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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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179 また……ですか?



 ブラックベリーこと苺のアイスクリームは、ミルクアイスに混ぜるだけでも出来るが……せっかくなので違う方法で作る事にした。

 ミルクアイスを作った時の様に材料には卵は使わず、代わりに牛乳プラス生クリームを入れて濃厚な物にしようと思う。その方がブラックベリーの酸味が引き立って美味しいハズ。

 本音を言えば、フリーズドライにした苺を入れて作りたいのだけど、無理なので諦める。まぁ……シュゼル皇子に頼めば、魔法でどうにかしてくれそうな気がしなくもないが。説明が面倒くさい。



「あれ? シュゼル殿下は?」

 莉奈は準備をして戻ると、キョロキョロと辺りを見渡した。

 材料を用意して、後は混ぜながら冷やし固めれば出来る……と食堂に戻ったのだが、シュゼル皇子の姿が何故か見えなかったのだ。

 アイスクリームを放って、あの御方が何処かへ行くなどありえない。なのに見渡しても、何故か見当たらないのだ。


「フェル兄……呼びに行った」

 エギエディルス皇子は、顔をひきつらせながら青ざめていた。

「……え? なんで?」

 王を呼びに行く意味が分からない。あの御方、甘い物なんて食べないのに。

「お前が……アイスクリームとか言うから」

「へ?」

 どうして……アイスクリームと言うとフェリクス王が出て来るのかな? 莉奈はハテ? と首を傾げた。


「豪腕な人物が必要だと……判断したのでは?」

 莉奈の疑問に、執事イベールが無表情に言った。

 答えてくれた彼が、何故か隅に移動している気がするのだが。

「…………え」

 莉奈は驚愕したまま固まった。

 確かに前回作った時は、豪腕な人が必要と言ったが……。今回は大きな寸胴で作るつもりはない。だから、莉奈が自分で混ぜようと考えていたのだ。

 だけれども……そんな事はシュゼル皇子には言わないと通じなかったのか、アイスクリーム=フェリクス王と方程式が発動した様だった。



 ……マジか。



 どんな理由で連れて来るのか知らないけど……事情を知ったら絶対に、この国を揺るがす怒りが何処かに落ちるに決まっている。



 ……え? 落下地点ココですか?



 周りの皆は莉奈達の話し声が聞こえたのか、絶対に不機嫌丸出しの王が来るだろうと想像し、恐怖が襲い始めた。

 リック料理長達は一気に顔面蒼白になり、厨房であたふたしたり、オロオロした後……隅っこの方に頭を抱えてしゃがんで避難していた。

 他の部屋に逃げ出せない、悲しき料理人達である。食堂に僅かにいた警備の兵達は、一目散にいなくなったけど……。



 ……に……逃げたい。



 莉奈は、アイスクリームの材料を入れた小さい寸胴を持ちながら、あっちにこっちにウロウロした後テーブルの下に避難していた。



 ――――ガガーッ。



「この俺を呼んでおきながら、隠れるとはどういう了見だ」

 隠れたところですぐに見つかり、長い長いおみ足でテーブルを引いた。

 声から察するに……超不機嫌の様である。



 ク・ソ・皇・子!!

 ……また、私が呼んでいるって言ったな。



「…………」

 寸胴を持ったまま、莉奈はフェリクス王を上目遣いでチラリと見てみた。



 ……笑っていなくもない気もする。



 そう思いたい自分の心が、そう思わせただけかもしれないけど。

「お忙しいところ、大変申し訳ありません」

 寸胴を持ったままで失礼極まりないが、莉奈は両膝を突きながら深々と先ずは謝罪した。

 そして、鋭い目付きで続きを促すフェリクス王を確認し、莉奈は続けて口を開いた。

「私がお呼びした訳ではなく……アイスクリームを作ると耳にした弟シュウベルト殿下が、一存でお連れした次第であります」

 自分の正当性はアピールしておかねばならぬと、莉奈はフェリクス王の睨みに脂汗を掻きつつ正直に話した。

 シュゼル皇子はどうして、またフェリクス王を呼ぶかな?

 シュゼル皇子にアイスクリームはダメな組み合わせだ。皇子をダメにする食べ物らしい。あれだけ王は呼ぶなと言ったハズなのに、喉元過ぎれば~って感じなのだろうか。

 


 ……どうして……お前は、シュゼル殿下の御名まで適当に言うんだよ!!



 リック料理長達は、ますます顔が白くなりガクガクと震えて小さくなっていた。こんな状況なのに莉奈がシレッと言っていたからである。



 ―――ゴッッツン!!



 莉奈が言うや否や、ものスゴい鈍い音がした。

「「「……っ!?」」」

 適当過ぎる莉奈の頭にもとうとう、鉄拳が落ちた……とリック料理長達は思いブクブクと口から泡を吹いていた。


「「「…………」」」

 頼む、せめて生きていてくれ!! と皆の祈りが届いたのか、莉奈の頭は無事だった。

 

「…………」

 その代わりに自分を呼んだ、弟の形の良い頭に鉄拳が落ちていた。

 あまりの激痛に星でも見えたのか、シュゼル皇子が頭を抱えクラクラしながら床にしゃがみこんでいた。まさに悶絶である。

 いつもの通り、平手で済むと思っていたのなら、不意打ち過ぎて相当なダメージに違いない。

 膝を突いていた莉奈からは、彼が若干涙目になっているのが見えた。相当痛い様である。

 

 

 目の前で見てしまった莉奈は、その瞬間ゾワリとし身体に良くない汗がダラダラと流れていた。




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