を膨らませた。

 女性らしさがノミだとか、精神に大ダメージである。

 大体、不敬が美容液で直るってどんな理屈?

 もはや、どの言葉もただの悪口にしか聞こえなかった。




「随分と好かれていやがるな?」

 フェリクス王は侍女達の行動に叱責せず、くつくつと面白そうに言った。

 まさか、侍女達が援護するとは思わなかったのだ。

 こういう寛大な所が、恐れられても好かれるのだろうと莉奈は感じつつーー。

「いやいやいや、今のどこが!?」

 一体、今のどこに好かれている要素があるのかな? と反射的にツッコミを入れていた。

 だって、フェリクス王は絶対にそんな風に思っていないクセに、完全にイヤミである。

 



「まぁ、美容液と言うモノが何なのか、どうやって作るか知りませんが、確認をするので作ったら私にも下さい」

 シュゼル皇子がにこやかに言った事で、侍女達は歓喜の声を上げた。

 美貌を誇るシュゼル皇子に必要はない。100%興味か好奇心からだろうが、許可が下りたのである。

 となれば、莉奈が美容液とやらを作るだろう。そうしたら、おこぼれを……いや、取り引きをして手に入るかもしれないと。

 侍女達の見え見え過ぎる態度に、フェリクス王とエギエディルス皇子は、揃って呆れ返っていたのであった。








◇いつもお読み頂きありがとうございます。(╹◡╹)

 ここまで続けてこられたのは、皆様のおかげです。ありがとうございます。

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 ╰(*´︶`*)╯感謝です♡

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