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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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333/678

333 莉奈はコロコロ転がる、どこまでも



 白竜宮ではほぼ毎朝、実技や演習を行なっている。

 時には竜を交えて模擬戦を行い、日々魔物や賊との戦いに備えているのだ。

 その白竜宮の演習場の一つが、竜達のいる広場の真向かいにある。

 柵越しに竜達や宿舎を遠目にも見られる場所。莉奈が、碧空の君と初めて出会った場所でもある。



 近衛師団兵達が演習をしていると、その雲一つない上空に、白く美しい竜が飛来した。

「真珠姫だ」

「いつ見ても綺麗だよな」

「あぁ、優美って言うか……ん?」

 演習中の近衛師団は、優美な姿に一瞬手を止め見惚れていた……が真珠姫の手に持つ "何か" を見て、目を一斉に擦り始めた。

「「「え?」」」

 皆がもう一度目を擦り、または二度見して驚愕、瞠目した声を出していた。




「「「リ……ナ?」」」

 そうなのだ。

 真珠姫が手に持つ、いや握っていたモノとは莉奈だった。



 皆が唖然として見ていると、竜たちが集う広場に真珠姫が莉奈をポトリと落とした。

「い、生きて……るよね!?」

「た、た、多分?」

「大丈夫なの、アレ!?」

「分かんねぇよ!!」

 完全に手を止めた近衛師団兵達は、その異様な状況に騒めいていた。

 それもそうだ。演習をしていたら、何かを鷲掴みしている竜が降りて来て、ソレが何かと凝視すれば莉奈だったのだ。

 驚愕しない訳がない。一体全体、莉奈と真珠姫の間に何があったのか。



「着きましたよ」

 莉奈を地に降ろした……いや、ポトリと落とした真珠姫。

 莉奈は地面に突っ伏したまま、ピクリともしなかった。

「寝たフリですか?」

 真珠姫が動かない莉奈の身体を、手〈前足〉でツンツンとした。厳密に言うと爪だけど。

「「……」」

 真珠姫はしばらくジッと莉奈を見ていたが、莉奈は一向に動かない。

「いちいち手間を掛ける娘ですね」

 痺れを切らした真珠姫は、わざとらしく盛大にため息を吐いた。

 そして、そう呟くと真珠姫は今度は莉奈に顔を近付け、地面にうつ伏せに倒れていた莉奈を、鼻先を使って器用に転がし始めた。

「あ〜あ〜。や〜め〜て〜」

 莉奈は何も抵抗出来ずに、地面をコロコロと玉の様に転がされている。

 止まれば途端に鼻先で押されるので、立ち上がるタイミングなど、全くなかった。

 



「「「…………」」」

 近衛師団兵達は今起きている状況が分からず、目も口も開けたまま、無言でそれを見ているしかなかった。

 ただ、一つだけ理解出来た事がある。

 莉奈が真珠姫に遊ばれている。それだけは、確かな様である。

 




 ◇◇◇




 結局、莉奈はコロコロと、竜の宿舎の近くまで転がされていた。

 まさに、莉奈ずたぼろである。

 竜に乗って空を飛ぶのは、念願ではあったけど……何故、鷲掴みにされて飛ぶハメになったのかな?

 風に乗り、空から王城や街を見られて、快適で優雅な飛行を想像していたんだけど。現実は常に世知辛いらしい。

 莉奈の初めての飛行は、楽しいモノではなかった。

 ゴム紐がないバンジーかパラシュートを付けない飛行の様で、景色を見ている余裕などなく……まさに地獄。

 

 


『ほら、シャキッとしなさい』

 身体をピクピクさせたまま、微動だにしない莉奈の襟首を咥えると、真珠姫は莉奈を無理矢理立たせようとしていた。





 ーー鬼か悪魔か、この竜は。





 頭の中にシャキッとしろと真珠姫の念話こえが響いたが、精神的にも肉体的にもボロボロの莉奈はヨレヨレとしていた。

 脚が生まれたばかりの子鹿の様にプルプルしてはいるけれど、なんとか立てただけでも奇跡である。




「それが "竜喰らいの称号" を持つ者の姿ですか?」

 莉奈のボロボロの姿に、真珠姫は呆れていた。

 コレが、竜達を一度は恐怖で震撼させた人間の姿かと。





 ーー誰が、竜喰らいだ。





 莉奈は、真珠姫の無茶ブリに何かがプチンと弾けた。




 何故、自分がこんな仕打ちを受けなければならないのか。

 莉奈は、無言で魔法鞄マジックバッグを漁り "とある飲み物" を取り出すと、躊躇なくソレをゴクゴクと一気に飲み干した。

 味は栄養ドリンクに近い感じだが、飲んだ途端に全身の痛みが取れ、身体がカッカッしてきて高揚してくるのを感じた。











◆2月10日(水)

 聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました

 小説、4巻発売日です。


 皆様の応援があってこその4巻の発売となりました。

 ありがとうございます!!

  ╰(*´︶`*)╯♡


 書き下ろしは、フェリクス王が莉奈の部屋に来た時の視点となっております。

 興味のある方は、小説版をお手に取って頂けると幸いです。 

 ヽ(・∀・)

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