19 勇者と聖女
楽しんで頂いてますでしょうか?
独り善がりではない事を祈りつつ……がんばりたいと思います。
では、本編へ……どうぞ!
「……それから……えっと……エキ? エギドス? に訊きたいんだけど」
もはや、覚える気がない莉奈は適当に言う。
実際、王族の御名を間違えるなんて御法度だが、しった事ではない。
「……どっから "ドス" がくんだよ……"エド" でいい」
反論する気力が湧かないのか、疲れ果てた様に言った。
「………エド?」
「……あぁ……もう、それでイイ」
エギエディルス皇子は諦めた。
なんだかしらないけど
……勝った……と思った。
「……えっと、じゃあエドに訊きたかったんだけど」
もう敬語すら出ない。
エギエディルス皇子も、それには一瞬 渋面顔をしたが、"非" が自分にある以上何も言えない。
「私を召喚するのに見た "文献" や "古文" に書いてあった "聖女" や "勇者" って、みんな美形だったんじゃない?」
「「「…………っ」」」
エギエディルス皇子達は、目を見合せると皆 押し黙った。
……やっぱりね。
だって、私を見た瞬間 "デブ" だの何だと、コイツじゃない感すごくしてたし。
「あなた達……"聖女" じゃなくて自分の "嫁" 捜しでもしてたの?」
莉奈は呆れた様に、そしてエギエディルス皇子を白い目で見た。
「……っ! 違う!……俺は本気で聖女を……!!」
「ふぅ~ん? なら、文献に "聖女" は力こそあるが、不細工で体臭、口臭が酷い 骸骨みたいな老女だ……って書いてあっても喚んだのね?」
本気なら、容姿なんて関係ないハズ。莉奈は意地悪く言ってやる。
「「「…………っ!!」」」
皆が、動揺し口をつぐむ中、一人の魔導師が思わず
「……いやっ……それ……は………」
と声を出してしまった。
ーーーバコン!!
「……ったっ……」
その瞬間、魔導師の額にティースプーンが鋭く当たった。
莉奈は、それを聞き逃さなかったのだ。
「……アンタ達、正座!!」
莉奈は、イスから立ち上がると、入り口に立つエギエディルス皇子達に床を指した。
そこに正座をしろと。
「……はぁ!?」
「そこに、正座!!!」
「…………っ!」
エギエディルス皇子は、一瞬反論の声を上げたが、莉奈の後ろで紅茶をほのほの嗜む、シュゼル皇子と目が合い諦め、不本意だが逆らわず膝を折り始めた。
「「「……っ!……」」」
魔導師達は、皇子のその行動に目を見張ると、それに従うかの様に、一同正座する。
「そこは、間髪いれずに "喚んだ" って言いなさいよ!!」
莉奈は、呆れ半分だが怒った。
美女だから喚んだって証明した様なものだ。
「「「…………」」」
バツが悪いのか、皆 下を向いたまま口を閉じる。
もう、余計な声を上げない様に決めたらしい。
「大体、なんでこぞって "聖女" なのよ……"聖者" じゃいけない訳?」
大概、聖なる魔法を使うのは "聖女" だ、男じゃいけない理由でもあるの?
「……せ、聖なる……乙女……だから……だと……。」
ティースプーンを当てられ、涙目になってる魔導師の横の人がおそるおそる答えた。
「……聖なる男は、いないって事?……乙女にしか使えない魔法って事?……ナニその、男の夢詰めました、みたいな話」
「「「…………」」」
エギエディルス皇子達は、更に下を向いた。
何か思う所でもあるのかもしれない。
「それに "勇者" だって、ひょっとしたら 毛深くて臭いゴリゴリマッチョで "蛮賊" みたいな男かもしれないでしょ?」
「「「…………」」」
「バカでかい斧振り回して "世界を救ったらイイ女達を寄越せ!……ガハハハ!!"……って、言う男だったらどうするのよ。責任とって、自分達の恋人や奥さんあげるんでしょうね?」
「「「…………」」」
「そもそも実際見た事もない人間を、喚ぼうなんて浅はかなのよ……はぁ~……」
莉奈は、大きく溜め息をついた。
この人達、夢見過ぎにも程がある……。
その "夢" とやらに、付き合わせられたのか……。
そう思うと、脱力感が襲ってきた………が振り払った。
そして……。
「大体ねぇ……!!」
と今までの鬱憤を晴らしまくる莉奈の姿がそこにあった。
シュゼル皇子が、紅茶を嗜みつつ、面白そうに見ていたのに気付いたのは……。
それから、一時間近く経った頃である。
美女は、どの世も大変ですな……。
美女じゃなくて、良かったです……?