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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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247 タールとゲオルグ



 【キャリオンクローラーの干し肉】

 キャリオンクローラーの心臓を乾燥させて作られた物。


 〈用途〉

 耐毒性のない生き物に食べさせると10分~30分麻痺させられる。


 〈その他〉

 噛み締めると、牛に似た味がする。

 



 【麻痺】

 長時間、正座した様な強い痺れが全身を襲う。





 ◇◇◇





「長時間、正座をした……」

 はぁ~。最悪である。しかも "強い" と強調してあるし。

 次の日の朝。あの干した肉が気になり【鑑定】し【麻痺】を検索したら、こう表記されたのだ。

 正座の痺れが全身にとは……何ていう地獄だよ。そりゃ突っつかれたゲオルグさんは悶え苦しむよね。

 タールさんは、ものスゴく幸せそうで楽しそうだったけど。




「リナ……何、その青紫の物」

 再び例の干し肉を見ていた莉奈。朝食を運びに来てくれたラナ女官長が、部屋に来て頬をひきつらせていた。

「キャリーの心臓?」

「だ……誰よソレ!?」

「人の心臓!?」

 ラナと、後から入って来た侍女のモニカが、目を見開き驚いていた。莉奈が人間の心臓を持っていると、勘違いしたらしい。

 キャリー=キャリオンクローラーだと分かるのは、一部の人間だからね。

「アハハ。違う違う。キャリ……毒の芋虫、魔物の心臓」

 キャリオンクローラーと言っても分からないと思ったので、毒の芋虫と答えた。これなら分かるハズ。

「「なんでそんな物を持っているのよ!!」」

 2人が怯えた様に叫んだ。気持ち悪いと仲良く肩を寄せて身震いしている。人のではないと分かっても、結局は怯える訳だけど。

「タールさんに頼まれて作った報酬?」

 本当は彼に全部渡したのだが、面白……じゃない。何かの時に使いなさいと、解毒薬とセットで何個かくれたのだ。

 う~ん。何かの時ってなんだろう?

 イタズラしか思い付かないのだけど……アハハ。



「タール長官の……あぁ。そう」

 それですべてを察したのか、ラナ達は疲れた様にため息を吐いていた。

 それですべてを察するって、タールはどういう人物で通っているのだろうか。

「そういえば、タールさん。ゲオルグさんの事、筋……じゃなかった。なんか嫌っている様に見えたんだけど?」

 莉奈は、ラナの出してくれる朝食を、口にしながら訊いてみた。

 聞き間違いかもしれないけれど、確かにタールさんは "筋肉ダンゴ" ってゲオルグさんに向かって呟いていたと思う。

 ラナ達なら何か知っているかなと……訊いてみた。

「あぁ。嫌っているというか、気に入らないというか」

 モニカが苦笑いしながら、口を濁していた。

「ん? どゆこと?」

 今後のために訊いておきたい。だってまた、巻き込まれる可能性があるからね。



「タール長官。10歳離れた、可愛らしい妹さんがいらっしゃるんだけど……」

「だけど?」

「一昨年、ガーネット師団長の処に、お嫁に貰われてしまわれたのよ」

 ラナが苦笑いしながら教えてくれた。

「…………あぁ……」

 莉奈は何だか、ものスゴく納得した。

 今、思い出してみれば、人間性を嫌っている感じではなくて、姑のイジメに似ていたからだ。

 歳の離れた大事な妹を盗られたら、そりゃあイジメたくもなるか。

「それにタール長官のご両親。幼い時に亡くなられてね。だから、余計に過保護になっていらして……」

 タール長官も両親を亡くしていたのは初耳だし、10も離れた妹がいたのも知らなかった。あまり、人の家族の事をペラペラ聞くのはと、今まで訊いてこなかったからだ。

 莉奈自身。不慮の事故で家族を失った経歴がある。だから、自分自身が触れて欲しくないのに、人の家庭の事を根掘り葉掘り聞くのは、どうしても出来ない。



「と、いうより。原因は……」

 とまだ何かあるのか、モニカはチラリとラナを見た。

「 "出来ちゃった結婚" なのよ」

 ラナはため息と苦笑いを漏らしながら、教えくれた。

「あ~」

 莉奈はなんともいえない表情で笑った。

 日本だって出来ちゃった結婚を、良くは思わない人は多くいる。なのに、まだまだ古い風習や習慣もあるこの世界。

 貴族なら尚更あり得ない話らしい。結婚が先。赤子は後なのだ。

 それを知ったタール長官は、ゲオルグ師団長を殺さんばかりに、彼に最大級の魔法を放とうと暴れたらしい。



「ゲオルグさん……」

 莉奈はため息を吐いた。

 男女の関係のアレやコレに、口を出すつもりはないけど……。タール長官の妹と知っていたのなら、結婚までガマンして欲しい。

 



 莉奈の考えている事が分かったのか、2人が顔を見合わせていた。

「まぁ。でも、師団長もかなり頑張ったのよ?」

「でも……ねぇ? 毎夜の様に夜這いに来られたら、男は据え膳食わねば何とやらなんじゃないかな?」

 ゲオルグを庇う訳ではないけど……と、ラナとモニカが苦笑いしながら追加情報をくれた。



「……」

 うっわ。タールさんの妹。まさかの超肉食系女子ですか。

 あ~ぁ。ゲオルグさん……。

 侍女だったタールの妹は、王宮で見かけたゲオルグ師団長をロックオン……じゃなかった。一目惚れ。そして独身だと聞くや否や、あの手この手と超がいっぱい付くほど積極的に、あのゲオルグを落としに掛かったそうである。


 硬派で通っていたゲオルグも、とうとう食べ……ゴホン。

 ほだされ妹さんと、結婚する事になったそうだ。



 莉奈はさらになんとも言えなくなった。どう言ってイイのかも分からない。ゲオルグは悪くない。だけど、タールの気持ちも分かる気がする。

 だから莉奈は、もう何も返答はせず、ただラナの用意してくれた朝食を無言で食べるのであった。 





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