125 酒癖
「……シュゼル……ジンのシャーベットは、後で食えよ?」
シュゼル皇子に、ジンライムのシャーベットも差し出すと、フェリクス王がそんな事を言った。
「…………わかりましたよ」
小さくため息を吐くと、シュゼル皇子は仕方がなさげに、腰に提げている魔法鞄に、ジンライムのシャーベットをしまった。
「…………?」
そんな2人のやり取りに、どういう事だろう……と、莉奈は疑問に思う。
まさか、シャーベットの食べ過ぎでお腹を壊すから、後でって……事ではないだろう。
シュゼル皇子は、子供ではないのだから……。
「…………シュゼ兄……酒は……ちょっとな?」
莉奈が、首を傾げていたので、エギエディルス皇子が察して、コソリと教えてくれた。
お酒は、ちょっと……? どゆこと?
「酒癖悪いの?」
想像もつかないけど。
普段、ほのほのと穏やかな分、バタバタ暴れるとか……?
「……あー、なんて言うか……」
エギエディルス皇子は、ものスゴく言いづらそうな感じだった。
だから、勝手に想像する。
こういう大人しい感じの人だから、ハメを外して……
「……裸踊りするとか……?」
お盆片手に、ホホイのホイ?
「……ぶふっ!」
エギエディルス皇子は、ククベリーのシャーベットを食べようとしていたので、吹き出した。
「……ブッ……アハハハハ……!!」
内緒話になっていなかったのか、フェリクス王も吹き出していた。
「あれ? 違うの?」
2人が爆笑しているのだから、不正解なのだろう。
なら、何なのだろう?
「シュゼルが……裸……踊り……」
想像したのか、ツボに入ったのか、爆笑しているフェリクス王。
「この世の……終わりを……感じる」
エギエディルス皇子も、お腹を抱えて爆笑していた。
「…………リ~~~ナ」
と、シュゼル皇子はニッコリ。
うん。シュゼル皇子の耳にも、しっかり聞こえていたみたいだ。
「…………えっ……すみません?」
莉奈は、一応謝っておいた。
でも……シュゼル皇子の裸踊り……ちょっと見てみたいかも。
「変な想像しない様に」
「は~~い」
それもバレたのか、念を押されてしまった。
◇◇◇
「……さっぱりしてて、ウマイな。俺、ソルベより、こっちの方が好き」
2種類のシャーベットを食べ比べながら、楽しんでいるエギエディルス皇子。
聞くところによると、ソルベとやらは、シャーベットより氷の粒が粗めで、あまり味がしないらしい。
「私も……こちらの方が好みですね。シャリシャリとしていて甘酸っぱくて美味しい。リナが、からあげの後に……と言っていた意味がわかりましたよ」
ご満悦なシュゼル皇子が、ククベリーのシャーベットを食べていた。
「それは、良かったです」
酒癖が気になるとこだが、シャーベットをお気に召されて良かった。
「でも、アイスクリームの方が……好きですね」
と、シャーベットを堪能しつつ小さく呟く。
「……さよう……ですか」
シャーベットを食べながら、そんな事を言うなんて、苦笑いしかでない。
コッチより甘い、アイスクリームの方が、シュゼル皇子の好みなのだろう。
「……ぁっ」
それで、ふと思い出した。
確か……お母さんがアイスクリームに、赤ワインをかけて食べてたな……と。
「……あ……なんですか?」
相も変わらず、小さい呟きを拾ってくれる。
「アイスクリームに、赤ワインをかけると美味し――」
「アイスクリームを下さい」
莉奈が言い終わる前に、食い気味に言ってきた。
「シュゼル」
呆れたフェリクス王。
シャーベットも食べていながら、子供の様にまだ欲するからだ。
「だって、アイスクリームですよ?」
二言目にはこれだ。
何が、だってアイスクリームなんだよ。
フェリクス王はこめかみを掴み、深い深いため息を吐いていた。




