32 何の音?
「うっま~~~っ!!」
「何コレ!? すげぇ旨い!」
「ちょ~~美味しいんだけど~!!」
「……っ!! すごい! すごい! すごい!」
良かった……大絶賛ですな。
あっちもコッチも、味覚に差はないらしい。これなら安心してこれからもみんなに振る舞える。
「私! これ好き!!」
モニカは、目をキラキラさせて莉奈の袖を引っ張る。
みんなへの配給に疲れきった莉奈は、力なく振り返った。
「はぁ、それは良かった……ね」
と何気なしにモニカの持つスープ皿を覗く。
「…………?」
器には白いスープが見えた気がする。
「……!?」
気のせいかと思って二度見した。間違いなくクリームシチューだ。
…………えーーーっ!! なんで~~!?
モニカ、なんでクリームシチューを選んでんの!?
あんた、さっき牛乳嫌いだからって涙目になってなかった!?
ど~いうこと~?
「……ふふっ。殿下が、美味しそうにしてたから……」
とモジモジ恥ずかしそうに笑う。
「ソウデスカ……」
呆れて物が言えないって、こういう感じですか。
異世界って、日々勉強デスネ。
…………ガリガリガリガリ。
今度は、なんなのよ?
莉奈は、音のする方に顔を向けた。
「………………」
莉奈は、絶句した。
そこには、数人が鍋底を必死でガリガリと、こびりついているクリームシチューを漁る姿があったのだ。
うわ~と莉奈は若干引き、見ない様に違う方向に顔を向けると。そっちはそっちで皿を舐めてる人がいた。
……カオスだ。
カオスって、こういう事なんですね。
莉奈は、また一つ大人になった気がした。