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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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200/703

200 リンゴジュースとネジ回し 



「あ~面白かった」

 莉奈は、ものスゴく満足すると、チキンカツ作りに入る事にした。

 こんなにも皆が、反応してくれるとは思ってもいなかった。作った甲斐があるというものである。

「面白かったのリナだけだから……」

 一人ご機嫌で鼻歌まで歌う莉奈に、リック料理長はため息交じりに言った。

 ついさっきまで、新しいカクテルが飲めると喜んだ自分が情けない。莉奈に騙されるぞ~と自分に教えたかった。

「ラナに飲ませてみたら?」

 と莉奈は提案してみた。仲良く晩酌をする仲なのだから、試してみればいいのでは?……と。

「…………孫の顔を拝みたいんだけど?」

 リック料理長は、ナゼかブルッと震えた。微妙なカクテルを飲ませたら何を言われるか……。


「あ~ご愁傷さまです?」

 なんとな~く想像出来た莉奈は、察し頭を下げた。

 ベーコンチーズパンの時に、気付いたパワーバランスを思い出したのだ。ラナ>リックといった力関係だったな……と。

「他人事だと思って……」

 莉奈が頭を下げてきたので、リック料理長は空笑いしか出なかった。飲ませてもいないのに、ナゼ背筋が凍るのだろうか?


「アハハ……良好な夫婦関係のために、なんか美味しいカクテルでも伝授してあげようか?」

 なんかどんよりしたリック料理長が、可哀想になり莉奈は提案する。楽しめたからお礼ともいう。決して罪滅ぼしではない。

 ラナ女官長にはお世話になっているしね?


「えっ!? 本当か!?」

 項垂れていたリック料理長は、ぱぁっと一気に顔を上げた。

 自分も飲めるかもという願望もあるが、奥さんが喜ぶ顔を想像したらなんだか嬉しかったのだ。

「「「ズルイ!!」」」

 対照的に関係のない人達からは、ブーイングであった。

 不公平な感じをされて文句が出るようだった。


「はいはい。他の皆は分量教えるから後で "ウォッカ・マティーニ" でも作りなよ」

 莉奈は苦笑いした。そうくるかな? とは思ってはいたがそうだったからだ。

「え? リナは何を作るんだ?」

 マテウス副料理長が疑問を投げ掛けた。

 "他の" て言ったのだから、莉奈は別の何かを作るという事なのだろう。

「ウォッカ・アップルジュースに必要なリンゴジュース」

 さっき、リック料理長達に作ったリンゴジュースと、ただ割るだけの簡単カクテルである。

 ジュースで割るからスゴく甘いし、ラナ女官長は好きそうだと思ったからだ。

「え? 何それ」

 料理人サイルが興味津々そうに訊いてきた。

「さっき、リックさん達に作ったリンゴジュースと、ウォッカを混ぜるだけのカクテル」

 へぇ……と頷くサイルの後ろから「えー。なんか皆だけ、ズルくな~い?」と不満の声が聞こえた。

 その声の主を見れば、先程お酒を飲めないと言って残っていた2人だ。不公平だと言いたいらしい。


「お酒飲めない2人には、リンゴジュースを作ってあげる」

 お酒をまったく飲めないのなら、つまらないだろうし……確かに不公平である。そう思った莉奈は2人には、リンゴジュースを作ってあげる事にした。

「「やった~!!」」

 途端に2人はハイタッチをして、大きく喜んでいた。何もないと思っていたから嬉しさもひとしおである。




 ◇◇◇



「はい、リンゴジュース。ラナと好みで割って楽しんで?」

 さっきと同じリンゴジュースを作ると、まずはお酒を飲めないと言った2人に。後は、空瓶に入れてリック料理長にあげる事にした。

 もちろん、エドと自分のもついでに、作って取っておくのも忘れなかったよ。



「え?……分量は?」

 リック料理長が疑問の声を上げた。

 伝授すると言ってくれたハズなのに、分量も言わないだけではなくリンゴジュースだけ渡されたからだ。なんなら、いつもは混ぜてくれるのに、ナゼ今回はお酒と混ぜてくれないのだろう。


「これは適当で大丈夫。自分の好みでどうぞ」

 リック料理長の少し唖然とした顔に笑う。

 これは、めずらしくレシピが適当なカクテル。だから、夫婦で好みを追求すればイイ。ジュース多めか、お酒多めか。

 うちの両親も自分の好みで割っていたから。あぁでもない、こうでもないと夫婦で試すのは、きっと楽しいハズ。

「え? 適当でイイのかい?」

「うん。適当」

 莉奈が改めてそう言えば、リック料理長は感心した様に頷いていた。適当なモノもあるのかと。

「オレンジとか、他の果汁で割っても美味しいよ?」

 お母さんがそうしていたから、美味しいんだと思う。

 夏になるとかき氷のシロップで割ってたしね。好みの果汁やジュースで割って楽しむのも、カクテルの醍醐味なのだ。



 ちなみに、オレンジジュースと割っても "ウォッカ・オレンジジュース" という風にはならない。

 ナゼか "スクリュードライバー" というネーミングに変わる。リンゴジュースだけなんでそのまま?



 父曰く、油田で働いていた人達が、この飲み方を考えたらしいのだけど……。

 その油田の人達が、首から "ネジ回し" を下げていた事から "ネジ回し" "スクリュードライバー" ってついたらしい。

 ……は? なんだソレ?


 じゃあナニかね? 首から "たわし" でも下げてたら "ウォッカ・たわし" とかにでもなっていたのかね? 

 ん? 違うか。英語だから "スクラブ・ブラッシュ" ?

 どうでもイイし、意味がわからん!!



 



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