表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/666

168 ククベリーのミルクジュース



 剣の稽古か、はたまたシゴキなのか、帰って来た2人を見て、莉奈は顔をひきつらせていた。

 果たしてあれは、帰って来たと言っていいものなのだろうか? 兄王の左脇に弟が俵の様に抱えられているし。

 グッタリしているのか、ピクリともしないエギエディルス皇子。


「え……っと? 大丈夫なんですか?」

 小脇に抱えられた彼を見て、心配になり訊いた莉奈。息はしている様だが反応が薄い。ケガはないみたいだけど……コレ、大丈夫なのかな?

「問題ねぇよ」

 とフェリクス王は弟を床にドサリと下ろすと、近くの椅子にゆったりと座った。大丈夫かと訊いたつもりなのだが、問題ないって返答があるのかな? グッタリしてますけど?

「エド……大丈夫?」

 まったく起き上がる様子のないエギエディルス皇子の頬を、莉奈はしゃがんで指でツンツンと突っついてみた。

「……身体中が痛ぇ」

 ピクリと微かに動いたエギエディルス皇子は、うつ伏せのままボソボソと小さな声を漏らした。相当シゴかれた様だった。

「ポーション飲む?」

 なんだか可哀想になり魔法鞄マジックバッグからポーションを出した。筋肉痛に効くかしらんけど。

「いらねぇ」

 ヨレヨレと立ち上がると、ふらつきながら兄王とは違うテーブルの椅子に、突っ伏して座った。

 息も絶え絶えというより、疲れきってぐったりの様である。

「なんか……甘い飲み物でも作ろうか?」

 おやつ的な物より、まずは水分補給かな……と。

「……」

 エギエディルス皇子は少しだけ顔を上げると、返事の代わりにキラキラした目で訴えていた。



 ……ぐはっ!! 可愛い過ぎるんですけど!?



「んじゃ、ちょっと待ってて」

 萌え萌えした莉奈は、可愛い彼のために何か作ろうと、厨房に向かった……のだが、その背に1つ、声が掛かった。

「俺にはエール」

 振り返れば優雅に脚を組んでいる、フェリクス王だった。



 なんで、当然の様にお酒なんか、要求するのかな?



「寝言は寝てからおっしゃって下さい」

 莉奈は、王の要求をガン無視しスタスタと厨房に消えた。途端にフェリクス王は、俯いて肩を震わせ始めた。

 あれはきっと、私がどうでるのかわざと言ったに違いない。エールが出たら出たでラッキーくらいな気分なのだろう。

 遊ばれている……そう思うと腑に落ちない。



「「「……っ!?」」」

 莉奈のその返答に、料理人達は顔面蒼白で鯉の様に、口がパクパクしていた。

 王宮の料理人達は、莉奈の無礼や不敬など慣れてはきたが、初めて見た軍部の料理人達はガクブルものであった。




 ◇◇◇




「何を作るんだ?」

 莉奈が作り始めれば、誰ともなく大抵こう訊いてくる。恒例行事といってもいい。

「ククベリーのミルクジュース」

「ミルクジュース?」

 サイルが莉奈の作業を見ながら、さらに訊いてきた。

「ククベリーと牛乳を混ぜただけの物」

 こういうとなんか、素っ気なくて美味しくなさそうだ。莉奈は自分で説明しながら苦笑いしていた。

「材料は?」

「ククベリー・牛乳・砂糖・好みでハチミツを入れるだけ」

 ククベリーは少しだけ潰して、後は全部入れて混ぜて冷やすだけ。果物を替えればバリエーションが増える。

 エギエディルス皇子は、ものスゴく疲れているだろうから、甘酸っぱい方がいいかなと、ククベリーにしてみた。

 もちろん、バナナとかイチゴでも美味しい。



「リナ……魔法鞄マジックバッグに食べ物入っているのかよ」

 ククベリーや砂糖・ハチミツが、魔法鞄マジックバッグから出てくるとは想像していなかったのか、驚いた料理人が呆れる様に言った。

 討伐とかに行く軍部の人達だって、入っていたとしても普通出来上がった料理だ。

 なのに、莉奈は材料や調味料が入っている様だった。


「ん? タンスも入ってるよ?」

 莉奈はポンポンと、魔法鞄マジックバッグを叩いた。この中には、破棄寸前のタンスが何個か入っている。空手の板割りや魔法の練習にでも使おうかと、ラナ女官長や侍女達に貰ったのだ。

「「「はぁ? ナゼ?」」」

 もれなく全員が瞠目しツッコんでいた。百歩譲って料理をする莉奈だから、砂糖とかの材料は分かる。だが、タンスを入れる意味が分からなかったのであった。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ