133 ゲオルグのアダ名
「リ……リナ」
逃がさない様に腕を掴んだままゲオルグ師団長は、なんだかモジモジ。その巨体でモジモジするの、ヤメテもらってイイかな? ギャップ萌……キモい!!
「………………」
莉奈は呼ばれていたが、顔を一切上げなかった。
この至近距離でゲオルグ師団長の顔を見上げると、首が間違いなく直角になるので、目の前にある胃の辺りを見ていた。だって、見上げるの大変だし……疲れるし。
「……お前……ドコ見てるんだよ?」
莉奈がゲオルグ師団長の顔……ではなく、真っ正面を見ているからだ。不自然過ぎてエギエディルス皇子が、怪訝気味に訊いてきた。
「軍人ゲオルグの胃」
「……なんでだよ」
ツッコミを入れたエギエディルス皇子が、さらに不審がる。
それもそうだ、人と会話しているのに、胃を見て話すなんてオカシイ。
「エド、考えてみて? この距離で見上げたら、私の首が間違いなくもげる」
あくまでも上は見ないで言った。フェリクス王は王様だし、こんな至近距離で話す事がないから、まだ少し痛いだけで済むけど……。
「……あー……それな」
エギエディルス皇子は、苦笑いした。
王宮にいる大抵の人間が、エギエディルス皇子より背が高いのだから……気持ちはわかるのだろう。
「皆……背が同じになればいいのに……」
ため息混じりに、莉奈は呟いた。
そうすれば、上を見る事がないから楽だし首は安泰だ。全員同じ目線で、ものスゴく気持ちは悪いけど。
「は? お前と同じサイズのフェル兄、逆に怖ぇし」
何を言ってるんだと、身震いしていたエギエディルス皇子。
たぶん、想像していたに違いない。ミニチュアサイズの国王陛下を……。
「ナゼ……リナのサイズで物事を考えた?」
フェリクス王は、心底イヤそうに言った。
勝手に想像した挙げ句、そんな事を言われたからだ。大体、背が同じ=リナの背……ではないハズだ。
自分と同じサイズ……それを想像して、フェリクス王はそれはそれで、イヤすぎると渋面顔をしていた。
「全員ゲオルグサイズも、オカシくね?」
エギエディルス皇子も、似たような事を想像したのか、眉を寄せた。2m級の人間が、ゴロゴロ……もはや巨人の国である。
「そもそも、皆が同じサイズなのがオカシイのですよ?」
シュゼル皇子が、根本がオカシイと小さく笑っていた。莉奈が言った事を、2人が本気で想像している姿が面白かったのだ。
「……と、言う事で……私はこれにて失礼致します」
何事もなかった様に、莉奈は頭を下げ再び扉を目指す。散々な事を言っておいて、本人はシレッとしていた。
「どういう事なんだよ?」
何が "と言う事" だったのか、さっぱりであった。
エギエディルス皇子が、呆れた様に笑っていると、それに被る様に、野太い声が――。
「ちょっと待った~~!!」
慌ててた様に、扉の前にデカイ男が行く手を阻んだ。その名は……ゲオルグ=ガーネット。
「……………………」
莉奈は、もう呆れ過ぎて言葉が出なかった。何がしたいの、この人。
もはや、巨体ではなく "カベ" だ。
扉を塞ぐ姿は、莉奈からしたら人ではなかった。
よし……ゲオルグのアダ名を "ヌリカベ" にしよう。
莉奈はゲオルグ師団長のアダ名を、人知れず "ヌリカベ" にしたのであった。




