表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/677

255 マッシュルームのチーズ焼き 



「酒の肴ね~」

 何にしようかなと、莉奈は食料庫を漁りに行く。

 酒に合うツマミって、基本的に味は濃いめで、塩辛いイメージしかない。じゃなきゃ揚げ物。酒にサラダはあまり作らない。

「あっ、キノコがある」

 莉奈は、木の箱に並んで入っている、キノコを見つけた。

 見た目は軸が短く、笠は丸めの真っ白い、1口サイズのキノコ。パッと見だけなら、マッシュルームに見える。





 【マッシロマッシュルーム】

 適度な湿気があれば、どこにでも生えてくる。


 〈用途〉

 マックロマッシュルームより、香りが少なく万人受けするキノコ。栽培しやすい。


 〈その他〉

 食用である。



 マッシロマッシュルーム。まんまだね。

 マックロマッシュルームもあるのかよ。

 莉奈はマッシュルームを見ながら、1人でツッコミを入れていた。

「マッシュルームを使うのか?」

 異様な圧を感じると思ったら、背後にゲオルグ師団長がいた。

 それなりに広い食料庫も、プロレスラーも真っ青なデカさの彼が入って来たら狭く感じる。

「奥さんマッシュルーム大丈夫?」

 作ったところで苦手なら、ガッカリだしね。

「大好物だ」

 そう言ってニカッと笑うゲオルグ。

 本当に奥さん一筋なんだなと、ほっこりもするけど少し羨ましくもなる。これだけ愛されるのって、イイよね。

「じゃ、このマッシロマッシュルームで作りますか」

 莉奈がそう言うと、ゲオルグがマッシロマッシュルームの入っている木の箱を持ってくれた。

 ゲオルグさん、フェミニストでもあるんだよね。こりゃ食べられる……じゃない、モテる訳だ。




「これも簡単だから、ゲオルグさんも覚えて奥さんに作ってあげると、絶対に喜んでくれると思う」

「惚れ直すかな?」

「直し過ぎて気絶すると思うよ」

 嬉しそうに言うものだから、莉奈もついつい大袈裟に言ってしまった。

 なんかね、料理人達も生暖かい目で見てるんだよね。

 タール長官もゲオルグ師団長が、しっかり愛情をもって大事にしているのを知っているから、からかう程度に留めているのかもしれない。


「マッシュルームは少し泥が付いているから、濡れ布巾で軽く拭き取る」

「あっ」

 ゲオルグが莉奈の言う通りにやったら、マッシュルームが潰れ割れた。泥を落とそうとして、つい力を入れすぎた様だ。

「奥さんを触る様に、優しく触らないと~」

「いつも通りソフトに~」

「あなた、優しくしてぇ」

 いつの間にか集まった近衛師団兵達が、食堂の窓というかカウンター越しから、ヒュウヒュウとからかっていた。

「うるせぇ!」

 部下にからかわれ、睨んだゲオルグ。でも表情は少し笑っている。ゲオルグが師団長だと、実に楽しそうだ。



「リナ、泥落としたぞ?」

 何個か割れたけど、ゲオルグはマッシロマッシュルームの汚れを落とした。うん、ものスゴく大量だ。

「んじゃ、フライパンにバターを適量入れて、溶けたらマッシュルームを……」

 莉奈はチラリとゲオルグを見て、ビックリしていた。

 当然の様に1番大きいフライパンを選んだからだ。そのフライパン、パエリアを何十人分作れるの? ってぐらい大きくて、莉奈は重くて持てない。

 だが、ゲオルグは軽々と持った。それどころか、彼が持つと普通のフライパンのサイズに見える。

 莉奈は、はぁぁっと感嘆の声が思わず漏れていた。



「マッシュルームは時々ひっくり返して、まんべんなく焼き色を付ける。焼き色が付いたら塩、コショウを振りかけて、白ワインを少し振りかける」

「なるほど、ここで白ワインか」

 ゲオルグが真剣に聞きながら、作っている。

 大きなゲオルグがこじんまりと料理を作っている姿は、ギャップ萌えかもしれない。奥さんはこういう姿に、また惚れ直すに違いない。

「で、フタをして2分くらい蒸し焼きにする。最後は粉チーズと、お好みの香草をみじん切りにしてまぶし、器に盛れば出来上がり」

 簡単マッシュルームのチーズ焼き、完成である。

 焼いた白いマッシュルームが、焦げ茶色に色付いている。バターで照りも出て、実に美味しそうに仕上がった。

 香ばしいチーズと香草の香りが、厨房に充満すると皆の表情も自然と緩む。今回はローズマリーをパラパラとかけたけど、バジルやパセリでもイイ。

「「「うっまそ」」」

 チーズの匂いが堪らないのか、物欲しそうな声が聞こえた。



「まぁ、待て。味見させてやる」

 ゲオルグがいそいそと、小皿に出来たばかりの料理を盛っていた。

 どうやら、皆の分も作るために、そのフライパンを選んだみたいだ。例えこれが、奥さんのための試作だとしても、部下にスゴく優しい。

「ちなみに、白ワインに合うよ」

 莉奈は使っていた白ワインのビンを、食堂に繋がる窓、カウンターにドスンと置いた。

 もちろん赤ワインでも合うけど、目の前に白ワインがあったから渡してみた。

「「「ありがてぇ!!」」」

 そう言って、白ワイン片手に、出来立てのマッシュルームのチーズ焼きを口にする。

「アッツ! はふはふっ、うんまっ」

「マッシュルームがすげぇ、ジューシー」

「白ワインがあるから、なおイイ」

 非番の近衛師団兵達は、実に美味しそうに食べていた。

 チーズがあるから酒が進むと、次から次にとマッシュルームに手が伸びる。小皿に乗っていた料理は、すぐにペロリだ。

 もれなく、白ワインも空っぽになった。



「いやぁ、リナ。これなら、イイ奥さんになるよ~?」

「ヨシ。リナ、俺と結婚するか?」

「イヤイヤ。俺と結婚しよう!」

 酔いどれ近衛師団兵達は、ご機嫌な様子で莉奈を見て言った。

 冗談にしても、言い方が大雑把過ぎるから。

「はいはい。なら、皆と結婚しましょうかね~?」

 絶対に酔っている皆に、苦笑しかない莉奈は、適当にあしらった。

 父親が連れて来る友達も、酒の肴を作ってあげると、似た様な事を言ってきたからね。イチイチ本気に捉えていたら、キリがない。

 酔った男共は、本当に質が悪い。まったく困った人達である。



「リナ、重婚は禁止だぞ?」

 ゲオルグは莉奈の肩をポンと叩き、ニカッと笑った。

 数年前に、王族以外は禁止になったらしい。



 マジで、する訳がないじゃん。

 ゲオルグのこの笑い。本気か冗談かまったく分からなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ