22 笑ってもイイ?
「……どうでもいいけど……エド……暇なの?」
食後の日課になりつつある散歩に、エギエディルス皇子が付いて来たからだ。
莉奈は、この国についての勉強は一応終わり。
暇な時は "鑑定" 魔法で色んな物を視るため、外に出る事が多かった。
シュゼル皇子の薦めもあって王宮にある "書庫"……規模的には図書館にも行ったりもしたが、専門的な本が多くてほとんど通ってはいない。
まぁ、絵本的な物は面白かったけどね。
それに、人気が無さすぎでイヤな事を思い出しそうだった。
静けさが……妙に怖かった。
「……別に……暇じゃないし……」
少しふて腐れた様な声を出す。
……あぁ……こういうちょっとした仕草が、弟に似てるんだ……。
だからこそ……憎めない。
「んじゃ、なんで付いて来るの?」
意地悪く言ってみる。
……本当は、わかってる。
一人にしない様に、気にかけてくれてる事を。
根は優しいイイ子だって知ってる。
でも、言わせて……だって泣きそうなんだもん……。
キミの仕草が、笑い方が、弟を思い出させる。
「…………」
「…………」
お~い、ダンマリですか~?
莉奈は、たいして背の変わらないエギエディルス皇子の顔を覗く。
「……ごはんちゃんと食べてる?」
シュゼル皇子程ではないにしても、痩せぎみだ。
「……お前……母上かよ……!」
盛大なツッコミが入った。
……ぷっ。
「……あははっ!」
そのツッコミには思わず笑った。
確かに母親みたいだ。
「……あは……ははっ」
「……お前なぁ……」
エギエディルス皇子は、まだ笑う莉奈に呆れていた。
だが、その目に輝くものを見て黙った。
笑ってるのに泣いてる様に見えたからだ。
莉奈は、久々に声を出して笑えた事が、嬉しかった………。
……私、笑ってもイイ……?
空に向かって呟いてみる。
昼の空だけは、あっちの世界と繋がってる気がした。
私、もう少し頑張ってイイ……?
溢れてくる涙を堪える様、その返事はこない空に、顔を上げたのだった。