23 作ればイイじゃん!!
「……ねぇ、エド」
「……あ?」
エギエディルス皇子は莉奈に向く。
ちょっと~。シュゼル皇子…この子の躾フェリクス王に任せました?
可愛いカオが台無しって、この子のためにあるんですよ?きっと……。
「……固いパン好き?」
莉奈は唐突に訊いた。
朝、一緒に食べてて思ったんだけど、ひょっとしたらアノ固いパンは皆、実は好きなのかな……と。
「なんだよ……唐突に……」
空を見上げてたかと、思えば急にそんな事を言う莉奈に呆気である。
「ぶっちゃけ、私はあんまり好きじゃないけど、エド達は好きなのかなって…」
「……別に、俺だって好きじゃないよ。……だけど、パンなんてあぁいうもんだし仕方ないだろ?」
「仕方ない……かぁ」
やっぱり不満はあるらしい…。
……ん?…パンが固いのなら、柔らかくすればイイんじゃん?
莉奈は、ふと思った。
だって、食後にフルーツが出た時もあった。
その中に、りんごがあった。
品種改良が進んでないのか、さほど甘くはないが……酵母は作れる。
……ないなら、作ればイイんじゃない?
異世界ではあるが、お馴染みの食べ物は多い。
なら、酵母菌も見えないけど…あるハズ。
試して失敗しても、りんごが1個ダメになるだけだ。
やってみる価値はある。
「エド……このくらいのビンない?」
莉奈は、手を使って大きさを表現した。
りんごが1個入っても、少し余裕がある大きさのビン。
「……話の脈絡が、全然わかんねぇんだけど?」
パンの話をしてたかと思えば、急にビンをくれと言う。
エギエディルス皇子は、眉宇を寄せた。
……"脈絡" とか、その歳で使えるんだ……。
……さすが、皇子。
怪訝なエギエディルス皇子を余所に、一人妙な感心をしていた莉奈だった。
「……えーと。ひょっとしたら柔らかいパンが出来るかもしれないよ?」
確信めいた自信はある。
「……ビンで叩く……とか言ったらマジで怒るよ?」
「……言わないし!」
不審そうな目でこっちを見るので、強めにツッコミを入れとく。
大体、それは柔らかい違う粉々だ。
……ん? 粉々ってパン粉出来るじゃない!!
莉奈は、次々と湧くレシピに、興奮していた。
……ご飯がマズイなら、自分で作ればイイ!!
「……おい……?」
完全に、忘れ去られた存在の、エギエディルス皇子は声を掛ける。
「…………」
……が、反応はない。
意識がドコかに行ってる様だ。
「…………オイ!」
莉奈が、還ってくるまでしばらくかかったのは云うまでもなかった。
なんでも、そうですけど……初めて"酵母"を発見した人って凄いですよね。
発酵系は、自分で作る勇気が必要だなと思います。