312 デコレーションケーキの仕上げは楽しいよね?
さてと、サラダとハンバーグはこれでヨシ。
スポンジケーキは冷えるまで時間が掛かる。
と、いう事で遊……んだりせず、ケーキをデコレーションする果物を用意する事にした。
今日はとりあえず、ククベリーとブラックベリー、ヨウマンゴーの3種類にする。たくさん入れればそれだけ華やかにはなるけど、センスがなければ汚く見える事もある。
それに味は大事。相性の良いこの3種類にした。
「フルーツはケーキだっけ? それ用?」
果物を切っていたら、マテウス副料理長が訊いてきた。
「だよ? 飾り付けは各々で、好きにアレンジするとイイんじゃないかな」
そう言って莉奈は、魔法鞄から以前シュゼル皇子に貰った色んな果物を皆に渡した。
1番は苺だけど、好みやセンスで飾れば楽しい。
「まずは手本を見せてくれ」
リック料理長が真剣に言った。
飾り付けと言われても、漠然としていて想像が付かないのだ。
皆の果物も切っていたら大分時間が経ったので、スポンジケーキを冷凍庫から取り出す。ちょうど良い具合に冷えていた。
「では、まず冷えたスポンジケーキを横から、半分ないし3等分に切る」
莉奈はパンを切る用の細長い包丁を使って、スポンジケーキを2等分に切った。
「え? 難しいな」
リック料理長は言われた通りにスポンジケーキを切っていたが、途中から斜めになっていた。
「難しいなら、スポンジを挟む様に薄いバットを置いて、包丁をそれに沿う様に切ると上手くいくよ」
そうすれば包丁は上下にブレにくい。
まぁ、家では釣り糸で切ってたけど。
「「「そういう事は早く言って〜っ!?」」」
真似をして切り始めていた料理人達から、悲しい声が聞こえた。
チラッと見たら、ガタガタな上に斜めになっていた。莉奈はそれが面白くて、思わず笑ってしまった。
「スポンジケーキに生クリームを塗って、好きな果物をのせる。で、生クリームをまた塗る。スポンジケーキで挟む」
皆はスポンジケーキを切るのに真剣だけど、一応説明しておく。
「挟み終わったら平らなお皿かバットに乗せて、周りも生クリームで塗る」
「周りも塗るのか」
「あっ、生クリーム多過ぎた。あっ、スポンジ取れた」
「え、なんかどんどん、グチャグチャになっていくんですけど!?」
慣れない作業で皆は四苦八苦していた。
多過ぎた生クリームを取ろうとしたら、スポンジケーキの部分も剥ぎ取ってしまったり、綺麗にしようとしている内にグチャグチャになったりしている様だ。
「最後に、上を生クリームや果物で可愛く飾り付ければ、デコレーションケーキの完成です」
絞り袋はないからスプーンですくって乗せて、その上に半分に切ったブラックベリーを飾った。
だって、ブラックベリーは普通の苺より大きいんだもん。
これだけだと定番の苺のショートケーキだけど、せっかく色々な果物があるから、その中心に少しだけククベリーと小さく切ったヨウマンゴーをパラパラと飾ってみた。
我ながら可愛く出来たと思う。
「何それ〜っ!?」
「すっごい可愛いんだけど!?」
「見てよ。私のなんかめっちゃグチャグチャだし。リナチェンジ!!」
生クリームを丁寧に塗らなかったせいか、ケーキが何故か斜めだし、センスがないから飾り付けが汚いしで、皆は莉奈との雲泥の差に嘆いていた。
莉奈はそんな皆を生暖かい目で見ながら、ケーキがダレない様にもう一度冷やしておく事にした。
ついでに生クリームを一口大くらいスプーンで掬い、バットに何個か載せて凍らせておく。
「生クリームだけで何してるんだい?」
デコレーションで騒いでいる皆を横目に、リック料理長は冷静に莉奈の行動を見ていたらしい。
「凍らした生クリームを紅茶に乗せたり、後は焼きたてのパンに乗せて蜂蜜かけて食べると美味しいよ?」
どちらかといえば、メープルシロップの方が好みだけど。
「ヨシ、余った生クリームは凍らせとくぞ!!」
「「「オーッ!!」」」
聞いていた皆は、なんだか変なスイッチが入ったのか、歓喜に沸いていた。
ちなみにこれを、朝食とかオヤツに良く食べていた……から、太ったんだけどとは言わない。
最強は、ツナマヨネーズにチーズをたっぷり乗せて焼いたパンだけど。めっちゃ太るよね〜。太ったよね〜?
アハハ……皆、心ゆくまで太るがイイ!!
「リナ」
隣にいたリック料理長が、莉奈の不気味な笑いを見て顔を引き攣らせていたのだった。




