表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/657

33 忘れてたよね?

これ書いてると、お腹が鳴ります。

晩御飯はクリームシチューにしようかな。



「……リナが、いつも微妙そうにしてた訳よね……」

 ラナ女官長がボソリと言った。

 いつもの水煮に近いスープを思い出して比べた様だ。

「これに比べたら、我々のあのスープは……水煮だな……」

 リック料理長が、肩を落とした。自分達の作っていた物と、根本的な所から違ったのだ。それは衝撃に違いない。

「「「…………そう……ですね」」」

 部下である料理人達も、ため息混じりに呟く。それぞれに衝撃だったらしい。

「まぁ、私からしたら "魔法" の方が衝撃だけど……。文化の違いってヤツじゃないですかね?」

 莉奈とて、何一つ自分で考案した物などない。やり方こそ自分流にはなってるものの、全ては見たり聞いたりだ。

「そういうものでしょうか? 違う気が……」

 となおも、覇気のないリックに莉奈は笑った。

「コッチが "魔法" が発達してる替わりに、アッチは "料理" が発達してるんですよ。そういう違いですよ」

「……」

「これだって、私が考案、発案した物ではないし "料理" が特化した "世界" から来たんだと思って下さい」

 あまりショックを受けてくれても胸が痛む。普通に美味しいでいいのだから。

「そうよ! あなた……知らないなら学べばいいのよ。ね?」

 ラナが、旦那であるリックの落とした肩をパシンと叩く。

「そうだ……そうだな! 学べば……教えを請えば!! リナ、よろしくお願いします!!」

 と奥さんの言葉に奮起したリックは頭を下げた。イイ夫婦関係だ。

「いやいやいや!? 頭を上げて下さい。私で良ければいくらでも教えますから!!」

 リック料理長に頭を下げてもらう謂れはない。むしろいくらでも教えるから、是非とも作って欲しい。正直に言えば毎日は面倒くさいのだ。

 料理なんて、好きな時に好きな物を作るに限る。

「「「ありがとうございます!!」」」

 今度は、一同が頭を下げた。

「では、こちらこそよろしくお願いします」

 それにならって、莉奈も頭を下げた。

 どっちかというと、たぶん自分の方が好き勝手やって、迷惑をかける可能性が高いからだ。





「なぁ、リナ」

「なぁにエド?」

 あれ? なにげに彼が私の事、名前で呼ぶの初めてじゃない? いつも、"オイ" とか "お前" とか……アンタは私の旦那かよってなぐらい名前で呼ばないのに。

「コレ……兄上達にも、食べさせてやりたいんだけど…作ってくれよ」

 "コレ" 謂わずもがな、クリームシチューの事だろう。兄思いのイイ子だ。だが、しかし、

「……材料ないよ?」

 だって、私の勘が正しければ、さっきの鶏ガラはたまたま残ってただけだ。なら、他は捨てちゃっててない。

 なんなら、その端にある生ゴミ処理箱……スライムちゃんのお腹の中じゃないかな……?

「……オイ!」

 エギエディルス皇子は、リック一同に訊く。

「大変申し訳ありません。先程ので鶏の骨は最後で……」

「おまけに、鶏ガラの用意と下準備モロモロ……時間がないんじゃないかな?」

 頭を下げ詫びるリック一同の言葉を莉奈が拾った。

「なっ!!……マジかよ」

 エギエディルス皇子は、ガックリと肩を落とした。

「みんな、食べるのに夢中で……誰一人 "国王様" とか "宰相様" の事なんて頭の端にも思い付かなかったもんね~?」

 莉奈は、ハハハと空笑いした。だってここにいる全員、莉奈が引くぐらい群がってたし。久々の食べ物を見た様な食べ方だった。

「「「「「………………」」」」」

 莉奈以外、全員目を逸らし押し黙った。

 ひょっとしたら一番先に、献上しなければいけなかったのかもしれない御方達だ。ガッツリ忘れてた……ではいけない。

「……リナ……なんとかなんねぇのかよ」

「なんないね~」

 だって、ここに鶏ガラないもん。

「…………」

 エギエディルス皇子は、みるみるうちにションボリしてしまった。正直かわいそうでいたたまれない。



「クリームシチューはムリだけど、なんか違うの作ろうか?」

 それが、あの漆黒の王の口に合うかしらんし怖いけど。

「……! マジで!?」

「マジ……大マジ……ま、たいした物作れないけど」

 莉奈は、冷蔵庫をあさり始める。

「ありがとう!!」

 そんな莉奈にエギエディルス皇子が、眩しいくらいの笑顔を向けた。



 …………キュン。



 なんだそれ~~~!?

 マジか、胸がキュンとしたし!!

 すごい破壊力がある笑顔なんですけど!!

 お姉さんなんでもしてあげるからね?って口からいらん言葉がでそうだよ。

 なんだよ! やっぱりあのシュゼル皇子の弟だよ! 笑顔半端ない!

 ショタ趣味ないけど、いらん扉開いちゃいそうだよ。

 



 莉奈は、開けてはいけない扉を慌てて閉めた。





クリームシチューといえば、やっぱり鶏肉!!

あれ?牛肉派もいますかね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ