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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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324 チャチャっと作れ

あけましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。

 ☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




「結局、この "空石" って何なんですか?」

 フェリクス王の執務室を後にした莉奈は、師匠バーツとアーシェスを連れて食堂に向かっていた。

 包丁のお礼として、何かを作るのはやぶさかではない。

「魔法を込めると魔石になる石だな」

 師匠バーツが教えてくれた。

 火の魔法を込めれば、厨房で使っているコンロやオーブンに。水の魔法を込めれば、水道管いらずの水の出る蛇口として使え、両方使用すればお湯が作れる。

 話を聞けば、莉奈の身の回りで良く使用されているモノだった。

 使い方次第では、魔法の使えない人にも魔法が使用出来る様になるらしい。

 莉奈が瞬間移動テレポートするための補助にと、フェリクス王がくれたペンダントにも、その空石が使われているのだと、後日エギエディルス皇子から聞いた。



「採掘場や洞窟とか採れる場所は様々だが、透明度が高い程入る魔力も多く、何度でも再利用も出来て価値が高い。お前さんのその空石1つで金貨10枚程の価値がある」

「高っ!!」

 この世界は、金貨1枚で1万くらいの価値だと認識している。

 だから、これ1個で10万円。宝石と同じくらいの価値があるというわけだ。そんな貴重な石をタダで貰っちゃったよ。

「だから、旨い飯を寄越せよ。小童」

「こわっぱ」

 そんな呼び方で呼ばれた事がないから、さっきからずっと新鮮過ぎる。楽しくて仕方がない。

「師匠」

 いつまでも小童呼びするバーツに、アーシェスは苦笑していた。




 ◇◇◇





「えっ? 誰その爺さん」

「あっ、美女? いや、男?」

 食堂に着くと見慣れない2人の姿に、ボソボソと話す声が聞こえていた。

 莉奈が意外な人物といるのは不思議ではないけど、爺さんとお姉ぇさんは珍しい。ドコの誰だと皆が気にしていた。




 【美女と野獣】




 見た目は、まさにそんな感じだ。 

 正確には、美男とジジイだけど。




「何か食べたい物ありますか?」

 席に着いた2人に、莉奈はとりあえず訊いてみた。

 食べたい物があるなら、言って貰った方がいい。メニューを考える手間も省けるし。

「口に入りゃあ、なんでもイイ」

 そう聞いたら師匠バーツが椅子にドカリと座り、偉そうにそう言った。

 出たよ、ソレ1番嫌な答えだよ。

「なんでも」

 肉、魚、野菜。何をメインにするか悩む。

 冷蔵庫や食料庫に何があったかな? と悩んでいたら、師匠バーツが馬鹿にした様に笑っていた。

「ハハッ、安心しろ。お前ぇになんか、大して期待なんかしちゃいねぇ。簡単なモノで構わん」

「簡単なモノ」

 この世の中に簡単な料理なんて、ないんだけど?

 師匠は先程出した細工が、莉奈の作った物だと思っているのか、ソレとコレとは別なのか、イマイチ信じていない様だった。

「イイから、ちゃちゃっと作ってコイ」

「……」

 そう言って猫を払うかの様に、莉奈に手を振った師匠バーツ。

 莉奈はその邪険な扱いに、少し半目になっていた。

 魔法じゃないんだから、ちゃちゃっと作れる料理なんかないんだよ。

「んじゃ、新鮮野菜の丸ごとサラダです。どうぞお召し上がり下さいませ」

 莉奈は魔法鞄マジックバッグから何も調理していない、タダの人参を2本取り出し、2人の前に置いた。

 生野菜をディップにするにしたって、野菜の皮を剥いたり切ったりソース作ったり大変なんだもん。まんまが1番簡単だ。

 何でもイイなら文句ないでしょ?

「「……」」

 師匠バーツとアーシェスは人参を見たまま、唖然とした。

 厨房から見ていたリック料理長達も、唖然としていた。

 皆、まさかの返しだったらしい。



「では、ごゆっくりどうぞ」

 と莉奈が去ろうとしたら、師匠バーツが後ろで叫んでいた。

「オイオイオイ!! 小童。こんなモノ食えるか!!」

「もぉ、簡単でイイって言ったの、ソッチじゃないですか?」

 莉奈はわざとらしく、腰に手をあて呆れて見せた。

 お母さんは機嫌が悪い時は、カップラーメンを出していたけど。

「こんなの料理とは言わんだろうが!?」

「お客様、お言葉を返す様ですが、簡単に造れる武器がない様に、料理も簡単に出来るモノではないんですよ。鉄を熱して何度も打ったり伸ばしたりする様に、料理も材料切ったり下処理したり煮たり炒めたり」

「……」

「簡単なモノと言われたら、調理をしていないモノが1番手間いらずで超簡単。では、ごゆっくり」

 莉奈は深々とお辞儀をして、厨房に向かう。

 大人気ないのは重々承知ではある。チャチャっとなんて言われたから、ちょっとだけイラッとしただけ。だから、何かしらは作るけどね。



「お前見てたら、死んだ婆さんを思い出したわ」

 そんな言葉が返って来るとは露とも思わなかった。

 莉奈の暴挙に怒る事もなく、椅子から立ち上がった師匠が笑いながら付いて来た。

 同じ事を妻にも言われたなと、師匠バーツは懐かしささえ感じていた。

「奥さん、どんな人だったんですか?」

「飯は口に入るなら何でもイイって言ったら、皿に小石を載せてきやがった」

「わぁ、スゴイ優しい奥様ですね〜」

「どこがだ」

 師匠バーツは、莉奈とのやり取りで大分前に亡くなった妻を思い出していた。アイツとも若い頃、こんなやり取りをしていたなと、妙に懐かしく感じたのだ。

 莉奈を見ていると、死んだおくさんを思い出す師匠バーツなのであった。

 






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