↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

297/722

297 王宮でのんびりご飯を……作ることができない



「まぁ、イイ。とりあえず、この肉はブラッドバッファローでイイんだな?」

 結局、余計な事を言ったせいだと睨まれたけれど、フェリクス王はため息を吐いて話を戻してくれた。

「はい。【鑑定】でそう出ました」

 アンナには何度訊いても、黒牛としか言わなかったけどね。

「……」

 莉奈がそう答えれば、フェリクス王は顎に手を置いて何やら考え込んでいた。

「フェル兄?」

 エギエディルス皇子がどうしたのだと、訊いた。

「色々な魔物が食えるのはイイが、すぐにでも法の改正と規制を張らねぇと厄介になるな」

「あ〜そっか。金になるから無法地帯になる」

「イベール、シュゼルが……帰城しているハズだ。ヴィルとゲオルグをここへ呼べ、法の改正と規制対象の変更、その他諸々を早急に決める」

「御意に」

 ロックバードは食肉として抵抗があるのか、高価だからなのか、まだ一般には浸透してはいない。物珍しさもあって金持ちの贅沢品、珍味品扱いされていた。

 だが、他の魔物までもが食肉になると、話は別だ。食肉が増えれば、当然価格の下落が起きる。それだけに変更すべき点が色々とある。

 基本的には武器や防具、装飾品になる様な魔物は軍を除き、正式な許可を得た冒険者が狩っている。例外的に害敵として、緊急時は冒険者ではなくとも狩り獲れる制度がある。


 だが、この制度を悪用して許可のない者共が、魔物を狩り獲り闇取引しているのも事実である。肉まで食用になり金になるとなれば、許可のない魔物の肉まで出始める事になる。

 人体に影響がないのかすべてが謎のまま、出荷されてからでは遅いのである。それでも、闇市場に訳の分からない魔物の肉まで売買されてしまうだろう。

 そのためにも、強い規制を張り厳密にして、早急に罰せるようにしておく必要があるのだ。

 


「リナ」

「はい」

「しばらく、眼を酷使する事になる。悪いが覚悟しておけ」

「……」

 フェリクス王にそう言われ、莉奈は頬が引き攣ってしまった。

 こうなってしまったのは、自業自得感はある。だが、しばらく色々な魔物の死骸を見る事になる訳だ。ハイ、喜んで! とは言えない。

「あの」

「何だ?」

「鑑定するのは全然構いませんが、グチャグチャとかドロドロ系はなるべく遠慮したいな〜なんて?」

 莉奈はおずおずと一応断りを入れた。

 だって、狩り獲ってくる訳だから、キレイな姿な方が珍しい。

 何かお腹から出てたりして、グロいのは勘弁願いたい。

「考えておこう」

 フェリクス王は面白そうに笑った。

 度胸のある莉奈が、そんなしおらしい素振りを見せたのが、愉しくて仕方がないらしい。

「いやいやいや、"考えておく" じゃなくて、是非とも配慮する方向でお願いします」

 考えたけどダメでしたでは困るのだ。

 面白そうにしているフェリクス兄弟に、莉奈はしっかりハッキリ強く言ったのであった。




 ◇◇◇




「リナ。お腹が空きました」

 莉奈が厨房に戻ると、食堂のイスにシュゼル皇子がちょこんと座っていた。

 リック料理長達が酷く緊張しながら厨房から覗く姿が見えたけど、そんなのお構いなしとばかりに優雅に紅茶を飲んでいる。

 魔竜討伐から、無事に帰って来た様だ。魔竜を無傷でしかもこんなに早く倒せるなんて、この穏やかな外見からは全く想像もつかない。



 ……あれ? 



 そういえばさっきフェリクス王が、シュゼル皇子が帰って来ているから、執務室によこせ的な事を言ってなかったっけ?



「あの、陛下には帰城のご報告とか……」

 いつからいるのか知らないけど、帰城しているから寄越す様にと言っていたのだから、報告はしていない気がする。

「お腹を満たしてから行きますよ?」

「先の方が宜しいかと」

「私は今、アイスクリームが食べたいです」

 シュゼル皇子は、ほのほのとしていた。

 


 いやいや、報告が先でしょう!?



 莉奈が呆れていると、入り口から無表情の執事長が現れた。

 あ、そうだ。

 フェリクス王はさっき、呼べと言っていた。だから、来たのだろう。

「シュゼル殿下。陛下がお呼びです」

「アイスクリームを食べたら行きます」

「ご報告の後でもーー」

「リナ、ククベリーのソースを添えて下さい」

 執事長(イベール)がやんわりと催促しているのに、シュゼル皇子はほのほのと、話をスルーしてアイスクリームを要求していた。

 出すとも言っていないのに、なんか要望が増えているし。




 ――グウォォォーーッ!!


 


 そんな時、どこかで何かの咆哮が聞こえた。

 まぁ、何かって白竜宮にいる竜だと思うけど。

 誰の竜がなんで咆哮を上げているのやら。ただでさえビクビクしているのに、さらに料理人達が怯え始めているよ。

 あの声がうちの子ではないと信じたいけど。まだ咆哮だけで判断出来る程の付き合いはないしね。

 しかしたまには、王宮でのんびりご飯を作らせてもらえませんかね?



「リナ、どちらへ?」

 皆が竜の咆哮に一瞬気が逸れた隙に、逃げようとした莉奈。

 バレないハズもなく、シュゼル皇子の笑顔に莉奈は捕まった。だから、莉奈は仕方なく説得してみる事にした。

「あの、シュゼル殿下」

「なんでしょう?」

「アイスクリームは逃げませんので、先に陛下にご報告をなさった方が……」

「ふふっ。それを言うなら兄上も逃げませんよ?」

 とニコリ。

 ダメだ。話が通じない。

 莉奈は天を仰いだ。弟だったら早く行けって頭を叩くのに……。




 ドスーーーーッン!!




 シュゼル皇子との妙な攻防をしているとーー



 突如窓の外側から隕石でも落下してきた様な音と、地響きに似た振動が全身に駆け巡った。

 一体何が起きたのか、さっぱりである。

 身体はビリビリとはしたものの皆の鼓膜と、窓ガラスは辛うじて無事だった。




「リーーナーーッ!!」




 いや、まったく無事ではなかった。

 次に起きた咆哮に似た低い声に耐えられず、窓ガラスがパリンと小気味イイ音を放ち一斉に割れた。

 この間、修復したばかりなのに、また割れたのだ。なんなら、一部の壁もボロボロに壊れて向こう側が見える。



 突然のこの惨状に、常に冷静で無表情の執事長イベールでさえ、珍しく瞠目している。

 イベールでさえこうなのだから、当然厨房の皆は恐慌に堪えられず、泡を噴いてバタバタと倒れはじめたけど。



 穏やかで静かな、生活はないのかな?

 なんでこんなに騒がしいのだろう。

 王宮でのんびりした生活を下さい。



 莉奈は気絶しない自分のメンタルを、一人嘆いていたのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。