266 特別!?
莉奈は確信した。
ジュリアは確実にゲオルグを食べた人であると……。
「ハハハ。ジュリアは大袈裟だな。ゲオルグが浮気なんかする訳がない」
1度姿を消したビクトール侯爵が、幼い子供を抱きながらやって来た。
クリクリした大きな瞳で赤茶色の髪の、可愛い子だ。雰囲気からして、ゲオルグの愛娘ロッテだと思う。
「義父様。それは分かりませんわ。だって―――」
困った様にビクトール侯爵をチラリと見て、ジュリアは言った。
「だって?」
「お義父様の息子ですもの」
「……」
ジュリアのイイ笑顔にビクトール侯爵は、次の言葉を飲み込み固まった。
「……」
その様子を見てしまった莉奈も、もれなく固まっていた。
だってビクトール侯爵、反論するどころか目が泳いでるんだもん。
「そ、そうだ。私は仕事が残っていたな、うん。リナ君、ゆっくりしていきたまえ」
ビクトール侯爵はバツが悪いのか、ジュリアからの圧の籠った視線に耐えきれなかったのか、ハハハッと笑った。
そして、渇いた笑い声で誤魔化すと、ロッテをジュリアに預け、足早に出て行ったのである。
ジュリアさんにタジタジだな。ビクトール侯爵も……。
莉奈は呆気に取られつつ、その背を見送った。
「コレ。預かっておいて貰えますよね?」
娘のロッテを抱いたジュリアが莉奈の向かいに座り、例のナイフを滑らせてきた。
「……え? いや」
子供の前でなんてモノを出しているのかな?
なんだろう。背中から脂汗が出てきたよ。
「イヤ?」
「あ、預からせて頂きます!」
有無を言わせない圧に莉奈は屈した。
だって、命は大切だからね。
◇◇◇
怖くて話が弾む訳がないと思っていたけど、ゲオルグ師団長さえ関わらなければ、ジュリアは至って普通の奥様だった。
話を聞いていると、ゲオルグ師団長の実父ビクトール侯爵は、中々の女好きで有名だった様である。
現在、王族以外は一夫一妻制ではあるけど、数年前までは一夫多妻制だったみたいで、ビクトール侯爵も当然の如く多妻。
それを知っているジュリアは、気が気でないらしい。
外見、性格、雰囲気が似ているから余計に心配な様だった。
ちなみに正妻は現在外出中。ショッピングに行っているとか。それと正妻以外の奥方は、この屋敷に住んではいない。別邸にいたり離縁したり、様々な様である。
「ところで、リナはオルちゃんとはどの様な関係で?」
―――ブフッ。
とんだとばっちりがきた。
「ど、ど、どんな関係もこんな関係も、ないですよ!?」
莉奈は、ジュリアの刺す様な目に焦りまくっていた。
身振り手振りで違うと否定する。
「ふふっ。冗談よ」
ジュリアは口を押さえて、上品そうに笑った。
「……」
冗談キツイですよ。ジュリアさん。
ホッとしたのも束の間。
「だって、リナは陛下の "特別" ですものね?」
ジュリアは特大の爆弾を投下した。
「ブッフ――――ッ!!」
莉奈はとうとう堪らず紅茶を吹き出した。
フェリクス王の "特別" ってナニ!?
「あら。大丈夫よ? この屋敷ではお義父様と、私しか知らないから」
ジュリアは思わせ振りに、ニッコリと微笑んだ。
ど、どゆこと!?
ナニを知っているのかな!?
っていうか……特別ってナニ―――ッ!?
「……」
莉奈は顔をひきつらせながら、器用に固まった。
違うと叫びたいが、そうしたらそうしたで、ではあなたはゲオルグのナニ? と追及されても困る。猛否定してもゲオルグ師団長との、ありもしない関係を疑われたら血を見そうだ。
ナイフを渡したのも、案外自分に対する牽制の様な気がしてきた。
「ロ、ロッテちゃんはおいくつなんですか?」
莉奈は、話題を変える事にした。
ジュリアの前でフェリクス王の話はしないでおこう。何か盛大な勘違いのまま、話が広がりそうだ。
「2歳になったばかりよ? ロッテ、お姉ちゃんに挨拶は?」
ジュリアは膝に座らせた愛娘を、莉奈に向けると優しくポンポンと促した。
「かりゃあげっ!」
「……」
あどけなくて可愛いロッテの口からは、挨拶とはかけ離れた言葉が出てきた。
―――可愛いなぁ。かりゃあげって。
「からあげ!」
たぶん "からあげ" だと察した莉奈は、とりあえず軽く手を挙げ挨拶を返した。
これがゲオルグ家流だと、思う事にする。
「この間までオルちゃん達、リナのからあげとチーズオムレツの話でもちきりだったから……なんだか、覚えちゃって」
ジュリアは娘の頭を撫でながら、苦笑いしていた。
食べ物の名前から、ドンドン覚えていっているらしい。そりゃあ複雑だよね? だけど、からあげは挨拶ではないよ? ロッテちゃんや。
「そういえば、オルちゃんが言っていたのだけど……家で作るからあげは、リナが作るからあげとは全然違うって呟いていたのよね。何が違うのかしら?」
娘が言ったからあげで思い出したのか、ジュリアが首を傾げた。
夫ゲオルグの言う "からあげ" を食べた事のないジュリアは、何が違うのかが良く分からないのだ。からあげは、誰が作ってもからあげではないのか? と。
「さぁ~?」
と言いつつ、エギエディルス皇子の言うところによる、カリカリ度が違うのでは? と推測する。
大量に揚げると、油の温度が一定にならないから、ベチャベチャになりがちだからね。それを補うために、2度揚げなる工程がある訳だけど……それでも中々上手く揚がらないのが、からあげのムズカシイところ。
量が少なければ低温からじっくり揚げれば、簡単に衣がカリッと揚がる。だけど……大人数向きではない。
「かりゃあげ!」
何を言っているか分からないロッテが、楽しそうな声を上げていた。手をパタパタさせていて、なんだか可愛い。
「厨房をお借りしてよろしければ、試しに私が作ってみましょうか?」
ジュリアのねだる様な瞳と、可愛いロッテにほだされた莉奈は思わず口に出していた。
ひょっとしたら、チョイチョイお世話になるかもしれないし、賄賂もかねて作ろうと考える。
「……っ! お願いします!!」
ジュリアの表情がキラキラっとした。
アハハ。ロッテちゃんに似て可愛いや。
◇感謝◇.゜+.(・∀・)゜+.゜
お読み頂きありがとうございます。
飽きっぽい作者が、正直良くここまで続いているなと本人が一番ビックリしております。
( ゜Д゜)
ブタも作者もおだてれば木に登る。
ひとえに皆様がブクマや評価で、作者をおだてにおだてまくってくれたお陰にございます。
ありがとうございます!
(ノ≧▽≦)ノ<ワッショーイ




