18 タダより安い物はなし
「この者達を、外に出してしまって良かったのですか?」
結論から言うと、エギエディルス皇子達を牢獄から出した。
今は、王宮のドコかの一室、応接間の表現でいいか分からないけど、そんな部屋で紅茶を頂いてます。
シュゼル皇子は、私の向かいに座って紅茶を優雅に飲んでいる。
エギエディルス皇子達は、入り口近くで並んで立ってる。
……なんだろ。コレ…。
バカ広い校長室で反省させられてる、貴族の坊っちゃんとその側近達?
「……構いません。……正直、危害を加えるつもりが、あるなら別ですけど。加える訳じゃないのなら……むしろ外に出して、私を戻す方法でも考えて貰った方が有益です」
実際あんな所に入れといても、なんの役にも立たない。
口の悪い言い方だと……えっと、そう! クソの役にも立たない!
……クソってナニ?
まぁ、とにかく一から探すより、喚んだ人間が戻す方法を探した方が、断然可能性がある。
「あなたは、広量ですね。寛大な配慮、兄として上司として御礼を申し上げます」
とシュゼル皇子は頭を下げた。
「いえいえいえ! 顔を上げて下さい」
莉奈は慌てて顔を上げる様に言った。
シュゼル皇子が謝る要素が何もない。
「そんな事よりも、一つ伺っても?」
最近少し気になる事がある。
「……なんでしょう?」
とシュゼル皇子は、首を軽く傾げ微笑んだ。
「今の私の生活費、ドコから出てます?」
そう言うと、シュゼル皇子はほんの一瞬だが、目を見張った。
莉奈が、そんな事を口にするとは思いもよらなかったのだ。
「税金……ですか?」
人が一人生活してるのに、タダなんて有り得ない。
言いたくないけど、この体型にあった服を用意するのに、お金が掛かったハズだし、三食ものご飯もそう。
何より極めつけは、侍女なる御付きが付いてるこの離宮。
維持費はともかく、侍女、警備兵、その他諸々に給料が支払われている。
それらが、何処から捻出されているのか非常に気になる。
シュゼル皇子は、チラリと入り口に立つエギエディルス皇子達を見た後
「……そうですね……突然の事でしたので、税金と云うか国費と云う形で捻出しています」
と面白そうに微笑んだ。
予想外の莉奈の言葉に、面白さを感じたのだろう。
気にしなくてイイと、言う事は簡単だ。だが、そういう事ではないのだろうと判断した様だ。
「なら、それらの費用 "税" "国費" からではなく、そこにいる人達のお給料から捻出させて下さい」
莉奈は、チラリとも見ず優雅に紅茶を飲んでみせる。
「「「…………」」」
そんな事を言われたエギエディルス皇子達は絶句した。
「だって、私を喚び出したのはこの人達でしょう? だから、この人達には私を養う義務があると思います。……違いますか?」
ティーカップを置き、目を細めてエギエディルス皇子達を見てニコリとする。
半分以上イヤミを込めてだけど……。
「「「…………………」」」
さらに絶句した。
正論と云われれば、その通りだが、そんな事を言われるとは、露ほども思わなかったのだ。
……くすっ。
雑然とした雰囲気の中、面白そうに笑う声が一つする。
そう、莉奈の向かいに座っている御方からだ……。
「私は、異論はありません。……皆さんは……?」
「……いえ……あり……ま……せん」
と魔導師達はボソボソと蚊の鳴いた様な声で言う。
シュゼル皇子が、異論ないと決めた事に、誰が "否" と言えるのだ。
余程の正論で返さなければ "是" が "否" に変わる事はない。
詰んだ……と云ってもいいだろう。