表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

276/676

276 リナは意外と……。 



 しかし、武器や防具が色々とある。

 剣だけでも、短剣や長剣と様々で何十種類とあるだろう。日本の自分の部屋に飾ってある短剣と、同じ形の武器もある。ポピュラーな形なのかもしれない。

「さっきからダガーやショートソードばかり見てるけど、興味があるの?」

 少し驚いている様子の店主ことアーシェスが、ゆっくりと歩み寄って来た。

 興味本位にしろ何にしろ、女性がこんなに瞳をキラキラさせて、武器や防具に魅入っているのを初めて見たのだ。

 連れのフェリクス王に合わせて、仕方なく見ているフリをしているのではと思ったが全然違った。本気で莉奈自身が興味があるのが見てとれた。


「似たのが家にありますからね」

 武器に集中しきっていた莉奈は、思わずポロリと漏らした。

 レプリカと比べると、やっぱり本物の方が断然精巧で綺麗だと思う。芸術品として飾る理由も分かるなと、ため息が漏れた。



「家にあるのかよ?」

「は? やっぱり護衛なの!?」

 何も知らないフェリクス王と店主は、莉奈の言葉を聞き瞠目していた。

 護衛ではないと言った莉奈の家に、何故武器があるのか。やはり、タダ者ではないのかと店主アーシェスは一瞬思い、頭を振った。

 タダ者でないのなら、同行しているフェリクス王が知らない訳がないからだ。なのに彼も同様に驚いている。さっぱりと分からない。



「あ、えっと。レプリカですけど」

 本物ではないですよ? と強調する。

 あっちの世界にしろ、こっちの世界にしろ、普通の一般家庭に短剣は飾ってある訳がない。その事に驚かれているとやっと気付いた莉奈は、返答がしどろモドロになっていた。


「……」

 それを聞いたフェリクス王はさらに瞠目していた。

 レプリカにしろ武器まで持っているとは思わなかったのだ。何ヵ月か一緒にいて、莉奈を知ったつもりでいたが、まだまだ序の口だったと改めて感じたのである。



「ねぇ。あなたが持つなら短剣より、こっちのダガーの方がイイと思うわよ?」

 お飾りとしての興味でないと分かった店主は、莉奈にダガーを勧めた。

 短剣より少し短い、だがナイフよりは長い20cm程の剣である。


「持つ予定はありませんけど……使いやすそうですね」

 勧められたダガーを持てば、莉奈の掌に柄がピッタリと収まった。慣れないから重さはかなりある様に感じるけど、包丁を持つ様に手に馴染んで持ちやすい。

「ちなみにですけど、ナイフやダガー、短剣の違いって何ですか?」

 莉奈は見ている内に疑問が湧いたので、素直に訊いてみた。

 当然、刃の形や柄の形は各々違うけど、ダガーと短剣では同じ装飾で変わりのない物もある。ナイフとダガーなんて素人が一見したら、まったく違いが分からないのだ。

「……」

 アーシェスは少しだけ驚き、小さく笑っていた。

 この年齢の少女が、武器の事を本気で知りたいと思っている。それが、なんだか珍しくて可愛らしいなと思ったからだった。



「厳密な定義はねぇが、基本的に "ダガー" は刃渡り30cm以下。それ以上のを短剣、ショートソード」

 アーシェスが莉奈に興味を持ったのを、なんとなく察したフェリクス王が説明に入った。

 自分でも正直良く分からない。だが、初めて会ったアーシェスに興味を持たれるのが、少し気に入らなかったのだ。

「ダガーとナイフの決定的な違いは、刃の厚さだ。ナイフの刃よりダガーの刃の方が少し厚くなっている」

「あっ、本当だ」

 ダガーや短剣等を手に違いを詳しく聞き、莉奈は大きく頷いた。

 言われてみれば、短剣とダガーでは長さが違う。ナイフとダガーは長さは変わらないが、確かに比べると刃の厚みが違った。

 ナイフの刃は数ミリと薄く、ダガーは剣の様に厚めの刃をしているとの事だった。明確な決まりはなく、造り手の意向で名が付く事も多いそうだ。

 普段聞かない話を色々と教えてもらい、莉奈は楽しくて仕方がなかった。



「あなた……面白いわね?」

 そんな莉奈を見ていたアーシェスは、久々の感覚を思い出していた。

 冗談でなく武器の話を真面目に、そして楽しそうな莉奈を見ていたアーシェスは、ますます興味を惹かれたのだ。

 フェリクス王と初めて逢った時も、こんなワクワクとした感覚だったな……と。

「……はぁ? どうも?」

 自分の事を「面白いね」と言われても全然嬉しくない莉奈は、複雑な表情である。

 どうして、どいつもこいつも "面白い" とか言うのかな?

 


「アハハ!!」

 莉奈のそっけない返事に、アーシェスはますます面白いと笑い始めていた。

 自分にここまで興味のない人間は初めてだったのだ。

 恵まれた容姿のおかげか、もれなく男も女もすり寄ってきた。興味を持つのが普通だったのだ。

 

 だから、自分にすり寄る女性がウザったいのと、武器に興味もない恋人を連れて来るから、この店は自然と女人禁制となっていた。

 フェリクス王も所詮そんな輩に成り下がったかと、初めはガッカリとしていたが、蓋を開けて見ればまったく違った。

 "普通じゃない" と言った彼の意味が良く分かる。


 自分にすり寄らないのもそうだし、武器に興味のある事にも驚いた。そして何より、自分の奇抜な服装や口調を聞いても、嫌な顔や変な表情を一切しなかったのだ。

 莉奈の瞳は、異質や奇妙なモノを見る好奇な目でなく、自身の姿をすんなり受け入れてくれた目だった。

 それが、アーシェスにはものスゴく心地良かったのだ。




 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ