表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

244/676

244 アナコンダ? 



「ところで、何故ここに?」

 莉奈が頭を撫でられて、怖がっているのを知っていたかはさておき、撫でる手を止めシュゼル皇子が尋ねた。

 最終的に、アメリアの件で弟がふて腐れ、兄に連れて行かれたのだが……自分に会いに来た訳でもなく、竜を見に来た訳でもなさそうだったからだ。

「あ~え~と」

 頭を撫でられた恐怖で、すっかり目的を忘れてしまっていた莉奈。慌てた様にガサゴソと魔法鞄(マジックバッグ)を漁った。

「生キャラメルを作って――――」

「ありがとうございます!!」

 シュゼル皇子はグイグイと、ものスゴい食い気味に笑顔で答えた。相変わらず最後まで、話をさせてもくれない。

 作れない事になったら……本当にどうなるのかが怖い。



「なんだか、可愛らしいですね」

 ビンの中には、キャンディ包みをした生キャラメルが、10ヶずつ入っている。

 ノーマル、ビター、マーブル……そして塩である。チョコレートがあればチョコレート味も出来るのだが、ヤヤコシイ事になりかねないので口をつぐむ。

「生キャラメルは溶けやすいので、油紙で包んであります」

「ノーマル……ビター……色々な種類があるのですね?」

 ビンの側面に紙を貼り付けておいたから、それに気付いて見た様だ。種類別に書いておいたからね。

「そうなんですよ。あっ! ゲオルグさんもどうぞ」

 廊下の隅で待機していた、近衛師団長のゲオルグを呼んだ。

 他にも色々と種類があるのかと聞かれたりしたら、このままだと余計な事をポロリと口から滑りそうだった。

 チョコレート、抹茶、ヨーグルト……生キャラメルの種類は実に豊富にある。好みでいうなら、ノーマルか抹茶だけど。

 チョコレートの原料のカカオでもあの騒ぎなのに、抹茶とか言ったら地獄を見そうだ。

 でも……緑茶は飲みたいので、そのうちワザと口を滑らせようと莉奈はほくそ笑む。

 だって、この世界に紅茶はあるのだから、同じ茶葉から作る緑茶も烏龍茶もあると思う。この国にはなさそうだけど、どこかの国にはあるのかもしれない。

 製造方法は知っているから、教えて作って貰う事も出来るけど……先にお手本を見せるのが面倒くさい。発酵やら手揉みやら乾燥やら、やる事が山程あるからね。



「私の分もあるのか!! よし、ポーションをあげよう」

「なんでだよ」

 そんな事を考えていたら、ゲオルグ師団長が莉奈の手にポーションを載せた。

 どうやら、生キャラメルの代わりという事らしい。何故この人はポーションをあげたがるのだろう。貰って損はないからいいけど……。

「んん~!!」

 ではさっそくと、生キャラメルを口に放り込んだシュゼル皇子が、口を押さえた。

 口に入れると、口の中の体温ですぐに溶け出す生キャラメルに驚き、つい溢れないかと口を咄嗟に押さえた様だ。

「で……殿下!?」

 莉奈が毒を入れた訳ではないのは百も承知だが、シュゼル皇子が慌てて口を押さえたので、ゲオルグ師団長は驚いて声を上げてしまった。



「な……なんですか。コレ!!」

 それが、生キャラメルですよ? と莉奈は笑う。

「口に入れた途端に美味しさが広がって……アイスクリームとは違うこの不思議な口溶け……はぁぁ」

 シュゼル皇子は、ものスゴく気に入ったのか、ほぉと惚け瞳がキラキラとしていた。

 そこまで喜んでくれたのなら、作った甲斐もあるというもの、だからついつい口がするりと滑らかに動いてしまった。

「ですよね~。コレ、クリーム状にしてア……」

 アイスクリームにかけると……と言いかけてグッと口を閉じた。

 口は滑らさんと、つい先程誓ったハズなのに、何故また口を滑らせてしまった。

 仕方がないよね? 気付いたら口が動いていたのだから。

「ア?」

 なんですか? と、キラキラして惚けていたシュゼル皇子が、聞き逃す訳がなく莉奈をロックオン。莉奈は空笑いが漏れ、脂汗が流れていた。

 そして、動揺しまくった莉奈は、さらに余計な言葉が口から漏れた。



「ア、アナコンダに付けて食べると美味しい?」

「「「………………へ?」」」

 たまたま通りかかった近衛師団兵も、思わずその足を止めて莉奈を見た。莉奈は今、何か変な事を言わなかったか……と。

「「……は?」」

 シュゼル、ゲオルグも目が点である。聞き間違いかと、互いをチラリと見ていた。

 

 そして通りかかったすべての人達と、シュゼル皇子、ゲオルグが再び、莉奈を見て口を揃えこう言った。

「「「「「アナ……コンダ?」」」」」




「……」

 莉奈、無言である。




 アハハ…… "アナコンダ"

 ナゼ、よりにもよって "アナコンダ" をチョイスしたかな私?

 生キャラメルをアナコンダにかけるって、何なんだよ!!




「……ぷっ」

 そんな妙な沈黙は、シュゼル皇子が吹き出した事で破れた。

「リナ?」

 それで思考が戻ったゲオルグが、どういう事なのだと莉奈に問う。

 すみませんが問われたところで、答えなどないのだから……皆さん見ないでくれるかな?



「それ……」

「「「それ……?」」」

「アナコンダに付けて食べてね――――っ!!」

 もうどうにもならないと諦めた莉奈は、そう叫んで脱兎の如く走り出していた。

 こういう時は逃げるに限る。最悪だよ。最悪!!

 アナコンダに生キャラメルを付けて食べるなんて事、あって堪るか―――っ!!

 穴があったら入りた――い!! 

 


「「「どういう事なんだよ、リナ―――っ!?」」」

 近衛師団兵の皆の、驚く様な声が背中に響く。



「プッ……アナコンダに……生キャラメル」

 シュゼル皇子は言い逃げした莉奈を見て、堪らずお腹を抱え笑っていた。

 莉奈が、何を言いかけていたのかは分からない。だが、そんな事より言い訳が面白過ぎる。強大な蛇に、生キャラメルをかけて食べるとは、予想もつかない答えだった。

「アナコンダに……」

 近衛師団兵達は、生キャラメルが分からない。……が、強大な蛇、アナコンダに、何かソース的なモノをかけるのかと想像する。

 


「ど……どういう意味なんだ?」

「蛇にソースって事?」

「え? リナは蛇を食うのか!?」

「そもそも、生キャラメルって何?」

「「「っていうか、アナコンダって食えるのかよ!?」」」

 近衛師団兵達はざわめきを隠せず、ボソボソと口を開いた。そして、一様に顔を見合わせ眉を思いっきり寄せた。

 そして、皆は思った。莉奈は竜達の言う通り、何でも食らう人間なのかもしれない……と。

 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ