146 絶品
「………はぁ~……しかし、デカイ鳥」
もちろんだが、莉奈は "魔物" を初めて見たのだ。
いるとは聞いてはいたが、実際見るのとではまったく違う。迫力もさる事ながら、少しだけ異世界に対する畏怖を感じた。
運がいいのか悪いのか莉奈が【召喚】されたのは、王宮の一室。そして、王達の厚意により離宮に住まわせてもらっている。
王宮から出たことがない莉奈は、魔物とは無縁の生活なのだ。箱入り娘並みの生活をエンジョイしていた。
「ロックバードな!」
莉奈がそれなりに驚いているので、満足の様だった。褒めて褒めてとないハズの尻尾が見える。
「ロックバードね……でも、コレどうするの?」
見せたかったのは分かる、だがその後はどうするのだろうか?
「あぁ……羽根とか爪とかは、それなりの値段で売れるから売る」
装飾品とか武具に利用するらしい。
「ふ~ん? 肉は食べるの?」
これだけ大きいのなら、食べごたえがありそうだ。
「あ゛?」
「肉は食べるの?」
エギエディルス皇子が、ビックリした様に聞き返したので、もう一度言った。
「はぁ~!? 魔物なんか食わねぇよ!!」
エギエディルス皇子は、改めて驚くと叫びにも似た声を上げた。
どうやら魔物は食べないらしい。確認も兼ねて皆を見たら、ものスゴい形相でブンブンと首を横に振る。
「ふ~ん?」
食べられないのか……と、ロックバードをチラリと見た。
【ロックバード】
山岳地帯、山肌に生息する鳥類系の魔物。
〈用途〉
羽根や爪等は、装飾品や武具に使える。
〈その他〉
モモ肉、むね肉は食用に向いている。絶品。
…………"絶品"
……マジで!? 美味しいのかよ!!
莉奈は【鑑定】をしてみて1人驚愕し興奮していた。
別に皆を信じていなかった訳ではない。魔物を【鑑定】した事がないから、してみたかっただけ。なのにまさかの【絶品】表記。
この世界はそもそも鑑定士自体が少ない。その上、莉奈みたいに、食べれるかの表記をされる事も稀だとか。なら、誰かが1度は口にしない限りは分からない。
口にした所で、ククベリーの時みたいに酸っぱい事もある。何時どの状態が美味しいのか、気付かない事もあるのかもしれない。
「う~~ん?」
どうしたものかと唸る。言うべきか言わざるべきか……莉奈は首を傾げていた。個人的には食べてみたい。
食べれると表記されている、新鮮な肉がココにある、美味しいのなら食べるべきでしょう?
「誰か……これ解体してくれる?」
なら【鑑定】をした自分が初めになればいい。
"ナマコ" だって "エスカルゴ" だって、見た目はキモイのに誰かが食べたから今がある。【鑑定】をした自分が責任を負えばいい。
莉奈は、魔物ロックバードの解体を誰かに頼む事にしたのだ。
「はぁ? 解体なんかさせてどうすんだよ!?」
普段は然るべき場所で解体をして、売り物とそうでない物を分ける。なのに解体して欲しいと頼む莉奈に、エギエディルス皇子は驚いていた。
「食べる」
「「「「「はぁァァーーーーーっ!?」」」」」
これには、全員驚愕、絶叫ものであった。普段冷静で叫ばないであろう、近衛師団兵の皆さえも声を上げていた。
この【魔物】を食べるだとーーーっ!?
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