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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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332 莉奈、攫われる?



 この王城は、山の上にあるとはいえ天候はほとんど荒れない。時折り強風や霧がかかる事もあるけれど、晴天に恵まれていた。

 そんな清々しい朝ーー。




 莉奈が日課のジョギングに行こうと、身支度をしていると、廊下を走る音が聞こえて来た。

 警備兵以外、慌ただしく走る人がいない王城で誰が走っているのだろうか。

 その走る人物は、莉奈の部屋に向かって来ているのか、次第に音が大きくなってきた。



「リナ、起きてるーーっ!?」

 返事も待たずに、バタンと勢いよく寝室の扉が開いた。

「うっわ! びっくりした」

 莉奈が何事かと扉に近付いたら、ラナ女官長と侍女モニカが顔面蒼白の表情で入って来たのだ。

「ちょうど良かったわ。急いで銀海宮の厨房に来てちょうだい!!」

「へ? なんで?」

「「なんでもイイから、とにかく急いで!!」」

 起きてすぐだし頭は働かないし、話が全く分からない莉奈がボケッとしていると、ラナ女官長と侍女モニカに有無を言わせずに腕を掴まれた。

「えぇぇーーっ!?」

 莉奈が混乱しているのを無視して、2人はズリズリと引き摺る様にして莉奈を銀海宮に連れて行くのであった。





 ◇◇◇





「「どうにかしてくれ」」

 強制、いや拉致された形で莉奈が銀海宮の厨房に着くと、隅の方で料理人達がガタガタと震え、莉奈にある一点を指で差していた。



 その異様な光景に莉奈は、一瞬目を見張ったがーー。

 すぐに突き刺さる様な視線を感じ、莉奈は目をそちらにゆっくり向けた。

「……っ!」

 厨房の中を睨む様な姿の何かがいた。

 その凍てつく視線の先にいたモノを見て、莉奈は堪らず半歩後退った。




 ーーそこには。




 窓から顔を出して、目を細めてコチラを睨む【真珠姫】がいたのだ。




 胸元など見なくても、雰囲気だけで一目瞭然である。

 ドス黒いオーラを纏っていて、超が付く程に不機嫌であった。




 ーーえぇぇェェッ!?

 




 なんで朝から、そんなにご機嫌斜めなの?

「ちょ、ちょ、ちょっと!?」

 少しばかり足が竦んでいた莉奈の背を、ラナ女官長と侍女モニカが、カタカタと震えながらも力強く押していたのだ。

 生贄か人身御供みたいな事、ヤメてもらってイイかな?

「な、何で押すのかな!?」

「「リナが何かしたんでしょう!?」」

「イヤいやイヤ、何その言い掛かり!?」

 なんで私が何かやった話、前提なのかな!?

 真珠姫が不機嫌だからって、なんで自分のせいみたいな話になるの?

「「イイから、どうにかして!!」」

 ラナ女官長とモニカが、もはや半泣き状態で莉奈を真珠姫の前にドンと突き出した。




 突き出す2人もそうだけど、誰も助けてくれないとか、恨むぞ!?




「えーっと、どうかしましたか?」

 莉奈は両手を揉みながら、真珠姫の傍に寄って行った。

 超不機嫌だけど、真珠姫に何かした覚えはないから大丈夫だと思っていた。




 ーーガッ。




 だが、莉奈が窓から顔を覗かせる真珠姫に近付いた瞬間ーー。




 真珠姫の右手〈右前足〉が素早く動き、莉奈の身体を握る様に掴んだ。

「へ?」

「「「え゛?」」」

 莉奈と皆の驚愕した声が、同時に聞こえた。

 まさか、莉奈を捕まえるとは想像しなかったのだ。

「捕まえた」

 真珠姫は確かに、ドス黒い声でそう呟いた。




「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!?」




 捕まえた? どういう事だと、莉奈はバタバタとさらにもがいた。喰われるとは思わないが、未知なる恐怖が身体を襲う。

 しかし、真珠姫はバタバタと暴れる莉奈を捕らえたまま、軽く地を蹴り浮上した。

「はぁーー!?」

「「「!?!?」」」

 莉奈も含めて、厨房は大パニックである。

 あの真珠姫が莉奈を鷲掴みしたまま、地を蹴り翼を広げたのだ。莉奈には、絶対に危害を加えないと信じていたのだが、それは幻想だったらしい。

「し、真珠姫!! おっわ、ギャーーッ!?」

 莉奈が、何が何だか分からずさらにバタバタもがいたところで、真珠姫の右手から逃れられる訳もない。

 真珠姫も莉奈が暴れようが何かを叫ぼうが、ガン無視して翼をバサリと一扇ぎすると、莉奈を鷲掴みしたまま空へ飛んで行ってしまったのであった。





「何でーーっ!?」





 莉奈の悲しい叫び声だけが、風にかき消されて行ったのであった。

「「「…………」」」

 全員、唖然呆然、愕然、驚愕と様々だった。

 今、目の前で何が起きたのか、頭が理解出来なかった。

 ご機嫌斜めの真珠姫が来た。

 莉奈が話し掛けた。

 そしたら、ガッと鷲掴みにされ空に飛んで行った。





 ーードウイウ事?





「リ、リ、リナ!?」

「リ、リナがっ!!」

「「「リナが攫われたーーーーっ!!」」」

 



 ゆっくりと状況を理解した者達は、徐々に青褪め厨房は大パニックに陥っていた。

 意味もなくフライパンを持つ者。右往左往に走り回る者。頭を抱えて唸る者。

 状況は理解出来ても、どうしてイイのか頭が整理出来ず、ジッとしていられずに厨房を走り回っていたのである。



「ど、どうしよう!?」

「リナ、食べられちゃうの!?」

「それとも、空から投げられるのか!?」

「何で攫われたんだよ!!」

「「「お前は何をしたんだよーーっ!?」」」

 全員が顔面蒼白で混乱状態なのであった。







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