241 キャラメル風味のホットミルク
「ビターもホイ」
莉奈は初めての生キャラメルに、感動しているエギエディルス皇子にビター味も掬って渡した。
少しほろ苦いビターの生キャラメル。これまた、お先に口に入れさせて貰ったけど、カラメルに似た苦味が堪らない。
「んん~っ!! ほろ苦くてうまっ! これも旨い」
エギエディルス皇子は生キャラメルが、口からとろけ出そうになり慌てて口を押さえていた。
人肌で溶ける生キャラメルは、口の中だとすぐ液体になるからね。話をしていたら溢れてしまう。
「生キャラメル美味しいよね~」
莉奈はそう笑いながら、まだまだこびりついている鍋に牛乳を注いでいた。
スプーンで掬うにしても限界がある。ゴムベラでもあれば、もう少しキレイにこそげるだろうけど、家でやってたみたいに牛乳に溶かしてしまおうと考えた。だって、もったいないから。
キャラメル風味のホットミルク。温めた牛乳はキライな弟も、これは好きだったんだよね。
「リナはすぐ……牛乳を入れたがる」
背後からボソリと声が聞こえた。
莉奈は眉をひそめ背後を見たが、誰だか分からなかった。だが、声には聞き覚えがある。絶対に侍女のモニカに違いない。
牛乳キライな彼女は、牛乳が出るたびに何かしら文句を言っているからだ。
「リナ。牛乳を入れてどうするんだ?」
モニカを睨んでいたら、何も知らないエギエディルス皇子が興味深そうに鍋を覗いていた。
「キャラメル風味のホットミルクが出来るよ。エドはホットミルク平気?」
モニカはともかくとして、エドはどうかな? と訊いてみた。
「膜が好きじゃない」
と口を尖らせた。アハハ……弟と同じ事を言ってるよ。
"膜" とは温めた牛乳の表面が空気に触れて張る、あのタンパク質の膜の事だろう。
何その表情。可愛い過ぎるんだけど。
莉奈はそんな仕草を見せた皇子に、1人萌え萌えしていた。
同じ現象を利用して作る "湯葉" はいいのに、なんで牛乳の膜はあんなに気持ちが悪いんだろう。栄養分はあるから食べろって言われても、ノーサンキューだよね。
ちなみにあの膜が出来る現象。"ラムスデン現象" とかカッコいいネーミングがついてるんだよ。気持ち悪いのに……。
「確かに膜は、なんか気持ち悪いよね」
「私もアレ大っ嫌い」
エギエディルス皇子に訊いたつもりなのに、モニカが呟いていた。やっぱりさっきの呟きは、モニカに違いないと確信する。
バッと振り向けば、モニカがそっぽを向いた。やはり彼女である。
「試しに少し飲んでみて、大丈夫ならマグカップに注いであげる」
とりあえず、興味がありそうだから味見から始めればイイ。
鍋に残った生キャラメルを、牛乳で溶かしながら温めると出来上がりなのですぐ出来た。
莉奈は味見用にと、小さいカップに注いで渡してあげる。自分はガッツリ、マグカップに注ぐけどね。
「アッツ……ん。甘くてうっまっ! ホットミルクは好きじゃないけど、俺コレ好き」
温かいミルクセーキみたいなモノ。エギエディルス皇子は甘いホットミルクは大丈夫の様だった。
「「「……」」」
スプーンで味見した組の、妬ましい様な熱視線が刺さる。
スプーンで、なんなら最後はリリアン辺りが指でキレイに掬い取った鍋は、ピカピカで何も残ってはいなかった。
莉奈は、そんな視線をガン無視していた。だって、ピカピカになるまで食べるからいけないのだ。
◇◇◇
魔法で冷やした生キャラメルは、1cmくらいの正方形に切り分けて、油紙で1個ずつ包んだ。
ここにいた侍女達を総動員で……っていっても5人くらいだけど。
「少ない……」
小さくカットされた生キャラメルを見て、モニカ達が悲しそうな顔をしていたけど……。作った生キャラメルを、ノーマル、ビター、マーブル、塩と4種類、貰えるだけラッキーだと思う。
だって、皆が締め出したから、後から来る人達はこの小さいのを1個だもん。
「んじゃ。シュゼル殿下に渡しに行きますか」
莉奈は気合いを入れて厨房を後にした。
もちろん、白竜宮の人達にもあげるよ。
莉奈の新しい魔法鞄には、今大量の生キャラメルが入っている。恨めしそうに見るモニカやリリアンに、背後から襲われない様に注意しなければ。狩人みたいな目を向けているからね。
◇作者のつぶやき◇
誤字、脱字の報告、ありがとうございます。
作者からしたら報告するにも、少し勇気のある行動だと思うので感謝しかありません。
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