227 みんな、からあげ好きだよね~
飾り付けが終わり、エギエディルス皇子達と白竜宮の食堂に来ている。皇子に何が食べたい? と訊いたら、間髪入れずに "からあげ" と返って来たので、からあげにした。
皆にもごちそうはするけど、そこはエギエディルス皇子中心に作るからね。
ゲオルグ師団長達も、からあげには不満はないのか賛同の声を上げていた。
みんな、からあげ好きだよね~。
エギエディルス皇子なんか、何かあるたび からあげだしね。
莉奈は笑いながら、調理に取り掛かるのであった。
◇◇◇
「んっ?」
からあげを持ってきたら、エギエディルス皇子が目を瞬いた。
好物だからという理由もあるが、いつもと少し見た目が違うからだろう。
「リナ。これナンかした!?」
そう言って嬉しそうに訊く皇子が、超可愛い。
「さてどうでしょう?」
と、莉奈は1番にからあげをパクリと頬張った。
王族どころか、目上の者より先に食べるその行為。普通だったら断罪ものである。
――カリッ。カリッ。
口にした瞬間、いつものからあげより心地好い食感が口を襲った。衣がカリッとしていて、美味しい。
その後に、襲撃するのは溢れんばかりの肉汁。旨味を逃さんとばかりに、無言になる。
「うんま~いっ!!」
莉奈に続いたエギエディルス皇子が、歓喜の声を上げた。
大好物がさらに進化して堪らないのか、あまりの美味しさに手や足をバタバタさせている。しっぽがあったら確実に振っているだろう。
「リナリナ!! 周りが違う! カリカリ度が違う!!」
「カリカリ "度" が違うのか」
莉奈は皇子の言う言葉に、思わず笑ってしまった。
カリカリ "度" なんて初めて聞いた。カリカリに度数があるらしい。そんな表現をするエギエディルス皇子に、莉奈は違う意味で手足をバタバタさせたい気分になっていた。
「いつ食べても、からあげは最高だな」
ゲオルグ師団長の口には、息を吸う様にからあげが消えていく。
大手メーカーの掃除機も驚きの吸引力である。
「周りの衣? がスゴい美味しい!!」
「チキンカツも美味しかったけど、からあげには負けるな」
「俺。3食からあげでも全然イイ!」
近衛師団の人達も、美味しい美味しいと次から次へと、皿に手が伸びていた。多めに作ったつもりだったけど、ドンドン皿からからあげが消えていく。
小麦粉をまぶして作った "からあげ" もイイけど、片栗粉もイイよね。小麦粉より衣がカリッと揚がって、堪らない美味しさだ。
「エド。タルタルソース付けても美味しいよ?」
莉奈は魔法鞄から、タルタルソースの入ったボウルを取り出し皿に分けた。その瞬間、皆の視線がタルタルソースと皇子に集まった。
「マジか!」
エギエディルス皇子は花の様に笑顔を咲かせると、タルタルソースに手を伸ばし、早速からあげにつけ口に入れた。
「はるふぁるほーす、まひはいほう」
「 "はいほう" なのか」
エギエディルス皇子が頬張りながら言うから、まったくもって何を言っているのか分からない。
たぶん「タルタルソース、マジ最高」って言っているのだと思うけど……ナニソレ。私を萌え死にさせる気か!!
莉奈は、彼が可愛いやら面白いやらで、お腹を抱えて萌えていた。
「リナ」
「どうぞ」
ゲオルグ師団長が、自分にもくれと目で訴えてきたので、有無を言わず例の木の箱を差し出してみた。
「ん? なんだ?」
「まぁ。1本引いてみて下さい」
ゲオルグ師団長は、木の箱をマジマジと見た。
何だ? と首を傾げる。だが、莉奈は説明も全くしないでやらせる事にした。赤い棒が引けたらタルタルソースはあげる。
だって、自分のタルタルソース減らしたくはないんだもん。
「引く? 棒を引けばイイのか?」
ゲオルグ師団長は、眉を寄せつつ莉奈の言う通りに棒を引いた。
――棒の先端は赤かった。
―――チッ。
「はい。タルタルソース」
内心舌打ちをしながら、莉奈は渋々タルタルソースをお裾分けしてあげた。もちろん、エギエディルス皇子よりは少なめだけど。
「リナ。私も欲しいのだけど……」
お礼を言うと、さらに加速して、からあげを吸い込むゲオルグ師団長を見た補佐官ローレンが、もの欲しそうに言った。
「はい」
もちろん、素直にあげたりしない。当たり棒を引いたらである。
「引けばイイんだな?」
莉奈には素に戻るのか、敬語を捨てたローレンが棒を引く。
――チッ。
「タルタルソースをどうぞ」
赤い棒を引いたローレン補佐官に、タルタルソースを差し出した。軍部の2勝か……。
莉奈は何故か勝手に、勝負している気分になっていた。
「わ……私も」
アメリアもおずおずと、手を挙げてきた。
こうなったら、勝負だ。莉奈は木の箱をアメリアにも差し出した。
よっしゃ~! と内心ガッツポーズ。先端は色なしだった。
「残念だったね。アメリア」
表情には出さないで言った莉奈。アメリアには悪いが、勝てて嬉しい。
対照的にアメリアはどんよりしていた。先に2人が赤い棒を引いて貰っていたから、自分も貰える気分になっていたのかもしれない。
「俺も!!」
「俺達も!!」
やるのはタダだから、当然皆も参戦してきた。
―――よっしゃ~!!
残りの皆は、色なしだった。
私のタルタルソースは守られた!!
「リナ……心の声が出てるから」
アメリアが苦笑いしていた。
どうやら皆がハズレた喜びが隠しきれず、莉奈は全身で勝利のポーズをしていたみたいだった。
「あら? 失礼しました?」
思わず立ち上がっていた莉奈は、ニコニコと着席した。
そんな正直過ぎる莉奈を見て、ハズレた皆は負けた悔しさより、苦笑いしか出なかったのであった。




