333 莉奈はコロコロ転がる、どこまでも
白竜宮ではほぼ毎朝、実技や演習を行なっている。
時には竜を交えて模擬戦を行い、日々魔物や賊との戦いに備えているのだ。
その白竜宮の演習場の一つが、竜達のいる広場の真向かいにある。
柵越しに竜達や宿舎を遠目にも見られる場所。莉奈が、碧空の君と初めて出会った場所でもある。
近衛師団兵達が演習をしていると、その雲一つない上空に、白く美しい竜が飛来した。
「真珠姫だ」
「いつ見ても綺麗だよな」
「あぁ、優美って言うか……ん?」
演習中の近衛師団は、優美な姿に一瞬手を止め見惚れていた……が真珠姫の手に持つ "何か" を見て、目を一斉に擦り始めた。
「「「え?」」」
皆がもう一度目を擦り、または二度見して驚愕、瞠目した声を出していた。
「「「リ……ナ?」」」
そうなのだ。
真珠姫が手に持つ、いや握っていたモノとは莉奈だった。
皆が唖然として見ていると、竜たちが集う広場に真珠姫が莉奈をポトリと落とした。
「い、生きて……るよね!?」
「た、た、多分?」
「大丈夫なの、アレ!?」
「分かんねぇよ!!」
完全に手を止めた近衛師団兵達は、その異様な状況に騒めいていた。
それもそうだ。演習をしていたら、何かを鷲掴みしている竜が降りて来て、ソレが何かと凝視すれば莉奈だったのだ。
驚愕しない訳がない。一体全体、莉奈と真珠姫の間に何があったのか。
「着きましたよ」
莉奈を地に降ろした……いや、ポトリと落とした真珠姫。
莉奈は地面に突っ伏したまま、ピクリともしなかった。
「寝たフリですか?」
真珠姫が動かない莉奈の身体を、手〈前足〉でツンツンとした。厳密に言うと爪だけど。
「「……」」
真珠姫はしばらくジッと莉奈を見ていたが、莉奈は一向に動かない。
「いちいち手間を掛ける娘ですね」
痺れを切らした真珠姫は、わざとらしく盛大にため息を吐いた。
そして、そう呟くと真珠姫は今度は莉奈に顔を近付け、地面にうつ伏せに倒れていた莉奈を、鼻先を使って器用に転がし始めた。
「あ〜あ〜。や〜め〜て〜」
莉奈は何も抵抗出来ずに、地面をコロコロと玉の様に転がされている。
止まれば途端に鼻先で押されるので、立ち上がるタイミングなど、全くなかった。
「「「…………」」」
近衛師団兵達は今起きている状況が分からず、目も口も開けたまま、無言でそれを見ているしかなかった。
ただ、一つだけ理解出来た事がある。
莉奈が真珠姫に遊ばれている。それだけは、確かな様である。
◇◇◇
結局、莉奈はコロコロと、竜の宿舎の近くまで転がされていた。
まさに、莉奈ずたぼろである。
竜に乗って空を飛ぶのは、念願ではあったけど……何故、鷲掴みにされて飛ぶハメになったのかな?
風に乗り、空から王城や街を見られて、快適で優雅な飛行を想像していたんだけど。現実は常に世知辛いらしい。
莉奈の初めての飛行は、楽しいモノではなかった。
ゴム紐がないバンジーかパラシュートを付けない飛行の様で、景色を見ている余裕などなく……まさに地獄。
『ほら、シャキッとしなさい』
身体をピクピクさせたまま、微動だにしない莉奈の襟首を咥えると、真珠姫は莉奈を無理矢理立たせようとしていた。
ーー鬼か悪魔か、この竜は。
頭の中にシャキッとしろと真珠姫の念話が響いたが、精神的にも肉体的にもボロボロの莉奈はヨレヨレとしていた。
脚が生まれたばかりの子鹿の様にプルプルしてはいるけれど、なんとか立てただけでも奇跡である。
「それが "竜喰らいの称号" を持つ者の姿ですか?」
莉奈のボロボロの姿に、真珠姫は呆れていた。
コレが、竜達を一度は恐怖で震撼させた人間の姿かと。
ーー誰が、竜喰らいだ。
莉奈は、真珠姫の無茶ブリに何かがプチンと弾けた。
何故、自分がこんな仕打ちを受けなければならないのか。
莉奈は、無言で魔法鞄を漁り "とある飲み物" を取り出すと、躊躇なくソレをゴクゴクと一気に飲み干した。
味は栄養ドリンクに近い感じだが、飲んだ途端に全身の痛みが取れ、身体がカッカッしてきて高揚してくるのを感じた。
◆2月10日(水)
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました
小説、4巻発売日です。
皆様の応援があってこその4巻の発売となりました。
ありがとうございます!!
╰(*´︶`*)╯♡
書き下ろしは、フェリクス王が莉奈の部屋に来た時の視点となっております。
興味のある方は、小説版をお手に取って頂けると幸いです。
ヽ(・∀・)




