234 誤爆
「しかし、色々な果物がありますね。全部この国で採れた物ですか?」
「いいえ。輸入品が多いですね。ウチは魔法鞄があるので、他国との取引が円滑に進みやすいのですよ」
通常、馬車や船を使って輸出入しなければいけない処、この国は魔法鞄がある。
人件費、輸送費がほとんどいらない。強者に持たせれば魔物に襲われ、その荷を駄目にするリスクも少ない。質も良いままなため、高値で取り引きされる事も多いとか。
だから、安価で安定して市民に提供出来ると教えてくれた。
ただ……その輸送する強者が、絶対的に信頼出来る者でなければ、丸っと盗まれる訳だけどね。
「あぁ、そうだリナ。もう1つお土産があるんでした」
シュゼル皇子は説明してくれた後、何かを思い出した様子で腰に付いた魔法鞄を漁る。
そして、2つの革の鞄を取り出した。その鞄は手のひらサイズの小さな鞄で、キャメルとブラウンの2種類。装飾品も少なくシックな物だった。
「リナの魔法鞄はエディのお古だったでしょう? ですから、所々綻びが。それだと、鞄としての機能も良くないですからね。新しい魔法鞄を用意しました」
「え?」
「エディと色違いですが、お揃いですよ?」
容量も2倍に増やしましたからね? とシュゼル皇子はほのほのと。
マジで!?
莉奈は、目の前に出された2つの魔法鞄に釘付けだった。容量を増やして欲しいとは思ったが、まさか新しい鞄を用意してくれるとは思わなかったのだ。
「俺にもくれるのかよ!」
エギエディルス皇子も、予想外の事に喜んでいた。自分のもあるとは思わなかった。
「エディのもボロボロですからね」
と弟の頭を撫でた。キラキラとした瞳で見上げる彼が可愛らしいのだ。
「やった。リナ! 好きな方選べよ」
エギエディルスは、自分から選ぶのではなく莉奈に選択肢を与えた。自分は別にどちらでも構わないからだ。
「えぇっ!? エドから選びなよ!!」
莉奈は、あまりの嬉しさに興奮気味である。
エギエディルス皇子のお古でも、充分だったのに新しい鞄だ。自分だけの魔法鞄にテンションが上がっていた。
だって、おNewだよ、おNew!!
「俺はマジでどっちでも構わねぇから。好きな方選べよ」
エギエディルス皇子も、瞳をキラッキラッさせた莉奈に苦笑いである。
「本当!? ん~」
そう言われ、莉奈は悩む。
手渡されたのは牛革の鞄で、ウエストポーチにもショルダーバッグにもなる。いわゆる2Wayバッグ。
黄土色のキャメル。焦げ茶色のブラウン。どちらも服に合わせやすい。どちらにしようか、何度も見比べていた。
「こっちのキャラメル色は可愛くていいけど、こっちのチョコレート色も大人っぽくて捨てがたいよね~。チョコレート色の方が、体型が引き締まって見えるかな~? エド的にはキャラメル色とチョコレート色。どっちが私に似合うと思う?」
2つの鞄を腰に充てた莉奈は、結局どちらかを選べずエギエディルス皇子に訊いた。彼に決めてもらおうと。
なんだってイイ。彼が選んだ後でも、貰えるのだから。
「…………」
莉奈がニコリと笑いエギエディルス皇子を見ると、ナゼか頬をピクピクとひきつらせていた。
「ん? どうしたのエド?」
そんな表情の彼に、莉奈は疑問しか浮かばない。自分は何かおかしな事でも言ったのだろうか?
選んでイイと言った事が、そんなに可笑しい事なのか。
――――そんな時。
「リナ。 "キャラメル" と "チョコレート" とは何ですか?」
莉奈の背後から、弾ける様な声が聞こえた。
「え?」
「リ~ナ。 "キャラメル" と "チョコレート" とは何ですか?」
あぁぁァァ―――――――――――っ!!!!
莉奈は、魂が大絶叫を上げていた。
自分が今、何を言ってしまったのか気付いた莉奈は……ゆっくりと振り返った。
私は今。キャラメルとかチョコレートとか、いらん事を言っちゃったよ――――っ!!
ナゼ、そんな事言ったし!!
ぎゃーっ!!
どうしようドウシヨウどうしようドウシヨウどうしよう!!
莉奈は心の中が大パニックであった。イヤな汗しか出ない。
チラリと見れば……そこには、キラキラと輝くシュゼル皇子の笑顔があった。




