113 お酒……むずかしい
「……ん? そういえば、この扉なに?」
食料庫の脇にある、もう1つの扉を見た。
あまり気にした事がなかったが、この扉の中も食料が入っているのだろうか?
「そっちは、お酒よ」
ラナ女官長が教えてくれた。
酒倉ほどの量は入ってはなく、料理に使ったり、一部の酒好きの人に解放している、冷蔵庫の様だ。
「ふ~ん」
酒を飲まない莉奈には、さほど興味はない。
だが、中がどうなっているのかは興味はある……ので、扉を開けて見た。
……ふむ。12畳程の広さの冷蔵庫。
ひんやりした中には、ワインセラーみたいに、酒瓶が斜めにずらりと並んでいた。棚に立ててある物もあるけど、基本的にはキレイに並んでいる。
銘柄別なのか、産地別なのかはしらないけど、ざっと見た感じ高そうなお酒はない。
ワイン多め……お酒の種類は少ないかな。
まぁ、ここにあるのが、少ないだけで、何処か別に酒蔵とか、酒倉はあるのだろう。開放しているくらいだから……高いのは置かないか。
しかし、このざっくりした置き方、以前テレビに出てた人がいたら激怒しそうだ。
お酒の種類によっては温度管理が違うから、冷蔵庫に置くなとか、あそこはダメだとは言ってた人がいたのだ。
別にそれが悪いとは思わないけど、価値観なんて人それぞれだし、押し付けるのは……って思うよね。
……だって、そんなの個人の自由だし、徹底管理したければ勝手にすればいいし、ガッツリ冷やしたければ、冷やして飲んだっていい。
そもそも、お前の金で買った酒じゃないし、好きにさせろや! って思った。
これだけの人数もいるのだし、まとめて冷やして好きに飲んだ方が楽しいし。お酒は楽しく飲む物だよね。
しかし……ワインが多いな。特産品なのかな?
「ワイン……か」
ワインのシャーベットでもいいな。
桃があれば、ワインシロップ漬けにした後にジェラートにすれば、甘くて美味しい。
う~ん。だけど、フェリクス王好みの、甘くないお酒のシャーベットでも作ろうかな……。
「……酒なんかどうすんだ?」
エギエディルス皇子が、棚をクルリと見ながら言った。
彼もまた、ここを覗く機会はないのか、興味津々の様だ。ワインを手に取ったりして見ている。
「フェリクス陛下に、お酒のシャーベットでも作ろうかなって」
絶対、酒豪でしょ? あの人。
いくら呑んでも、酔わないタイプに見える。むしろ、ベロベロに酔うイメージが沸かない。
……っていうか、そうであって欲しい。
ヘベレケのフェリクス王なんか、見たくはない。
「……酒なんか、シャーベットになるのかよ?」
お酒を飲まない、エギエディルス皇子には、想像もつかないのだろう。
「なるよ?」
だって、凍らせて細かく砕いた物なら、シャーベットみたいな物だし。夏みたいに暑い時には、お酒のシャーベットは最高だと思う。氷みたいに荒く砕いて入れれば、お酒が薄くならないし冷たいしいい。
「……なら、フェル兄の酒倉から、なんか掻っ払って来ようか?」
「……エド、命知らずだね?」
王個人の酒倉があるのにも、ビックリだけど。そこから、掻っ払って来ようとする、エギエディルス皇子にも驚きだよ。
……怒られないのかな?
「少しくらいなら……アレ? ヤバイかな?」
と首を傾げた。
よくよく考えてみたら、怒られるかも……と思い直した様だ。
「 "あの" 執事長が、管理してますし……」
ラナが苦笑いしつつ、口を濁した。
王がどうこう言う前の、段階の話らしい。
「あ~……んじゃ、面倒くさいから、ダメだな」
ただでさえ、イベールの管理している所から、持ってくるのが大変なのに、未成年の自分が持ち出すなら、説明をしなくてはならない。色々と面倒くさい。
「……アハハ……エドも大変だね」
皇子だからといって、好き放題出来る訳ではなさそうだ。
フェリクス王が治めている国だもんね。弟が可愛いからって好き勝手させる訳はないか。
「あ……ジンがある」
莉奈が、見てすぐ分かるお酒はワインくらいだ。
だって見慣れてるし、赤いし、すぐにわかった。
後は、異世界のお酒だし、銘柄を見てすぐになんてわからない。なので【鑑定】をして見ていたら、"ジン"というお酒が目についた。
ジンなら、1度父親のために、ジンライムシャーベットを作った事がある。
【ドライ・ジン】
大麦、ライ麦、じゃがいもを原料とした蒸留酒。
ジュニパーベリーの上に流す事によって、香り付けされてあるのが特徴。
…………?
ジュニパーベリー?
思わず、眉根が寄った。
鑑定したものの、さらにわからない言葉が出た。
そう、こういう時こそ……そこに片目で2回パチパチ瞬きをして、さらに【検索】をかける……。
【ジュニパーベリー】
セイヨウネズという、低木の果実を乾燥させたスパイス。
ヴァルタール皇国の南、ルビス地方に良く生えている木。
…………あ~そう。
さらに、わからなくなったともいう。
セイヨウネズって、何だよ?
さすがに、キリがないから、これ以上は検索はしないけど。
要するに、スパイスで香り付けされた……という事かな。
白ワインもスパイスで香り付けすれば……確かベルモットとか言ったっけ?
検索はいいけど、1つわかると、1つわからない事が増える。
キャパオーバーになるし、調べた所で役に立たない。
頭が痛くなるだけだった。
スパイスで香り付けされた蒸留酒。
そういう事。よし!!




