235 自爆…そして自滅
「 "キャラメル" と "チョコレート" というのは何でしょうか?」
莉奈が目を見開き固まった事など、無視しまくりのシュゼル皇子。
自分の興味が満たされるまで、莉奈を逃がさない微笑みである。
ダラダラと脂汗を流す莉奈。満面の笑みで捕まえるシュゼル皇子。どう考えても分が悪い。
「私……そんな事、言いましたっけ?」
今さらだが、一応とぼけてみる。
「ココにいる全員が、耳にしていたと思いますが?」
なんなら訊いてみましょうか? とニッコリ微笑むシュゼル皇子。多勢に無勢……勝てる気がしない。
「……そ……うですね」
キャラメルもチョコレートも面倒くさいから、嫌なんですけど。逃げられそうにない。
「リナ」
シュゼル皇子の輝く様な笑顔が突き刺さる。
仕方がない。適当に説明しようと、腹を決めた。
「キャラメルとは、キャラメル男爵の髪の色が黄土色だった事から、黄土色をキャラメルと言う様になったとか……?」
「なったとか?」
ニコリと微笑むシュゼル皇子。だが、目が笑ってる様に見えない。莉奈のくだらないウソなんて、通じる訳がないのだ。
「半歩、その話を譲ったとして。黄土色の髪なんて大勢いますよね? 何故キャラメル男爵の髪色だけが注目され、言葉になったのでしょう?」
「……ハ」
「ハ?」
「ハゲ散らかしてたからです!!」
「は?」
自信満々に言ってみせた莉奈に、シュゼル皇子は目が点である。
エギエディルス皇子は、莉奈の言い訳が酷すぎて吹き出していた。厨房でも、クスクスと堪えきれない笑いが漏れていた。
ハゲでも酷すぎるのに、ハゲ散らかす必要がドコにある?
「見事な黄土色の髪だったキャラメル男爵は、ハゲ散らかしていたので、いつの日か、黄土色の髪はキャラメルとからかう様に」
イヤイヤイヤ。私はマジメに何を言っているかな?
「ふふっ……。それはそれは、可哀想に……ところでチョコレートとは?」
半歩しか譲ってない辺り、信じている気配はゼロのシュゼル皇子は、さらに良い笑みを浮かべチョコレートの話も訊いてきた。面白がっているに違いない。
「チャ……チャコレート皇帝が、いつも焦げ茶色の服を着ていたので、焦げ茶色の事をチャコレートと呼んでいたのが、次第にチュコレート、チョコレートと変わって……いって」
だ――っ!! もう、何を言っているのかな自分!! チャチュチョって三段活用かよ!! 口が止まらな~い。
「なるほど? チャコレート皇帝はいつも焦げ茶色の服を。では皇帝は何故、いつも焦げ茶色の服をお召しに?」
シュゼル皇子は一向に引いてくれない。例えそれが嘘の話だろうと、本当の話だろうと。
「コゲチャイロガスキダカラ」
――――終わった。
アハハ……自分でも信じないよ。こんな言い訳。
「リナ……もう、諦めろ」
エギエディルス皇子は、莉奈の肩を笑いながらポンと叩いた。
子供でも騙せない様な言い訳をした処で、兄シュゼルをどうこう出来る訳がないのだ。
さっさと腹を括って、観念した方がイイ。
「ヤダよ!! 諦めるも何も、チョコレートは作るのが面倒くさいんだよ!!」
莉奈はとうとう本音を叫んだ。半ばブチキレたともいう。
「カカオ豆をローストして、石臼でアホみたいにゴリゴリゴリゴリ、そこからバターだの砂糖だの混ぜたり……拷問だよ拷問!!」
テレビで見た作り方なんて、カカオ豆を石臼で半日以上掛けて粉にしていた。バレンタインデーの手作りチョコなんて、ただのリメイク。
本気の手作りチョコレートなんか、血ヘドを吐いて作るモノだ。バレンタインデーなんかが、この世界にあるとしたら、地獄のバレンタインデーになるだろう。
「チョコレートは甘味なんですね?」
「……え?」
「キャラメルも甘味なんですか?」
「……」
「あぁぁぁァァァ―――――――っ!!!!」
莉奈、大絶叫である。
チョコレートやキャラメルとは言ったが、それがお菓子とは誰も言っていない。自分も言ってはいなかった。
なのに、今、自分でペラペラと口走ってしまった。言わなければお菓子と分からなかったのに……。なんてこったい!!
動揺が動揺を呼び、自爆してしまった莉奈だった。




