20 早朝の訪問者
その朝、莉奈は喉が痛かった。
半ば説教タイムと化した昨日のせいだろう……。
……やり過ぎた……かもしれない……。
だが、後悔はしていない。
だって、今、清々しい朝を迎えられてるのだから。
◇◇◇
恒例になりつつある、ジョギングをし、汗をお風呂で流した後、部屋に戻るとそこにはめずらしい人物がいた。
「……ナンか用?」
その人を見てつい、口をついた。
朝から、何用だと思ったのだ。
「……朝から、ドコに行ってたんだよ」
不機嫌そうに、その美少年は質問を質問で返してきた。
「……元の世界じゃない事は確かだけど……?」
だから莉奈は、思わずイヤミが口を滑る。
正直、弟みたいな年齢の子供に大人げないとは思う。
だけど……出たモノはしょうがない。
「…………っ」
莉奈のイヤミにエギエディルス皇子は、拳を握りぐっと堪えていた。
「……ったよ!」
「…………はい?」
「い、色々と……悪かったよ!」
そっぽを向いて、エギエディルス皇子は言った。
今までの様な、とりあえず "言いました" 感はなく、一応彼なりに反省した様にはとれた。
……素直じゃないな………。
と苦笑い。
まぁ、言い方はともかく本当に反省はしたんだろう……と思った。
「……さぁ、リナ、殿下、朝食の御用意が出来ましたよ」
侍女のモニカが、二人をテーブルへと促す。
……はい?
なにゆえに、皇子と食事を摂らねばならないのかな?
「……あり……が……とう?」
どういう事ですかねモニカさん?……と目で伝えてみる。
……ふふっ。
とイイ笑顔で返されましたけど……。
……え?……どういう事?
仲良くやれって事?……さっぱりわからん。
まぁ、いつまでもグダグダした所で、なんかイジメてる感がすごいあるし、もうどうでもイイんですけどね……。
「……前から思ってたけど、その魔法鞄便利よね」
とモニカの腰に付いている鞄をチラリと見た。
何でも "空間魔法" とやらが付与してある鞄らしい。
それを初めて見た時には、感激した。
"四○元ポケット" があるのか!!と。
アニメで見た物が、そこにある事の感動……。
それは、一生……かは分からないけど……忘れない……たぶん。
どういう仕組みかは、全然分からないけど、超便利だ。
大きい物もスポスポ入るし、温かい物は温かいまま、冷たい物は冷たいまま。
現状保存出来るなんて夢の様……。
まぁ、一般市民は持ってないらしいけど。
造れる人があんまりいないみたい。
そもそも、便利過ぎて犯罪にも使えるから、色々制限が設けられてるらしい。
それは、便利な物の宿命よね。
「そうよね~。私も初めて見た時には感動しちゃって!……イミもなく物を出したり、しまったり……」
当時を思い出したのか、モニカは少し恥ずかしそうに言った。
確かに、四○元……じゃない "魔法鞄" は面白そうだ。
「……ねぇ、エド」
「…………あ゛?」
野菜たっぷりスープを飲みながら、こちらをチラリと見るエギエディルス皇子。
……仮にも、皇子の返事が「あ゛」ってどうなんですかね?
あれ? フェリクス王も、確か舌打ち……。
……じゃあ、これでいいのか……。
………え?……イイのか?