表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

323/677

323 片刃と両刃



「コレ、果物と野菜!?」

 アーシェスがマジマジと見ながら感嘆していた。

 こんな細工した食材を見た事がなかったのだ。

「そうですよ? この花は果物、クルッと丸くなってる白いのは大根です」

 大根は桂むきにした後、細く切りクルクルと丸めてリボンぽくしてある。ウチの可愛いのが大好きだから。

 毎回はやらないけど、たまにやってあげると、喉をクルクル鳴らして嬉しそうにしていた。アメリアではないけど、あの姿は確かに可愛いと思う。

「「はぁァァっ」」

 説明をしたら、師匠とアーシェスはさらに感嘆の息を漏らしていた。



「…………」

 フェリクス王は完全に呆れていた。

 竜なんかに、こんな細工をして飯をやる意味が理解出来ないのだろう。アホくせぇと顔に出ている。



「大根の桂むきや魚を3枚に下ろす時は、片刃包丁の方がキレイに切れるんですよ。だから、陛下の刀が片刃だったんで、もしかしたら包丁も片刃かなと思っていたんですよ」

 フェリクス王の、対魔物用の武器。日本刀以上に斬れ味抜群の刀。だから、少し期待していた莉奈だった。

「良く見てやがったな」

 フェリクス王が素直に感嘆していた。

 あの少ない時間で莉奈が良く、片刃か両刃なのかを見ていたなと。武器に携わる者でもない限り、普通は気にもしないモノだ。

「陛下の刀。もの凄くキレイでしたから」

 あの形は、三日月刀というのだろう。武器に触れる機会も増えたが、今まで見たなかでも随一である。

 本物の日本刀など、見た事はないが。同じかそれ以上に綺麗だと莉奈は思った。



「片刃と両刃で切ると違うのか? 小娘」

 鼻を鳴らしながら師匠こと、バーツが訊いてきた。

 武器の斬れ味については肉なら知ってはいるが、食材の切れ味までは知らない。バーツは興味が湧いていた。

 そんな莉奈を少しは認めたのか、小童から小娘に昇格した様だ。

「切れる食材の薄さが違いますよ」

「だが、両刃の方が切断するのには向いとるだろ」

 そんな理由だけなら、武器職人の自分の方が詳しい。バーツは莉奈に目を細めた。

「確かに、野菜や魚を切断するには両刃です。だけど、野菜の皮を薄く剥いたり、魚の骨に沿って身を削ぐには、片刃の方がキレイで上手くいくんですよ」

 莉奈は、身振り手振りを使って説明した。

 魚の骨に沿わせるには、片刃の方が上手くいくのだ。

 真っ直ぐ切断したいのなら両刃。片刃は刃が片側しかないから、刃が斜めに曲がっていって美しくない。



「この方の刀は片刃だが、薄斬りも切断も得意だぞ」

 師匠バーツは得意げに、フェリクス王を見た。

 どうやら、フェリクス王の刀は片刃ではあるモノの、両刃の威力も兼ね備えているらしい。

 何、その恐ろしい情報。

 大体それ、日本刀で竹を斬るみたいな技が、絶対に必要なんでしょうよ。

「でも、それを料理には使えないでしょう」

 だから、堪らず莉奈は口に出してしまった。

 それを知ったところで、使えないしどうしろと?



「アハハハハ、そりゃそうだ」

 師匠バーツが大口を開けて笑っていた。





 ◇◇◇





「まぁ、お前が包丁に詳しいのは理解した。だが、実際食べてみない事には分からん、なんか作ってみろ」

 師匠バーツは、そう言って面白そうに莉奈を見た。

 結局、果物や野菜の細工を見ても、それを莉奈がやったという証明にはならないらしい。

 魔法鞄マジックバッグから出来た物を出しただけだからね。信用する程の価値はないのだろう。



「……なんか作れって」

王宮うちは飯屋じゃねぇぞ」

 莉奈が呆れている以上に、フェリクス王は呆れている様だった。

「そう、固ぇ事言わないで下さいよ "空石カラセキ" を持って来たんですし」

 師匠バーツはそう言って、パンパンに膨らんだ布の袋をドスンとテーブルに置いた。

 その布の袋をイベールが手に取り、上座に座るフェリクス王に手渡した。

「ほぉ、良質だな」

 布の袋から1つ取り出したフェリクス王は、光に照らして満足げに言った。

 莉奈がパッと見た感じ、取り出した"空石" は無色透明で、ガラスかクリスタルの様に見えた。

 あの布の袋には、あの石の様な物がギッシリ入っているらしい。

「陛下のためと、質の良いヤツを選りすぐったんでね」

 師匠バーツはニカッと笑った。

 仕入れた物をどこかに卸す段階で、献上品として選別して残していたのである。

「リナ、ジジイに飯を作ってやれ」

 献上品に至極満足したのか、フェリクス王は口端を上げて莉奈に頼んできた。

「……」

 オイ、コラ。

 飯屋じゃねぇって言ったのドコのどいつだよ。

「タコみたいな顔すんな。コレをやるから」

「……タコ」

 つい、口を尖らした莉奈に苦笑いしたフェリクス王は、見ていた空石を1つ指で弾いた。

 その空石は綺麗な半円を描きながら、莉奈の膝の上に落ちてきた。莉奈はそれを咄嗟に、両手で受け取った。

 貰った空石は、アーモンドみたいな形をしていて、大きさは掌で軽く握れるくらい。

 フェリクス王がした様に光に照らせば、無色透明の綺麗な石だった。

「この国、タコがいるんですか?」

「何故ソッチに食い付く」

 宝石とまでは言わないが、そのガラスみたいな石は貴重な空石だ。なのに、莉奈が食い付いたのは、自分が揶揄って言った "タコ" の方だった。

 まさかの返答に、フェリクス王は堪らずツッコミを入れてしまった。

「だって、タコは美味しいですよ? タコのカルパッチョ、タコの唐揚げ、タコのアヒージョ、どれも白ワインに合いますし」

 お米があるならタコ飯が食べたいけど。たこ焼きくらいなら作れるかな?

 空石を見ながら莉奈は、タコに思いを馳せる。

 莉奈は悪口さえ飯の種にしていた。



「至急、ブラントからタコを取り寄せろ」

「御意に」

 ブラントとは、ヴァルタール皇国の南の方にある港町だ。

 タコ料理に思いを馳せていたら、フェリクス王が執事長イベールに命を下していた。

 莉奈がワインに合うと言ったからだと思う。こういう言動を見ていると、甘味のシュゼル皇子と兄弟だなと感じる。

 しかし、タコが食べられるのは嬉しいけど、そんな勅命ありますかね?

 ついでにお米を探して欲しいと、莉奈は思ったのだが、言葉を飲み込んだ。変なところで真面目な莉奈は、なんだか強請るみたいで厚かましく感じたのだった。



「何、その勅命」

 アーシェスが、目を丸くして呆れていた。

 内容が前皇帝とは雲泥の差ではあるが、私利私欲で使うと云う点では同じだ。前皇帝も知っているアーシェスは、妙なところで親子の繋がりを感じ複雑な気分になっていた。

 口に出したら、フェリクス王が超絶不機嫌になるのは分かっているので、絶対に言わないけど。








評価やブックマークありがとうございます。

皆様の応援があるからこそ、作者は頑張れるのです。

╰(*´︶`*)╯♡



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ